目撃者の証言:グレート・バリア・リーフの危機


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オセアニア(オーストラリア):ジョン・ラムニーさん

オーストラリア東海岸のポート・ダグラスに住むジョン・ラムニーさんは観光ダイビング事業を営みながら、この事業からの得た収入をグレート・バリア・リーフに関する研究プロジェクトの資金に充てています。ラムニーさんは、地球温暖化がサンゴ礁の自然や、地域の社会、ビジネスなどに、どのような影響を及ぼすのか心配しています。

世界最大のサンゴ礁からの証言

私の名前はジョン・ラムニーです。米国で育ち、ジャック・クストーがドキュメンタリーで紹介した海底の驚異に魅了されました。「カリプソ」(ギリシャ神話に出てくる海の妖精)の冒険の夢は消えることなく、今日では私は、若いころの夢をはるかに超える、グレート・バリア・リーフでの生活を送っています。

ジョン・ラムニーさん
(C)John Rumney

グレート・バリア・リーフの夢

グレート・バリア・リーフの荘厳さと驚異さを探りたいと思っていた私は、30年以上前に、クイーンズランドの北部へとやってきました。サンゴ礁は、私の心であり、魂といっても良いぐらいです。この探検のためにアメリカから来ましたが、今も魅せられ続けています。

今では私の故郷となったポート・ダグラスの町に初めて来た時、ダイビング用の船と燃料を購入するため、私は漁師になりました。自然と付き合うためには、これはごく当たり前のことでした。当時は観光が盛んになる前だったので、ヨットをただ一日中乗り回していることなど出来なかったのです。
長年、サンゴ岩礁で漁とダイビングをして生活していた私は、時には妻のリンダと何週間も海で過ごし、やがてそこに子どもたちが加わりました。
しかし、時間が経つに連れ、目の前にある現実の海は、私が思い描いていた汚れのない夢の国のようなグレート・バリア・リーフと違うと感じるようになりました。特に、魚がどんどん減ってきていることに気付いてからは、自分の暮らし方も変えるようになりました。

1980年代の初め、グレート・バリア・リーフ海洋公園局は、私の船やほかの船舶をチャーターして、新たに作られたこの海洋保護区が、どのような状態にあるかを調査しました。

そして、多くの研究者を船に乗せた私は、研究のための資金が不足していること、また彼らが岸から遠く離れたサンゴ礁まで行くのが簡単ではないことに気付きました。また、研究者の豊富な知識と熱意とが教えてくれる、サンゴ礁のさまざまな生きものの姿に、興奮と驚きを覚えました。

このようなことが続き、私は仕事のアドベンチャー・ダイビングで得た収入を、サンゴ礁研究のための資金に充てることを考えるようになったのです。

グレート・バリア・リーフ。オーストラリア大陸の北東部に、南北2,000キロにわたって広がる。(C)Martin HARVEY/WWF-Canon

(C)Jurgen FREUND/WWF-Canon

海底探検家プロジェクト

1995年、私は「海底探検家」プロジェクトを始めるため、リノ・グロロとダイアナ・グロロ夫妻が主催する研究グループに参加し、長年の夢を実現する一歩を踏み出しました。

「海底探検家」の目標、それは「新たなるカリプソ」をつくり、そこでアドベンチャー・ダイバーと研究者が一緒になって、他では得られない最高のサンゴ礁を体験するツアーを実施することです。

グレート・バリア・リーフには研究に使える船が少なく、定期的に沿岸とサンゴ礁を往復する便も多くありません。
私の船にとっては、観光客をダイビングに連れて行く仕事が優先ですが、この「海底探検家」プロジェクトも、多くの研究プロジェクトの資金源になるだけでなく、重要なサンゴ礁に研究者たちを運び、海洋科学者や学生たちを支援して雇用を創出する大切な仕事です。

この仕事は、とてもうまくいっています。「海底探検家」の1週間にわたるツアーは大人気です。私の船は、生態がわかっていないオウムガイをはじめ、サメやミンククジラの生態、人間と鯨類との関係、水質、サンゴの産卵や、生物によるサンゴ礁の侵食など、多くのことを調べるための、重要な基地の役割を果たしました。
そして、研究者たちはさまざまな活動に取り組み、たくさんの質の高いドキュメンタリーがこの船上で制作されました。


ブダイの群れとソフトコーラル(骨格をもたないサンゴ)の一種
(C)Jurgen FREUND/WWF-Canon

サンゴ礁と、サンゴ礁が支える地域への不安

これまでにグレート・バリア・リーフでは、水質保全計画が実施されたり、保護区面積を全体の4.5%から33%に拡大されるなど、サンゴ礁の保全管理に向けた取り組みが成功しつつあります。
しかし私は、依然として将来に対する不安を感じています。グレート・バリア・リーフだけでなく私の住む地域や自分の家周辺のことも心配です。

