目撃者の証言:冬の季節が消えてゆく


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アジア(タイ):トゥンジュン・ルーングランさん

トゥンジュン・ルーングランさんは、母国のタイで気温の上昇や、雨季の長期化、集中豪雨が多発していると感じています。故郷では雨季になると、河川がしばしば氾濫し、家屋が浸水。人々は困難な生活を余儀なくされています。また、予想できない天候のために、農家の人たちは作物の植付けや、稔りある収穫を得ることが難しくなっています。

インドシナ半島からの証言

私の名前はトゥンジュン・ルーングランといいます。31歳です。バンコクから600kmほど東、タイの東端に位置するウボン・ラチャタニの、静かで平和な環境で育ちました。現在、私はバンコクの国連開発計画(UNDP)事務所で、地球環境ファシリティー・チームのプログラム・アシスタントとして働いていますが、この世界の環境にかかわる開発組織にいると、地球上で起こっている地球温暖化の危機的な状況に気づかされます。

トゥンジュン・ルーングランさん
(C)Doungjun Roongruang

天候の予測ができなくなった

私が子どもだった頃、両親は氷の配達業を営んでおり、毎朝父が製氷所で氷を仕入れて、レストランや小さな売店へ配達していました。両親は共に勤勉な労働者で、氷の配達から得る収益で、6人家族を養うことができました。

タイでは、通常、「冬」は11月中旬に始まります。しかし今では、12月か1月になってやっと冬になります。冬の期間は以前に比べて短くなっているだけでなく、寒くありません。もはやタイには「冬」はないと言えるかもしれません。

一方で夏は、本当に暑く、しかも毎年暑くなっています。ここ数年の気温は、低いときでも40度まで上がり、2007年には42度~43度まで上昇しました。私が若かった頃の夏の気温に比べて、確実に暑くなっています。私の両親もその変化に気付いており、「お天気がおかしいね。何が起こっているんだい?」と、私に尋ねてきます。

その上、この2、3年、雨季は長くなりました。冬まで続くこともよくあります。
雨の降り方も激しくなってきています。農家は天候を予測することが困難になり、作物の植付けや収穫が影響を受け、打撃を受けています。そして、過去5、6年で経験したもう一つの変化は、私の故郷を襲うようになった洪水です。上流にダムがあるにもかかわらず、雨季になると町を横切る川が氾濫し、洪水が起こるのです。

2003年7月に首都バンコクの海岸部を襲った冠水の被害。海水面の上昇も問題になっている
(C)Adam OSWELL/WWF-Canon

変化への対応と、未来に向けた取り組み

私が子どもだった頃、田舎にはたくさんホタルがいて、至る所で見ることができました。しかし、状況は変わり、今ではマングローブや森の奥深くでしか見ることができません。私は、いくつかの原因が考えられるものの、気候の変化が大きく影響しているのではないかと考えています。

私が地球を救うためにしていることは、環境が悪化している場所の写真を撮ってウェブサイトに掲載することです。他の地域に住む人々が目にできない場所を写真に撮り、重大な問題である地球温暖化について、知ってもらいたいと思っています。私が写真を撮れば撮るほど、地球環境をより良くしようというメッセージが多くの人々に届きます。

これまで私は、昔のまま変わらない場所と、環境が悪化した場所の、両方の写真を撮ってきました。この両方を撮ることで、環境保全の重要性を表現し、伝えることができると信じています。そして、タイが持っている価値ある自然遺産を、見る人の心にしっかりと浸透させ、環境保全への認識を高めることが目的です。

タイの環境保全にかかわる組織は、地球温暖化からこの世界を守るために、とても熱心に活動しています。しかし、一般の人々がこの問題に注意を払っているとは思えません。毎日の生活に追われ、この問題に目を背けているのです。

人々の環境への意識を高めることには時間がかかります。しかし、地球が直面している問題をマスコミがもっと取り上げたら、人々はもっと行動できると強く信じていますし、人々が力をあわせればこの危機を乗り越えることができると期待しています。そうでなければ、私たちの生きる場所はなくなってしまうでしょう。
次の世代へ、適切な環境保全に向けた教育を行なってゆかなければ、タイの将来がどうなるのか、想像もできません。

地元での農作業。異常気象は作付けから刈入れまで、農業の全てに打撃を及ぼす
(C)Doungjun Roongruang

WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2007年11月12日
Climate Witness:Doungjun Roongruang, Thailand

科学的根拠

アノンド・スニドボンス博士(Dr. Anond Snidvongs) チュラロンコーン大学(Chulalongkorn University)(タイ)
一人だけの意見を聞いて、気温および雨量の平均値や最高値が変化しているかどうかを判断することはできませんが、トゥンジュンさんが目撃したことは、タイ北東部における温室効果ガスによる気候への影響、つまり、気温上昇や雨量の増加などの予測とほぼ一致しています。しかし、彼が目撃した変化の中には、温室効果ガスと同様に、気温や雨量に大きな影響を及ぼす可能性のある、土地の利用方法の変化など局地的原因が含まれている可能性もあります。
Snidvongs, A. et al. (2003). Rainfall Patterns for Mainland Southeast Asia under Different Atmospheric CO2 Levels. AIACC Notes 2(2): 5-6. (www.aiaccproject.org/publications_reports/AIACC_Notes_v2n2.pdf)

全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。

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