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持続可能なパーム油広がりを目指して RSPO総会参加報告

2016年11月、タイのバンコクでRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)第14回年次総会が開催されました。パーム油の生産に伴う森林破壊・労働人権問題が常態化してから、すでに数十年が経過しています。今最も必要とされていることは、問題の深刻さを踏まえ、パーム油の生産、流通、消費におけるすべての関係者が、それぞれにできる行動を一刻も早く始めることです。バンコクでの総会の報告をお届けします。

広がるRSPOの認証油

パーム油は世界で一番消費されている植物油です。世界のパーム油生産の85%近くを占めるインドネシアやマレーシアでは、パーム油のためのアブラヤシの農園(プランテーション)開発による熱帯林伐採や、農園での人権問題などが問題視されています。こうした生産地での環境面や社会面の課題に対処する為、2004年にRSPOは認証制度を設立しました。

この認証制度は、独立した第三者の立場から、環境や社会に配慮して行なわれているパーム油の生産を認証するもので、現在国際的な基準としても広く知られています。

アブラヤシのプランテーションに転用するために違法伐採された
インドネシア・スマトラ島の自然森

また、認証を受けたパーム油を使って作られた製品には、独自のロゴマークが付され、消費者にも環境配慮型の商品であることが、一目で判るようになっているのが特徴です。

WWFは、熱帯の自然環境を、乱開発から守る手段の一つとして、このRSPO認証の利用と拡大を目指してきました。現在、アジアをはじめ、中南米やアフリカなどの生産の現場では、こうした認証を受けた持続可能なパーム油の生産が広がっています。さらに、パーム油の消費地であるヨーロッパでも、オランダを代表とする6つの国々が新たな声明を発表。2020年までに主要なヨーロッパ諸国内で使用するパーム油を100%認証油に切り替えることを目指した公約を掲げました。またイギリスでも、2014年の時点で使用されているパーム油の72~93%が認証油に切り替わったと報告されています。

アブラヤシの実。
パーム油はこの実から採れる油です

日本では2016年9月に、この認証制度の普及を目的としたRSPOジャパン・デー2016が開催され、400名を超える関係者が参加。持続可能なパーム油の調達を考える場が持たれました。2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会開催を見据えて、パーム油を含めた持続可能な原材料調達の必要性は、高まってきています。

開催されたRSPOの年次総会

パネルディスカッションの様子。

パーム油をめぐる情勢が、国際的にも変化してゆく中で、2016年11月にタイで開催されたRSPO第14回年次総会には、生産に携わる大企業から、製油業者、貿易商社、メーカー、小売業者やNGOなど、世界中からおよそ800人を超えるさまざまな立場の関係者が集いました。

この総会は、生産者だけでは解決できないパーム油が抱える複雑な問題を、関係者全員で解決することを目指す場として設けられているものです。

今回のRSPO年次総会では、日本語の同時通訳ブースが初めて設け
られました。今後も更なる日本企業からの参加が期待されています 。

総会では、各国の現状や課題、また新しい調査結果やRSPO認証を広げていくための新しい試みの導入などが発表され、専門家によるパネルディスカッションも行なわれます。

また、認証というシステムをベストな状態で運用していくために必要とされる定期的な見直しや、理事の選任も、この総会の場で行なわれ、参加者で議論した後、表決を行ないます。

今回の総会でも、パーム農園で働く労働者の労働環境、男女差別の問題、農園で従事する移民やその労働状況など、パーム油生産地域内で起きている、社会的な問題が多く話題にあがりました。

小規模農家をめぐる問題

一面に広がるアブラヤシの大規模プランテーション

特に大きく取り上げられたのは、小規模農家と呼ばれる人々をめぐる問題です。

アブラヤシ農園には、企業が所有する大規模なプランテーションの他に、家族経営の小規模な農園があります。現在、世界中で消費されるパーム油の約40%の生産を担うのがこの小規模農家の人々と言われています。

しかし、こうした小規模な農園を運営している人々は多くの場合、資金や専門知識の不足、またインフラ設備の不足などから、持続可能なパーム油の生産に取り組むのが困難な状況になっています。

