目撃者の証言:極北の動物たちの行動が変わる


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アジア(ロシア):ヴラディレン・イバノビッチ・カヴリさん

ヴラディレン・イバノビッチ・カヴリさんは、ロシア最東端に位置するチュコト海沿岸の村で、セイウチやホッキョクグマなどの北極の野生動物たちとともに暮らしてきた、先住民の一人です。カヴリさんは減り行く海の氷が、地域の自然に影響を及ぼし、野生動物たちの行動にも変化をもたらしているといいます。

シベリア東端の原野からの証言

私の名前はヴラディレン・イバノビッチ・カヴリといいます。ロシア最東端のチュコト海沿岸、チュコトカ地方のヴァンカレムという村に住んでいます。チュコトカはロシアの自治区で、私たちはチュクチ族と呼ばれる民族です。ロシア語に加えて土地の言葉であるチュコト語を話します。

ヴラディレン・イバノビッチ・カヴリさん
(C)WWF Russia

チュクチの村

私は1966年に生まれてから、ずっとここで生活しています。チュクチの人々は何世代にもわたり、生きていくために海にすむ哺乳動物を漁獲し、トナカイを飼ってきました。200人が住む私の村をはじめ、沿岸に広がる村々には数千人の人が暮らしています。

北極圏の野生動物に囲まれて暮らしてきた私たちは、氷に閉ざされた生活や、強風、凍った雨の嵐などの悪天候にも慣れています。
冬には海も川も凍りつき、これまでずっと、私たちは海氷の上を歩くことが出来ました。そして私の村があるヴァンカレム岬は、ロシア北東部で、最大のセイウチの繁殖地です。

原野に立つガヴリさん(C)WWF-Russia

セイウチは毎年夏になると、休息と出産のため海から陸に上がってきます。セイウチは、1年のほとんどの期間を氷の上で過ごすため、海に氷がない夏の季節しか、陸に上がってくることはありません。
このセイウチの休息場所は、私の村にとても近いのですが、人間とセイウチはお互いにじゃまをすることなく共存してきました。

減ってきた海の氷

私は、これまでの人生を通じて、海が凍り、またそれが融ける季節のサイクルに、大きな変化が起きていることに気づいていました。現在、海が凍りつくまでには約1カ月かかっていますが、この期間は以前よりも長くなっています。そして、この海氷は、以前よりも1カ月早く融けて崩れ始めています。
そして、私の村の多くの人たちは、以前は夏の間も原野に残っていた氷が溶けるのも目撃してきました。古い氷はもう残っていません。

このような氷の変化は、セイウチの集団の行動にも影響することになりました。海に氷が無いため、陸地に長くとどまることになったのです。私の友人である82歳のティルムイェットは、「夏に海から氷が全くなくなってしまったので、セイウチは疲れて休む場所がないのだ」と言っています。

また、季節の長さが変わったため、カモ類やカモメ、ユキホオジロなどの渡り鳥も、南へ旅立つのが遅くなっているのがわかります。

セイウチ
(C)Kevin SCHAFER/WWF-Canon

ホッキョクグマ、セイウチ、そして人間

ここ数年間の冬、私たちはセイウチがますます増えてきていることに気付きました。また、これまでより多くのホッキョクグマも、セイウチの生息場所や、人のいる村に近づいてくるようになりました。海氷の上でアザラシなどの獲物を探すホッキョクグマは、その氷がなくなったため、狩りができる範囲が狭くなってしまったのです。ホッキョクグマが増えたのは間違いなく温暖化のためです。

こうして村に食物を探しに来たホッキョクグマが、そり犬を襲うことが大きな問題になっています。1日に10頭のホッキョクグマがお腹をすかせて村に現れることも稀ではありません。そんな時は、私たちは脅かしてクマを追い払わなければなりません。
ロシアではホッキョクグマは保護されており、1956年以来狩猟は禁じられています。ですから現在、私たちはホッキョクグマを傷つけずに、人間から遠ざける努力をしています。

セイウチの群れ
(C)WWF-Russia/Viktor Nikiforov

ホッキョクグマ・パトロール出動

2006年、私はWWFの協力を得て「ホッキョクグマ・パトロール」を始めました。これは、パトロール隊が村の周囲を回り、ホッキョクグマが近づきすぎるようであれば警報を鳴らす、というものです。
こうすればクマと人の命の双方を守ることができます。クマ科に属するパンダのロゴで有名なWWFが、こうしてホッキョクグマを守るのに一役買っています。

また、私たちは人がセイウチの集団に近寄らないようにも気をつけています。セイウチは人間が近づきすぎるとパニックになり、たくさんのセイウチが押しつぶされて死ぬことがあるからです。
そして死んだセイウチの臭いは、村にとても近いこのセイウチの生息場所に、ホッキョクグマを呼び寄せ、人間を危険にさらすことになります。2006年の末、ホッキョクグマのパトロール隊が、死んだセイウチを数頭トラクターに載せ、ヴァンカレムから10キロ離れた場所に運びました。このセイウチの死骸は、ホッキョクグマを満足させたようです。

ホッキョクグマ・パトロール隊は、同時に温暖化によるホッキョクグマの個体数の変化を調べるWWFの活動を支援するため、情報を収集しています。私たちは調査のための訓練を受け、パトロールの際には無線機などの装置も持っていきます。先にセイウチの死骸を運んだ場所も、私たちの観察ポイントの一つです。

2006年に私たちは、この地域に生息する野生動物と、自然環境を守るためにヴァンカレム岬を自然保護区域に指定するよう政府に要請しました。
私は村の仲間たちを誇りに思っています。チュクチの人々は何世紀もの間ここに暮らしてきました。今、私たちの子どもが、この土地の美しさを誇れるように努力しなければなりません。

WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2007年3月23日
Climate Witness: Vladilen Ivanovich Kavry, Russian Federation

カヴリさんとそりイヌたち
(C)WWF-Russia

ホッキョクグマ
(C)Michel TERRETTAZ/WWF-Canon

ホッキョクグマ・パトロールに出たカヴリさん
(C)WWF-Russia/Viktor Nikiforov

科学的根拠

北極圏の平均的温度は、過去100年間に地球の平均上昇率のほぼ2倍の率で上昇しました。1978年以降の衛星データによると年間平均で北極海の氷の範囲は10年ごとに2.7%縮小し、とくに夏期はさらにひどく、10年ごとに7.4%縮小しています。北極では永久凍土層の表面温度は1980年代以降全般的に上昇しています(最大3度)。
季節によって凍る土地の範囲は1900年以降北半球で約7%減少しました。春期の減少は最大15%です(政策立案者用のIPCC2007 WG1サマリーより)。北極圏で予測される主な生物物理学的影響は、氷河と氷床の厚さと面積の減少、渡り鳥、哺乳類およびその捕食動物を含む多くの生物体への有害な影響を伴う自然生態系の変化です。北極ではその他に海氷と永久凍土の減少、増加する沿岸の浸食、そして永久凍土の季節的融解の深さの増大などがみられます。
北極の人間社会にとって、特に、変化する氷と雪の状態によってもたらされる影響は混ざり合っているものと予想されます。有害な影響としては生活基盤及び伝統的に土着した生活方法に対する影響があります。その他、自然および人間環境に対する地域の気候変動の影響は、適応と気候に関連しない要素のためにその多くは見分けにくくなってはいるものの、次第に明らかになってきています。温度上昇の影響は、狩猟や雪上・氷上の移動など、北極での人間の活動において目撃されています(政策立案者用のIPCC2007 WG2サマリーより)。

全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。

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