目撃者の証言:我が家に迫る海と砂


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アフリカ(ケニア):ダン・スタイルズさん

ケニアに移住して30年というダン・スタイルズさんは、現在住んでいる海岸の家に、年々海が迫ってくる、といいます。かつては家と海岸の間に横たわっていた石灰岩の層も、今では潮と、それが運んでくる砂に覆われてしまったほど。この地の風光を愛するスタイルズさんですが、現実的な対策は、もはや引越ししかないかもしれない、といいます。

アフリカ東海岸からの証言

私はダン・スタイルズといいます。私はアメリカのモンタナ州グレーシャー国立公園近くで生まれ、カリフォルニア州ロサンゼルスで育ちました。もっとも、現在は氷河が溶けているので、数年以内にグレーシャー(氷河)という国立公園の名称は、誤ったものになるかもしれませんが。
平和部隊の一員として、初めて西アフリカのコートジボワールへ行ったのは1967年。
その後、カリフォルニア大学バークレー校、およびフランスのエクス・マルセイユ大学で、考古学と人類学を学び、1977年にケニアに移住しました。以来、ほとんどの時間をケニアで過ごし、数年間はナイロビにある国連環境計画で働いていたこともあります。

ダン・スタイルズさん
(C)Dan Stiles

ビーチへの移住

モンバサから30キロほど南にあるディアニ・ビーチに、私が移り住んだのは、1997年8月のことです。首都ナイロビの喧騒と大気汚染にうんざりしていたので、この素晴らしいビーチの静寂さと美しさを求めて来たのです。ここでは、波、風、野生動物の鳴き声ぐらいしか聞こえてきません。このビーチに、私は家を持ちました。

私が移り住んだ当時、家から砂浜へ行こうと思ったら、2メートルほどの石灰岩の層を駆け下りなければなりませんでした。潮が引くと、この化石化したサンゴが一面に広がり、砂地の表面も点々と見えていたものです。
石灰岩の上から砂浜へ簡単に降りられるように、サンゴが見えているところにコンクリートの階段が作られていましたが、最後の段と砂地の間の差は、50センチくらいもありました。

上昇する海面

ところが、最近は何年にもわたって潮位が上昇を続け、同時に潮が大量の砂を運んでくるようになりました。このため、長く広がるビーチには、大量の砂が堆積し、今では、ビーチの位置がコンクリート階段の最上段以外を、全て覆うほどまで高くなっています。
引き潮の間、見られたはずの石灰岩の表面も、1メートルほどの厚さに積もった砂に埋もれ、この6年の間、まったく見ていません。

1997年の時点では、2メートルにも届かなかった満潮時の最高水位点は、今、砂浜と家との境にあるフェンスに迫っています。私の家は満潮時の水位より30メートルほど内陸にあるので、あと10年ほどは、逃げなくても大丈夫だと思っていますが、いざとなれば、引越し以外に現実的な対策は思い当たりません。

他にも海面の上昇を示すものがあります。ビーチ沿いにある、たくさんのホテルや家が、これまでにはなかった巨大な防波壁を建てているのです。以前からあった壁の中には、大波によって破壊されたものもあるので、建替えの際は鉄筋で補強されています。
私が知る限り、ホテルや政府はそれ以上のことはしていません。しかし、最近新しく建てられた家は、いずれも以前からある家より、海岸から離れた場所に建設されていることにも気づきました。

1997年末に撮影したスタイルズさんの家。引き潮の間、家のすぐ下に、石灰岩の層が見えている。

2007年10月に撮影したスタイルズさんの家。石灰岩の層はほぼ砂に覆われ、高い場所にあった家が、低くなったように見える。砂は家のフェンスにまで近づいている。(C)Dan Stiles

押し流されたヤシの木 (C)Dan Stiles

押し流される樹木

砂浜へ下りると、生えていたヤシの木がすべて高い潮に押し流されていることがわかります。ここにあったヤシはとても高く伸びていて、樹齢30年以上だったと思います。1997年以降、3列に並んで生えていたヤシの木をはじめ、他の木々が高い潮によって水没し、流されています。

現在、満潮時の水位上昇はケニアのマリンディからタンザニアのザンジバル島に及ぶ、沿岸部の広い範囲で起こっていると聞いています。
高い潮が、家や庭先まで押し寄せ始めた漁村では、村に住む漁師たちは海から離れ、内陸部に移り住まなければならないというのです。

海面上昇の原因と考えられている地球温暖化は、東アフリカでの生活を、将来脅かすものではありません。今すでに、まさに起こっている脅威なのです。

WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2008年7月4日
Climate Witness: Dan Stiles, Kenya

科学的根拠

サムウェル・マリギ博士(Samwel Marigi) ケニア気象局(Kenya Meteorological Department)、気候変動部(Division of Climate Change)

今後の気候状態に関する最新の科学的知見と予測では、地球温暖化による海面の上昇を指摘しています。ケニア海岸地域は海面上昇の被害を非常に受けやすく、気候の変化が海岸沿いのサンゴ礁やマングローブの緩衝効果を弱め、浸食が進む可能性が高いことを科学的に示しています。海岸線のかなり広い範囲が浸水と浸食によって失われ、その結果、農地や都市部の土地も失われると思います。この状況に適応するための対策は非常に高い費用がかかることになるでしょう。防波壁の建設、被害の受けやすい住居や社会経済に必要な施設の移転などの対策が考えられます。

ケニア南部の海岸ディアニ・ビーチでの観察、および、そこより南のザンジバルから北のマリンディまでの長い海岸地域でスタイルズさんが聞いた話は、こういった科学的な予測と一致していますし、地元に住む多くの人たちがそれを裏付ける証言をしています。ケニアやその他の東アフリカ地域では、全体的に予想よりも早く気候変化の影響が出始めています。

スタイルズさんによる観察はとても現実的で、地球温暖化の影響による海面上昇に関する科学的予想を裏付けるものであると私は判断しています。今やるべきことは、彼が住む地域の住民が実施しているような海面上昇への適応策や緩和策を適用することです。

IPCC; 2007: Fourth Assessment Report.

全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。

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