さらに、栽培方法における課題や、児童労働などの人権問題が生じているケースも認められています。

アブラヤシ農園には、家族経営の小規模な農園も多い。

このような状況の中、小規模農家を支援する取り組みも始まっています。
日本では、不二製油株式会社がマレーシア・ボルネオ島の小規模農家への支援に参画。
小規模農家に栽培方法や廃棄物処理などのノウハウを提供することで、RSPOの認証が取得できる農地の拡大や、生産性の向上を目指しています。

300万人にも及ぶとされる小規模農家が、実際にこうした「持続可能なパーム油」の生産に取り組むためには、企業をはじめとした関係者による理解と、具体的な支援・協力が必要とされています。

この他、今回の総会では次のような内容が報告、決議されました。

新しいシステムの導入

トレーサビリティーのためのPalm Trace

パーム油は様々な用途に使用され、生産から消費までの間には、精製や加工も含む中間事業者がいくつも存在します。従来この複雑なサプライチェーンの管理は、困難な課題の一つでした。このサプライチェーン上でのトレーサビリティー(追跡可能性)を強化させるため、RSPOでは、Palm Traceという新しいオンライシステムの導入を発表しました。このシステムにより、生産された認証油は、農園まで追跡可能になることを期待しています。

消費者向けのモバイルアプリ

「RSPOの認証ラベルがついた製品がどこで購入できるのか知りたい」という消費者の声から、無料の参加型アプリが開発されたことが発表されました。アプリを使うと、認証製品を扱う店舗を地図上で検索、登録することもできます。食品や日用品を含むさまざまな製品にパーム油が使用されていることは、日本の消費者には、ほとんど知らされていないのが現状です。日本中で誰もが日常的に使用するパーム油製品だからこそ、認証製品への理解、また企業に対して認証製品を求める声をあげることが求められています。

RSPO総会において採択された3つの決議

規約違反会員の報告文書公開

RSPOの認証を受けるにあたり、原生林や、保護価値の高い土地での農園開発は一切禁止されています。この規約に反した生産者は、開発した土地への補償プロジェクトの実施が義務付けられています。今回、このプロジェクトの活動状況についての全てのデータが開示されることが議決されました。データは毎年更新され年次報告書として編綴されます。これにより、土地に対する補償プロジェクトが実際どのようなプロセスで実行されていくか第三者からも明確になり、認証システムの透明性にも寄与します。

告発人を擁護するガイドライン策定

アブラヤシ農園の開発が急速に拡大しているアフリカや南米の国々では、人権擁護を目的とした告発に対する暴力や殺害の脅迫が増えているという報告があります。この状況を改善する為、RSPOで誰もが安全かつ確実に匿名で告発できるシステムを構築することが決定しました。こうした人々の権利を擁護するための会員向けガイドラインも策定されます。

新たに農地を開拓する際の手順の改訂

企業が所有するプランテーションと、小規模農家が経営する農園では状況が異なるため、RSPOでは既存のシステムを1つずつ小規模農家にも適用させています。今回は新たに農地を開拓する際のガイダンスを、小規模農家向けに再検討されることが決定しました。改定はRSPOの原則と基準を損なわずに実施される予定です。また改定後も小規模農家に対する詳しい手順の解説や、トレーニングが実施されることが望まれています。

持続可能なパーム油で森林保全を

認証品の展示ブースでは、
WWFジャパンもパンダショップで発売中の石けん
を展示しました。

パーム油のための農園開発による熱帯林破壊も、労働環境における人権問題も、いずれも長く続いている問題ですが、残された貴重な自然が年々少なくなってゆく中、その影響は深刻化の一途をたどっています。

しかし、すべての農園事業者が、こうした問題を引き起こしているわけではありません。コストや手間を引き受けながら、環境や未来を考えて、持続可能な生産に取り組んでいる人々がいます。

お買いものの際はこのマークを探してみてくださいね。

「遠い国で起きている問題だ」という意識を越えて、パーム油の購買、融資、利用、そのすべてに関わる人々が、問題解決の為に協力することが求められています。すべての問題に取り組むには時間がかかりますが、日本からも責任のある企業と消費者の行動があれば、必ず解決につながるはずです。

WWFジャパンでは、これからも、野生生物と森林の保全に取り組むとともに、日本の企業や消費者に対して、持続可能な方法で生産されたパーム油の利用を働きかけていきます。

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