目撃者の証言:山々から雪と氷が消えていく


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北アメリカ(アメリカ):ノーラ・ロイスさん

ノーラ・ロイスさんは、個人指導のスポーツトレーナーとフィットネス・インストラクターの仕事に携わっています。30年以上もハイキングや登山を続けてきたロイスさんは、世界各地で氷河が失われていくことを、とても心配しています。

北米の山々からの証言

私の名前はノーラ・ロイスといいます。61歳です。ニューヨーク州オールバニーで、個人指導のスポーツトレーナーとフィットネス・インストラクターの仕事をしています。ニューヨーク市のクイーンズで育った私は、1970年代の初めにオールバニーに移住した時、本物の冬というものを初めて体験したと思いました。オールバニーに引越してから本格的に登山を始め、ニューヨーク州のアディロンダック山地やキャッスキル山地を登りました。80年代初めにはニューハンプシャー州のホワイト山地を登り、その後も世界中の山々に登ってきました。

ノーラ・ロイスさん
(C)Nola Royce

薄い氷

私は、地元の冬の天候を予測することが、困難になってきているという異変を、目のあたりにしています。雪や氷に覆われる季節はとても不規則で、以前に比べ遅く始まり早く終わっていると感じます。私のような登山者は12月から3月までの間は、良質の雪と硬い氷が必ずあるものだと思っていたものですが、今ではそのようなことは期待できなくなってしまいました。

もうひとつ気づいたことは、湖がなかなか凍らず、凍ってもすぐに溶けてしまうということです。冬の旅行の際には、凍った湖の上でキャンプしたものですが、今はしなくなりました。凍った湖を横断するスキーレースも行なわれていましたが、この5年ぐらいは開催されていません。もうスキーレースを開催できる状況にはならないかもしれません。

人を刺すやっかいな虫、ブヨも、これまでより大分早い時期に現れるようになっています。以前は6月1日ごろに現れたのですが、今では1カ月ほど早く現れて人を刺します。また、以前に比べてずっと北の地域でも現れるようです。

このような状況の中で、数カ月前、あるいは数週間前にであっても、スキー旅行の計画を立てるのは非常に難しくなっています。その時々のスキー場や天候のコンディションを賭けた、ギャンブルをするようなものです。
若い人やこれから登山を始めようとしている人たちは、この変化する環境に対応しなければならないだけでなく、30年前に登山を始めた私たちとは、基本的にまったく違う体験をすることになります。雪や氷の無い山を登る彼らは、登山よりロック・クライミングを始めた方が良いかもしれません。

氷壁をのぼるロイスさん。冬の山にはこの季節ならではのさまざまな楽しみがある。
(C)Nola Royce

早い雪解け

アメリカ合衆国北東部で起きている変化は、北極や南極のそれに比べれば、小さなものかもしれません。私は、登山旅行で南極大陸に行ったことがあります。たった一度の旅行なので、変化を目撃したとは言えませんが、そこで働いている人たちから、氷が早く解けているという話を聞きました。
例えば、アメリカの政府専用機が南極に来ても、滑走路にしていた棚氷が消滅しているために、着陸場所を来るたびに内陸に移動させなければならない状況です。

アイスクライミングの名所として知られていた、アフリカのキリマンジャロのブリーチ・ウォール(白い壁)の氷壁は、ほとんどなくなってしまいました。最後に人が登ったのは1970年代のことです。私は最近キリマンジャロに登りましたが、消え行く氷を自分の目で見て本当に驚きました。

WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2007年5月30日
Climate Witness: Nola Royce, USA

科学的根拠

ディーナ・P・マックミノヴスキ博士(Dr. Dena P. MacMynowski) 米スタンフォード大学 環境科学・政策センター(Center for Environmental Science and Policy)

ロイスさんの報告は米国北東部で春の訪れが早まっているという報告と一致しています。花々は早く咲き、渡り鳥たちは早めに渡りをします。春の始まりが早くなっているため、虫の現れる時期とその虫を子供たちの餌にする渡り鳥が飛来する時期とが合わなくなる可能性があります。
最近の調査では、キャッスキル山地では、2月から4月にかけての最高気温が非常に高くなっていることがわかりました。春の気温がより高くなっているので、氷も早く解けることになります。ニューヨークやニューイングランド地方では過去1世紀にわたって、気温が地球全体の平均気温の上昇と同じ程度、あるいはそれよりも高い上昇を示しています。
ロイスさんの証言は、中緯度地域に比べて極地でより著しい温暖化が観察されているということとも一致しています。

Burns, DA ; Klaus, J ; McHale, MR; Recent climate trends and implications for water resources in the Catskill Mountain region, New York, USA; Journal of Hydrology; Mar 30 2007; v.336, no.1-2, p.155-170
Author:Trombulak, SC ; Wolfson, R; Twentieth-century climate change in New England and New York, USA; Geophysical Research Letters; Oct 16 2004; v.31, no.19, p.L19202 1-4
Butler, CJ; The disproportionate effect of global warming on the arrival dates of short-distance migratory birds in North America; Ibis; July 2003; v.145, no.3, p.484-495

全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。

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