太平洋クロマグロの深刻な資源枯渇が明らかに


2014年4月、北太平洋のクロマグロ(本まぐろ)の資源量が、危機的な状況にある、という最新の報告が発表されました。これは、中西部太平洋のマグロ資源を管理する国際機関(WCPFC)に科学的情報を提供している北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)が発表したもので、資源量、回復の水準いずれも、歴史的な低水準となっています。最大の消費国である日本を含む各漁業国は、クロマグロの資源回復につながる漁業管理を、早急に実施することが求められています。

危機にさらされる太平洋のクロマグロ

日本がその90%を消費している、クロマグロ。

今回の新たな資源評価の結果によれば、その重要な生息海域の一つである太平洋北部において、クロマグロが深刻な資源危機にさらされていることが明らかにされました。

「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」に科学的情報を提供している「北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)」が、2014年4月に発表したその報告によれば、太平洋クロマグロの資源量は、過去に例を見ないレベルで枯渇状態が続いています。

産卵可能な親魚の資源量は、漁業が開始される以前と比べ、6%未満までに低下。これから漁獲対象となる幼魚についても、同様に低水準と評価されています。

この危機は、2005年以降、クロマグロの未成魚を対象とする「巻き網漁」が活発化して以降、急激に高まってきました。


これらの未成魚は、メジ、ヨコワといった、マグロとは異なった名称でも流通しているマグロで、市場に安価なマグロを供給する要因の一つとなっていたものです。

WCPFCでは、2010年に巻き網漁による漁獲を2002~2004年のレベルまで、縮小することを採択しましたが、その後も漁獲圧は増加。

日本の水産庁も、WCPFCの科学委員会の報告を受け、いち早く、クロマグロ未成魚の漁獲量を、国内で50%削減する方針を打ち出しました。

しかし、親魚のみならず、幼魚までも高い漁獲圧を受け続けてきた太平洋のクロマグロは、現状での資源回復が極めて難しい状況に追い込まれています。

資源の回復と、持続可能な漁業は実現できるか?

クロマグロについては、過去に地中海を含めた東部大西洋においても、深刻な資源枯渇が生じたことがありました。

しかし、今回明らかになった太平洋のクロマグロの資源状態は、この時の大西洋クロマグロよりも悪い状態にあります。

すでに、一部の海外企業が、クロマグロを絶滅の恐れのある野生生物の一種と見なし、取り扱いを控え始めています。

今後も資源状況の悪化が続く場合には、日本の企業においても、同様の措置を自主的に採る、または求められる可能性もあるでしょう。

何より日本は、世界のクロマグロの90%を消費している消費大国。その国の漁業者、企業、消費者が、この状況の中でどのように行動を起こすのか。その影響力は国際的にも大きく、世界各国が注目しています。

今回のISCによる結論は、北部太平洋でクロマグロの漁獲に携わっている国々が、今後10年間にわたり厳しい管理措置を導入しなければ、この海域でのクロマグロ漁業が崩壊する可能性が高いことを示しています。

WWFは、2014年9月に開催される、WCPFC北小委員会の会合において、北太平洋の海洋生態系を保全し、クロマグロの資源保護を実現するため、中長期的管理措置の採択を求めています。

また、日本の流通関係者や消費者に対しても、持続可能なクロマグロの資源利用を呼びかけ、その実現を求めてゆきます。

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