目撃者の証言:変貌するヨーロッパ・アルプス


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ヨーロッパ(スイス):ジュエルグ・マイヤーさん

スイスの小村ミッテルハウザーンに住むジュエルグ・マイヤーさんは、大都市ベルンから離れた生活を楽しんでいます。アルプス地方の地質学を学び、山岳ガイドの仕事をしているマイヤーさんは、この35年間で山から氷が少なくなってゆく様子を見てきました。氷の減少は山の地盤などにも変化をもたらし、登山も危険が増しているといいます。

ヨーロッパ・アルプスからの証言

私の名前はジュエルグ・マイヤーといいます。53歳になります。スイスのベルン郊外にあるミッテルハウザーンという小さな村に妻と二人の子どもたちと住み、都会の雑踏から離れた生活を楽しんでいます。
私はスイスの北西部で育ち、バーゼル大学で地質学を学びました。山と自然とスポーツが大好きだったので、勉学と並行して山岳ガイドとしての訓練も受けました。

ジュエルグ・マイヤーさん
(C)Juerg Meyer

激減し続ける氷

私は自分の大好きな地質学とアルプスの両方をあわせた仕事に就き、13年間、ベルン大学の研究員と山岳ガイドの二束のわらじを履いていました。

アルプス地方の気候の変化を初めて目撃したのは、その頃のことです。この変化とは、たとえば、高山の氷河の後退や、永久凍土層が融けていく様子などでした。

1996年、私はスイス・アルプス・クラブ(SAC)の環境官の仕事に就きました。SACはスイスで最大のアルプス・スポーツ連盟で、たくさんの人々にアルプスのスポーツを経験してもらうことを目的としています。このクラブは地域の持続可能な開発と景観の保存について運動を展開しています。

世界の他の地域に比べても、地球温暖化の影響が非常に大きなアルプス地方での変化は、私の毎日の仕事にも次第に影響を及ぼすようになりました。自然の危険が増すにしたがって、アルプスのスポーツにおける安全とリスクという問題に取り組む時間が増えたのです。

35年前にはまだ氷が残っていた場所が、今では灰色の小石しかないということもあります。氷を失って山肌が不安定になったため、プティ・ドゥルのボナティ・ピラーやポータレの北壁を目指したアルプス登山は、もはや不可能となってしまいました。

名峰ユングフラウの大氷河。スイス・アルプスには、世界中から多くの観光客が訪れる。
(C)Yocchi

エーデルワイス (C)Yocchi

SACは現在、アルプスの各地にある山小屋へのハイキングコースのリスク調査も行なっています。
高度の高いところにある山小屋では、水の供給の問題が急浮上してきました。雪が不足し、氷河が後退しているために、利用していた自然の池などに水が十分に供給されなくなったのです。
山小屋のオーナーは貯水池やタンクを造るか、極端な場合にはヘリコプターで水を運ばなくてはならない状況に追い込まれています。

気候の変化への不理解、そして不平等

2007年の秋から、私は組織に所属せずフリーランスとして仕事をしています。 私が家事の半分ぐらいを引き受けて、妻が再び仕事に専念できるようにするためと、私自身が自分の会社を起こそうと考えているからです。私はやはり、アルプス地方の環境プロジェクトに、フリーランスとして参加しながら、環境・自然教育、アルプスの分野にかかわる仕事を続けたいのです。

いつも驚くのは、気候の研究ほど膨大なデータの基礎をもった学術分野は他にほとんどないということです。また、気候の問題ほど政治家や政府、企業、社会にあしらわれ、拒否され、圧力をかけられている問題はない、ということにも驚かされます。

なぜ、いつまでも懐疑論がなくならないのでしょう? 遺伝子工学や核廃棄物処理の問題は、このような抵抗にあうことはありません。短期的な利益のみに関心を持ち、気候にやさしい技術を取り扱おうとすることがほとんどない、ほとんどの企業の態度には、恐怖すら感じます。もっとも、そのような技術が中期的には確実に利益を生むのですが。

現在のところ、地球温暖化で利益を得ている勝者は、主として北半球にある豊かな国々です。例を挙げると、そのような国々では温暖な気候により農作物が成長する季節が長くなったり、新しい種類の農作物を栽培することが出来るようになったりしています。

岸壁を登るマイヤーさん。こうした山の現場で、氷や雪の減少を目の当たりにしてきた。
(C)Juerg Meyer

しかし、世界全体をみると何百万人という敗者が存在しています。そして、その多くは熱帯や亜熱帯地方の貧しい人たちです。地域の水不足は争いや人口移動を引き起こします。自分の国に生活や社会を支える基本的な資源が残っていないとしたら、人々はどこに新しい住まいを見つけることができるのでしょう?

私は一方で、気候の問題について前向きな考えももっています。最近始まった気候に関する国際的な議論は、研究開発を刺激し、より大きな国際協力への推進力をつくりだし、資源の持続可能性と消費に関する包括的な議論を促進する役割を果たしていると思います。

WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2008年1月22日
Climate Witness:Juerg Meyer, Switzerland

科学的根拠

エリック・マーチン博士。フランス・トゥールーズのMeteo-France、CNRM-GAME/GMME/MC2所属。
現在の温暖化はヨーロッパ・アルプスに影響を及ぼし、さまざまなかたちで被害があらわれてきています。山の斜面の不安定な状態は永久凍土地域の温暖化に結びつく可能性があります。
アルプスはヨーロッパの給水塔であり、標高が高い地域の場合、氷河の縮小や雪融けが加速することによって、水の供給困難に繋がる恐れが高くなっています。ジュエルグさんが目撃したことは学術専門誌に発表された同地域の雪や氷河に関する報告とも一致しています。
ジュエルグさんは現在の気候に関する国際交渉、また気候変化により誰が勝者になり、誰が敗者になるかについて憂慮しています。これは気候変動に関する当然の疑問ですが、気候変動への抵抗力をつける適応が進められている中、気候に関連しない要素による原因や、正確な評価のためのデータ不足のために、科学的観点からはまだ十分な答えを出すことはできません。

全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。

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