目撃者の証言:ガンたちの行動が変わる


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北アメリカ(カナダ):コリー・マーチバンクさん

カナダのプリンス・エドワード島で水鳥のハンティング・ガイドをしているコリー・マーチバンクさんは、近年、気温の著しい上昇や、冬期の雪や氷の減少を目撃しています。また、この変化が島を訪れるカナダガンの渡りのパターンに影響を与えていることにも気づきました。

水鳥の島からの証言

私の名前はコリー・マーチバンクといいます。カナダのプリンス・エドワード島にあるミスコーシュの町に住んでいます。私は35歳、ハンターを狩猟場に案内するガイドを仕事にしていて、息子1人と双子の娘がいます。私はよちよち歩きの頃から、父親と狩りを始めました。アウトドアが大好きだったので14年前にプロのガイドになり、アメリカやカナダ各地から、ハンティングをするために訪れる観光客を案内し、共に狩りをしています。

コリー・マーチバンクさん
(C)WWF Canada

11月の蚊

長年、私の家の周りに広がる穀物畑やジャガイモ農地は、ガンなどの水鳥を撃つのに最高の場所でした。しかし最近は、状況が変わってきています。近年、私は気温の著しい上昇や、冬期の雪や氷の減少、そして、それらの変化が、カナダガンの渡りの行動パターンに影響を及ぼしていることに気づきました。

ガンの狩猟シーズンは、10月の第1月曜日から、12月の第2土曜日までです。一般的に、シーズン初めは少し寒いのですが、ここ2年間は11月まで暖かいため、これまで着ていた狩り用のジャケットではなく、Tシャツとスニーカーといういでたちで、まとわりつく蚊を追い払いながらハンティングをしています。

以前は11月前には雪が降ったものですが、今ではクリスマスまでに降れば良い方です。また、クリスマスから春までは通常スノーモービルの季節でしたが、2006年から2007年にかけての冬は、スノーモービルに乗ることのできる天気は、1週間しか続きませんでした。
私が子どもの頃は、雪が電線の高さまにまで積もり、子どもを外に出さないようラジオで警報が流れていましたが、そのような光景は、もう長い間見ていません。

カナダガン。北米大陸を南北に渡る渡り鳥。

マーチバンクさんと愛犬。暖かくなるにつれ、狩りの機会が減っていく。 (C)WWF Canada

変化したガンの行動

島では、秋の気温が高くなっているため、カナダガンが南方へ渡っていく時期が以前よりずっと遅くなっています。
以前は、寒くなり始め、プリンス・エドワード島から南へ向かって旅立つ時期が近づくと、ガンたちは農地に残された穀物の落穂などをよく食べていましたが、最近は近くの湾や入り江にたむろするようになりました。
このようにガンが水の上に集まるようになったことには、いくつかの理由が考えられます。第一に、河川が以前のように凍りついていないということ。そして、なかなか冷え込まないので、以前のように、南方へ移動する前に食料を食べだめしなければと、いうプレッシャーを感じていないためです。暖かく天気の良い日が続くと、ガンは水の中から出ようとせず、内陸にはまったく姿を見せません。これは大きな変化です。

また、今では一年中、島にとどまるガンさえいます。このような光景は今まで見たことがありません。もしここの気候がずっと温暖であり続ければ、渡り鳥であるはずのガンたちは渡りをやめて、この辺りを離れなくなるかもしれないのです。

地域への影響

通常、狩猟が解禁されてから2週間がハンティングには一番良い時期です。ところが今では、訪れたほとんどのハンターたちが手ぶらで帰って行きます。この2年間、解禁日の初日には、一羽もガンが獲れませんでした。私には、毎年ここを訪れる4人グループの客がいるのですが、彼らはいつものようにガンを撃つことを期待してやって来ます。しかし、彼らも過去2年間、解禁初日には何も獲れませんでした。今では彼らはこんなぼやきをするようになりました「以前は狩りに出かけると、そこら中にガンがいたことを憶えているかい? 今では、解禁日にガンはどこにもいない」。

もし、あと1~2年も、このような状況が続けば、アメリカやカナダの各地から、ハンティングをしにくる客は来なくなるでしょう。これは、私のような地元のガイドに痛手となるだけではなく、農業に携わる人たちにも影響を与えます。彼らは農閑期にハンティングのために農地を貸すことで収入を得て、助かっていたからです。狩猟に適した農地は、最高4,000米ドルほどで貸すことができるのです。

ガイドは皆、私と同じ状況です。私たちは客たちが日焼け止めローションと虫除けスプレーをつけて、農地でじっと獲物を待っている間、ただ頭をかいています。
地元自治体は、ガンの渡りの時期にあわせて、解禁日を1週間またはそれ以上遅らせ、狩猟シーズンを変更する検討を始めています。しかし、行政の対応は遅いです。

WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2007年4月4日
Climate Witness: Corey Marchbank, Canada

科学的根拠

クリス・ファーガル教授(Chris Furgal)教授 共著「PCC Polar Regions Chapter」 自生環境研究プログラム(Indigenous Environmental Studies Program)、トレント大学・グツォヴスキカレッジ カナダ

マーチバンクさんの証言は、プリンス・エドワード島、広くいうとカナダ大西洋岸地域に関する科学的観察および予測と一致しています。
カナダ大西洋岸では過去60年以上、気温上昇が観察され、特に夏季の平均気温は上昇しています。冬季の平均気温はやや低めですが、最近では他の季節と同じく温暖化の傾向が見られます。その地域では、一年を通じた気温上昇と年間降水量の増加が予測されています。マーチバンクさんの目撃談や科学研究でも報告されているように、これによって湖や海の氷が減り続けると思われます。そして、残念なことですが、将来降雪量も減るでしょう。
これらの変化は野生生物に影響を与えます。この地域に定住している生物やカナダガンのように定期的に移動する生物どちらにも影響があります。プリンス・エドワード島に限定したガンの渡りの時期と活動への影響に関する科学的研究の中で、マーチバンクさんの目撃談と同じようなことが報告されています。これらの観察は、環境が変化している際に、移動性生物が起こす行動の予測と一致しているのです。この点から、マーチバンクさんによる観察は、気候変動がカナダガンやプリンス・エドワード島に住む人々にとって重要な産業に与える影響を知る上で重要な現地情報なのです。
環境の変化に対応して、また、狩猟機会を保護するため、狩猟シーズンをずらそうとする動きがプリンス・エドワード島以外の様々な場所で起こっています。野生生物を監督する行政が、狩猟時期の変更などを通じて、管理体制を柔軟にしていかなければならないのです。マーチバンクさんの証言は科学文献と一致していますが、その証言は、この地域の猟師やガイドたちにとって重要な移動性生物に対する、環境変化や気候変動の影響を理解するためのプリンス・エドワード島における最新の情報を提供してもいるのです。

Vasseur, L. and Catto, N. 2008. Atlantic Canada; In From Impacts to Adaptation: Canada in a Changing Climate 2007, edited by D. Lemmen, F.J. Warren, J. Lacroix, and E. Bush; Government of Canada, Ottawa, ON, p. 119-170.
(http://www.adaptation.nrcan.gc.ca/assess/2007/index_e.php)

全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。

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