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目撃者の証言:リンゴの伝統品種が消えてゆく
ヨーロッパ(ドイツ):温暖化の目撃者:ピーター・トリロフさん
2006年9月に開かれたドイツでの温暖化防止イベントで、ピーター・トリロフさんは、リンゴ農園で自らが目撃してきた温暖化の影響について発表しました。リンゴの栽培に特に関心を持ち、長年ドイツのコンスタンス湖周辺で、天候を詳細に観察し、克明に記録してきたトリロフさんは、近い将来、コンスタンス湖周辺でリンゴ栽培ができなくなるのではないかと大変心配しています。
ドイツのリンゴ農園からの証言
私の名前はピーター・トリロフといいます。技術者として、ドイツのコンスタンス湖近くのリンダウという町に49年住み、20年以上フリードリッヒスハーフェンの果実協同組合の植物保護アドバイザーをしています。地元のコンスタンス湖のことについては誰よりも詳しいと思っています。私は1990年からこの地域で、気温、降雨量、湿度、日射量など、多くのデータを分析し続けてきました。いろいろな気候データを使ってシミュレーションを行ない、果実の栽培を脅かす、特定の病気や害虫の発生を予測するのです。
害虫が早く飛び始めた
私がこの気象データを集めだしたのは、1990年代に、いわゆる「アップル・モス(リンゴのガ)」といわれる、リンゴの害虫の一種が、以前よりも早く孵化し、飛び始めることに気づいたときでした。このガの幼虫は、もっとも被害の大きなリンゴの害虫として知られています。
私はさらに、リンゴの木が以前よりも早く芽吹くことにも気づきました。そこで、地球温暖化がこれらの現象の共通の原因ではないか、と考えたのです。
偶然ですがこの年に、大気環境研究所(Institute of Atmospheric Environmental Research)のヴォルフガング・ザイラー所長が、コンスタンス湖周辺地域の気候変動予測について講義されたのを聞きました。そして、所長が示した予測は私のデータと完全に一致しました。
それ以来、私はデータの収集を続けています。
データは、年ごとの平均気温が少しずつ下がっていることを示しています。しかし、月別に見ると、劇的な変化が起きていることに気づきます。例えば近年、夏の気温が上昇し、空気が乾燥していることがわかります。6月の気温は、過去に比べて平均で2度ほど高くなっており、最高気温は5度高くなりました。これは、コンスタンス湖周辺に限ったことかもしれませんが、冬の気温は平均よりもかなり低くなっています。同時に、短期間に気温が極端に変化することが多くなり、冬の終わりの雨量も、これまでにないほど増えています。
リンゴの木への影響
この気温変化の影響で、ほとんどのリンゴの木が2~3週間早く芽を出すようになっています。
通常リンゴは4月中旬に芽吹くのですが、1990年以降、これまでの年のほぼ7割が、3月中旬に芽を出し始めました。この変化によって、農薬の使用期間が長くなり、費用や健康への危険が増すのは、大きな問題です。
また、3月の終わりには、寒さが戻り、雪が降ることもあります。そうなると、ちょうど新しい芽を出し始めているリンゴの木々は、霜の害を受けやすくなってしまいます。さらに、6月の気温が非常に上がって乾燥する現象も起きています。こうなると、若い木は根を張れなくなり、植えたばかりの木は枯れてしまうことになります。
1990年以降、雨量は50%減っていますが、その一方で、秋の湿度が高くなる年が多くなっています。そのため、多くの木がカビの感染による、リンゴ黒星病にかかってしまいました。1990年以降のデータによれば、秋になってから、病気に感染する木が急増しています。この時期の感染は、翌年のカビの胞子を増やすことにもなるため、対応がとても難しくなります。
1995年から2005年までに、この病気の影響を受けた農家は、2倍以上に増加しました。しかし、興味深いことに、イタリア北部の南チロル地方や、トレンティーノでは、この病気の感染は減っています。これらの地中海地方では、日照りの続く日が多くなっているためではないかと思います。
この他にも、リンゴの色づきの悪さや、日焼けの問題が増えています。
たとえば、気温が十分に下がらないと、リンゴ独特のきれいな赤い色にはなりません。収穫直前の秋の夜に、気温が下がると、リンゴは深い赤色になるのです。この赤い色は、多くのリンゴの品質の証で、赤が深いほど価格が高くなります。
しかし、このリンゴの色づきが悪くなる一方で、日焼けして色が悪くなるリンゴが増えてきました。リンゴの日焼けは、以前から起きていましたが、最近は、日焼けする頻度と度合いが、著しく増しているようです。暑い午後の日差しからリンゴを保護するものがない場合は、特に被害が大きくなります。高い気温が、リンゴの果肉を熱し、組織を破壊してしまうのです。
このようにして、10%~20%のリンゴ農園が被害を受け続けています。
ひょうを伴う暴風雨の増加
このようなさまざまな問題が今、リンゴ農園を脅かしています。しかし、これらよりもっと危険な大問題もあります。それはひょう(雹)の被害です。とりわけ、強風の吹く回数や強さが増し、これがひょうの嵐になると非常に危険です。
これまで、ひょうを伴う激しい雷雨は、夏に2回ほど襲ってきました。しかし、2001年から2004年までは、春に広い範囲で、雷を伴わないひょうの嵐が数回ありました。この、何の前触れもなくやってくる春のひょうは、これまでにない、新しい傾向だと思います。
ここ何年かの間、毎年のように、たった1回のひょうで作物が台無しになってしまった農家がいくつもありました。ひょうの嵐にやられると、そのシーズンはもうリンゴを売ることができなくなります。農家にとって、数年間も続けて収入が無くなるのは、絶望的なことです。
ひょうの被害を避けるため、リンゴの木をネットで覆うようにしていますが、そのネットの購入費用は農家にとっては大きな負担になります。
しかも、このひょうの被害が、北部地域だけで起こっていることではなく、多くの果実栽培地域で増えていることを、指摘しておかねばなりません。