私は当初、魚の減少を心配していましたが、今では農場の肥沃な土が、サンゴ礁のある沿岸海域に流れ出てしまうことによって生じる富栄養化の被害についても心配しています。

とりわけ私が最も心配しているのは、地球温暖化によって起こるサンゴの白化現象です。初めて白化したサンゴ礁を見た時、私は幽霊を見るような恐ろしい気持ちになりました。健康で生気にあふれ、色鮮やかなサンゴ礁が、1、2週間で白く荒れた世界になってしまうのです。

同時に私は、観光という私の事業や、地域社会が被るサンゴの白化の影響についても考えるようになりました。
オニヒトデに食われた被害とは、明らかに異なる白化を初めて見たのは6年ほど前でしたが、それが今では珍しくなくなりました。この4年間にオニヒトデと白化のため、ダイビングスポットの約1割が使えなくなりました。カリブ海やモルジブで何が起こったのか知っています。もし同じことがここで起きたら、私たちは観光客に見せるものは何もなくなってしまうでしょう。

ラムニーさんと調査ツアーのクルー
(C)John Rumney

エイの一種 (C)Jurgen FREUND/WWF-Canon

自然遺産の未来

陸上からの排水などによる水質の悪化(富栄養化)は、オニヒトデのようなサンゴを食べる動物が急激に増える原因となりますが、このような影響は、温暖化がサンゴ礁にもたらす被害を、さらに悪化させてしまいます。
実際、最近のオニヒトデの発生は、過去50年間にグレート・バリア・リーフの海域で起きた、海水中の養分の増加に関係があると考えられています。

私は、世界遺産の熱帯雨林とグレート・バリア・リーフを身近に見られるここポート・ダグラスに住んでいることが非常に幸運なことだと思っています。そして、多くの人が訪れる理由も、この自然を見ることができるからです。つまり、その自然に触れることができるからです。

ですから、ここに観光の目的となるような自然環境が無くなれば、観光客はそれまで求めていた自然の世界から離れ、ディズニーランドに遊びに行くようになってしまうでしょう。

私は非常に心配しています。なぜなら、グレート・バリア・リーフに近い沿岸地域の観光産業は、年間約55億ドルを売上げ、6万人以上の雇用を生み出しているからです。

私たちは多くの気候変動の科学者の意見に耳を傾け、真実を真剣に考えて態度を改めなければなりません。タバコ会社がタバコについて嘘をついていたように、私たちは石油会社や、改革にうしろ向きな政治家から本当のことを聞くことはできないのです。

WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2007年5月1日
Climate Witness:John Rumney, Australia

サンゴを食べるオニヒトデ。大発生するとサンゴ礁全体が大きな打撃を受ける
(C)Jurgen FREUND/WWF-Canon

ポート・ダグラス沖に浮かぶダイビング・プラットフォーム。世界中から観光客がやってくる
(C)Tanya PETERSEN/WWF-Canon

科学的根拠

オーヴ・フーイ・ゴールドバーグ教授兼部長(Ove Hoegh-Guldberg) オーストラリア、クイーンズランド大学(University of Queensland)海洋研究所
ジョン・ラムニーさんはサンゴの白化、海水温度の上昇及び気候変動について世界中の人々が目撃していることを非常に分かりやすく説明しています。ほぼ毎日グレート・バリア・リーフを訪れるラムニーさんのような観光業者は、近年、事業の基盤となる観光資源が次第に劣化していくのを目撃しています。
大規模なサンゴの白化はグレート・バリア・リーフ全体で過去に6回起きています。その都度、グレート・バリア・リーフ海洋公園では最大60%のサンゴ礁が影響を受けました。過去74万年のどの時代と比較しても、現在の海水温度上昇は約100倍のスピードで上昇しており、それが白化の原因となっています。(2007年12月サイエンス・マガジン(Science Magazine)、フーイ・ゴールドバーグ(Hoegh-Guldberg)他, 2007)
ラムニーさんは、地域的要因もサンゴ礁の劣化に関係があると言っています。栄養分の増加など地域的要因によるものと思われるオニヒトデのことを彼は述べています。また、地域的要因と地球規模の要因との相乗作用を強調しています。地域的要因の影響を受けているサンゴ礁が、広範囲にわたるサンゴの白化のような地球規模の気候変動からすぐに立ち直ることは難しそうです。
サンゴ礁の直面する問題点は「急激な気候変動と海洋酸性化の中でのサンゴ礁(Coral Reefs under Rapid Climate Change and Ocean Acidification)」(下記参照)に記述があります。それは地球温暖化と「静かなるサンゴ礁の殺人者(the silent killer of coral reefs)」である海洋酸性化との重要な関連性について述べています。それはラムニーさんのような観光業者が日々、目にすることではありません。しかしながら、海洋酸性化はやがてグレート・バリア・リーフのようなサンゴ礁を絶滅させ、何百万年とまではかからなくとも、数十万年の間は修復不可能になってしまうでしょう。

全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。

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