目撃者の証言:村の気候が変わってゆく


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アフリカ(ケニア):ジュマ・ンジュング・マチャリアさん

ケニア独立戦争の闘士だった、ジュマ・ンジュング・マチャリアさん。今は、家族とともに、キナンゴプ山のふもとにあるムルンガル村で静かに暮らしています。ジュマさんは40年以上にわたるこの村の暮らしの中で、地域の気候と、地元で育つ植物の変化を目撃してきました。社会にまで及び始めたその影響に、不安を覚えているといいます。

ケニアの高地からの証言

私の名前はジュマ・ンジュング・マチャリアといいます。81歳になります。ケニアの首都ナイロビから北北西へ100キロほど離れた、キナンゴプ地域にあるムルンガル村に住んでいます。1963年に国が独立を果たして以来、ここで暮らしてきました。妻と9人の子どもがいます。

ジュマ・ンジュング・マチャリアさん
(C) WWF

独立後のケニアを襲った変化

私は独立戦争の頃からずっと、畑を耕し、薬草を使った医療に携わってきました。今も自分が庭で育てた薬草で、地域の人たちを治療しています。畑では小麦、トウモロコシ、豆類、サツマイモ、ジャガイモを栽培しています。ミルクや食用のための牛や羊も数頭飼っています。

かつて私は、ケニア独立のために戦ったマウマウ団の隊長でした。そして、1963年にケニアが独立宣言をして以来、地域の植物の様子が大きく変化するのを見てきました。変化の原因は、地域の森で樹木を伐採が伐採してしまったことや、湿度の高い土地を乾燥化させるため、地域の人たちがユーカリの木を植えてしまったことなどです。

同時に私は、ここ数十年の間に起きた、天候の著しい変化も目撃してきました。キナンゴプ地域の雨期は、私が若かった頃は4月中旬に始まり、6月には終わっていましたが、現在はその6月に雨期が始まるようになりました。
降雨パターンは予想が出来なくなり、雨量も当てにならないため、農作業の計画を立てることが難しくなっています。

薬草を使って地域の人たちの病気を癒してきたジュマさん。自然の力に大きく頼った、このような伝統的な医療は、地域社会で今も重要な役割を担っている。(C)WWF

肺炎にかかる子どもたち

気温も変化しています。日中の気温は高くなっていると感じる一方で、寒い夜の日数も増えており、しかもそれが特定の月の内にとどまることなく、やってきます。過去には、6月と9月に霜が降りたことがあり、このためトウモロコシがだめになって、栽培することがほとんど出来ませんでした。しかし今は、以前ほど霜の影響もなく、十分に雨が降るようになったので、トウモロコシを育てることができるようになっています。

寒さの種類も変化しました。以前、7月は寒くて霧の多い月だったことをはっきりと憶えています。というのも、1960年代に私が薬草を使った医療に携わり始めた頃には、肺炎にかかった患者を診ることはほとんどなかったからです。ところが最近は、寒くて乾燥しているため、肺炎を患う子どもの数が増えてきたことから、変化に気づきました。

これらの気候の変化は、私の住む地域の社会が直面している他の問題を、より深刻なものにしているため、憂慮せずにはいられません。

この変化は化石燃料の燃焼や、森林伐採によるものだと、私は理解しています。私は各国政府が地球温暖化を防止する国際枠組みに合意すること、またケニア政府が森林伐採をやめ、過去数十年間に伐採された森林を再生することで、温暖化の防止にも一役買うことを期待しています。

今も続く森林伐採。キナンゴプに隣接するマウ地域にて。ケニアでは年間、5000ヘクタールにおよぶ森林が失われているという。(C)Yoshi SHIMIZU/WWF-Canon

WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2006年11月16日
Climate Witness: Captain Juma, Kenya

科学的根拠

気候を分析した結果、ケニアの気温は全体として1.3度上昇しています。降水量も全体的に増加していますが、それ以上の予想不可能な雨量の増加(20%以上の増加)は将来的に農業をさらに困難にすると予測されています。

全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。

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