これは最近、世界の他の国々でも見られている新しい現象です。例えば、オーストリアのシュタイアーマルク地方や、イタリアのポー川流域、同じくピエモンテ州、さらに、オーストラリアやニュージーランドでも急増しています。
リンゴ農家の苦難
気候変動の影響を受けているリンゴは、コックス・オレンジ、ボスコップ、ジョナゴールドなど、昔からある品種です。残念なことですが、やがてこれらのリンゴは、コンスタンス湖周辺で育てることが出来なくなるかもしれません。伝統的な品種は、高温と雨不足にうまく適応できないのです。
市場のグローバル化により、安いリンゴが流入していることも、これらのリンゴが消えてゆく理由の一つですが、最大の理由はやはり地球温暖化です。
私たちは今、アルプス南部の果実栽培農家が、以前に経験したことと同じ経験をしています。しかし、この地域のリンゴ農家は幸いでした。10 年ほど前から、既にガラ、ブラエバーン、フジなどの品種を選んで栽培を続けていたからです。もしそうしていなかったら、夏の気候がイタリアの南チロル地方と似ているこのアルプス南部でも、気候変動に適応するため、栽培する品種を変えなければならなかったでしょう。
リンゴは、開花してから最初の6週間に細胞分裂を起こしますが、その後、果実の中で作られる細胞の数は、気温によって変化します。温度が高いと、より多くの細胞が作られ、果実は大きくなります。
従って、気温が高い方が、私たちが育てている新しい品種にとってはありがたいのですが、伝統的な品種のコックス・オレンジにとっては、そうではありません。高温になると細胞の数が増えすぎて、実が大きく、柔らかくなり、早く腐ってしまうのです。このため保存が難しく、わずかな量しか売ることができなくなり、コックス・オレンジは利益を上げられなくなりました。
もし昔からのリンゴを栽培するなら、ドイツ北部のオールド・ランドかデンマークのような、もっと北に移動しなければなりません。
果実栽培がこのように難しくなっているので、近い将来果実農家は極端に少なくなると思います。この傾向は1990年代半ばから始まっており、過去15年間に、次世代の後継者が90%も減りました。温暖化は果実栽培を追い詰める原因の一つにすぎませんが、将来はもっと深刻な問題となるでしょう。そして、リンゴの価格下落の傾向が続いていることと、改善されない官僚主義体制が、この深刻さに拍車をかけています。
気候変動の脅威に適応する取り組み
2007年、私は地球温暖化に立ち向かうために、自分の家を断熱材で覆い、太陽光発電装置を設置することにしました。明かりも主に省エネタイプのものを使っています。可能な限り出張は電車で出かけ、やむを得ない場合だけ飛行機を利用します。余計な二酸化炭素の排出量を減らせるからです。
また、ここ数年、バイオ・ディーゼル車を運転し、できるだけクルーズコントロール(速度設定装置)を使って定速走行を心がけています。時速80キロから120キロで走っているので、約20%、最近は燃費がよくなっています。ゆっくり走行すると他のドライバーがいらいらするのはわかりますが、続けるつもりです。
人間は、自分たちのライフスタイルや消費行動が、あと200年から300年ぐらいしか維持できないだろうと私は思っています。政治家、経済界、社会の人々は、新しい技術だけで、現在の気候変動を緩和することができると勘違いしていますが、それでは手遅れなのです。
温室効果ガスを削減する高い目標が必要なばかりでなく、もうこれ以上ドイツに石炭発電所を作らないよう勇気を持って規制することが必要です。空の交通量も規制すべきです。自動車をこれ以上大型化、高速化せず、燃費のよい車を生産しなければなりません。
地球温暖化は私たちの生活を脅かしています。この数年間に、世界の農業生産は不安定になってきました。1990年代半ばから世界の穀物備蓄は、100日分から55日分に減っています。さまざまな努力にもかかわらず、多くの熱帯性の疾病が広まり、異常気象が増え、降雨量が増加して降雨地域が変わり、世界中の氷が解け、動植物は絶滅し、人口は百万単位で増えています。なぜ誰も、この関連性に気づかないのでしょうか?
WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2007年7月31日
Climate Witness: Peter Trilloff, Germany
科学的根拠
ミヒャエル・シルメル(Michael Schirmer)博士 ドイツ・ブレーメン大学
温暖化の目撃者、ピーター・トリロフさんは18年間におよぶ彼自身の気候観察について述べ、これを彼のリンゴ農園から得た生態学的データと結びつけています。気候変動を評価するには18年間は短すぎますが、彼の観測内容は、長期的傾向と気候変動に関する一般的な科学的予測と一致しています。
コンスタンス湖周辺地域の天候は、アルプス山脈の特殊な高山性気候に不規則に地中海性気候が影響を与えているため、もともと複雑な気候です。そこへ、進行する気候変動がさらに追い討ちをかけているのです。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の世界気候予測、A1Bシナリオのダウンスケーリング手法での予測では、冬の気温が3~4度上昇するされています。この傾向は何十年も前からドイツのほとんどの地域で観測されています。その上、年間を通しての天気の変化が、より予測困難になっているいう考え方は、気候変動に関しての科学が伝える事と一致しています。この地域で観察された生態系や農業への悪影響は、高い確率で気候変動のために起こされていると考えられます。このことは、今後気候変動の悪影響への適応が必要になるということをあらわしています。
参照先:Max-Planck Institute of Meteorology
全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。
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公開日:2007/07/31
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