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WWFの活動

活動トピック

自然エネルギー接続保留に関する定量的分析に基づく結果と提言

声明 2014年11月11日

自然エネルギーにブレーキをかけているのは物理的な制約ではない

九州電力をはじめとする電力会社5社が自然エネルギー(再生可能エネルギー)による発電設備の接続申し込みを保留している件で、現在経済産業省の新エネルギー小委員会の下の系統ワーキンググループ(以下、系統WG)において、それぞれの電力会社が、接続可能量の検証に取り組んでいる。

このたびWWFジャパンは、2013年に発表した『脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案 電力系統編』(資料1)を元に、今回あらたに、九州電力管内に、1260万kWの自然エネルギー(太陽光1180万kW、風力80万kW)が導入された場合の系統システムの定量的分析を、システム技術研究所に研究委託した。これは系統WGにおいて電力会社が現在採用している検討方式よりもさらに踏み込んで、2013年度の実際の電力需要と、九州電力管内の気象データに基づく365日1時間ごとの太陽光、風力の発電電力量を8760時間にわたってシミュレーションした。実際に1260万kW導入された場合に、どの時間帯に、どの程度の容量(キロワット)が余剰となるのかをシミュレーションし、既存の系統システムで導入可能なのかどうかを検証した。

その結果、既存の九州・中国間の地域間連系線の運用容量(259万kW)が使える前提ならば、自然エネルギーの出力抑制はほとんど必要ないことがわかった。つまり、今回の系統WG下での検討によって自然エネルギーの接続可能量の設定がなされるならば、それは物理的な制約の問題というよりも、本来活用できるはずの既存設備(送電線や蓄電システムとしての揚水発電)が何らかの理由で妨げられているなどの、社会的な制約が問題であることを示唆している。

詳しいシミュレーション結果は、『WWFジャパンエネルギーシナリオ:検証:自然エネルギー接続保留に関する定量的分析』報告書をご参照願いたいが、ここでは、その検証結果と、WWFからの提言を記し、現在行われている議論への示唆としたい。

WWF検証シミュレーションでわかったこと

九州電力に、1260万kWの自然エネルギー(太陽光1180万kW、風力80万kW)が導入されると、九州電力における年間の全電力量に占める太陽光と風力の発電電力量は、17.3%となり、水力などのその他の自然エネルギーと合わせると23%となる(2013年実績での年間発電量に対するシミュレートされた自然エネルギー電力割合)。

既存の蓄電システムである揚水発電を自然エネルギーのために活用する前提とし、太陽光・風力以外の電源に保守的な想定を置いたうえで、九州・中国間の地域間連系線の利用有無や原子力の再稼働についてケースを分けて試算した。その結果、以下のことが分かった。

  • 九州・中国間の地域間連系線を使わない前提でも、余剰が発生するのは、全発電電力量の3.24%以下にすぎない。
  • 九州・中国間の地域間連系線を利用できるならば、自然エネルギーの余剰が発生する日数(抑制日数および時間数)はゼロか、現状の補償なしの30日以内に収まること。
  • 自然エネルギーの発電量の抑制日数(時間数)と抑制量は、原発の有無で大きく変わること (今回のWWF検証では、川内原発がある場合とない場合を想定)。
  • 原発なしの場合には、抑制日数は、25日(88 時間)、地域間連系線の運用容量259万kWが利用できるならば、抑制日数1日(1時間)のみとなる。熱容量の限度まで(556万kW)使えるならば、余剰が発生するのはゼロとなる。
  • 原発ありの場合には、抑制日数は、94日(369 時間)、地域間連系線の運用容量259万kWを利用できるならば、抑制日数16日(46時間)となって、現状の補償なしで抑制できる30日以内となる。熱容量の限度まで(556万kW)使えるならば、原発ありでも余剰が発生するのはゼロとなる。
  • いずれ、接続検討分の680万kWを加えた1940万kW(太陽光1840万kW、風力100万kW)がすべて導入されたとしても、熱容量の限度の連系線が使えるならば、抑制日数は、原発ありの場合で29日(90時間)、原発なしの場合で10日(26時間)となる。既存の連系線が日常的に活用されるならば、この規模の自然エネルギーが利用できることが確かめられたと言えるのではないか。
  • 余剰が発生する期間は、いずれも主に4月、5月、9月、10月の電力需要が小さいときであり、特にゴールデンウィークに集中している。電力が余るときの予見性が高いため、対策が立てやすい。発電設備の近辺に、時間に縛られない電力需要の産業を興すことなどが考えられる。

WWF検証シミュレーションと、系統WGにおける電力会社による検証方法の違い

系統WGにおいて、電力会社が今回の接続可能量の算定について行う手法は、構造的に余剰の発生が大きくなることに注意が必要である。

現在九州電力をはじめとする5電力会社によって行われている検証では、需要は2013年度の実電力需要を使う点ではWWFと同じだが、自然エネルギーの出力量は、各月ごとの24時間ごとに、最も発電出力量が大きい値に近い値(上から5%の値)を採用して、電力需要と突き合わせることになっている。これはいわば受験において偏差値70以上の優等生がいつでもクラスを代表するようなもので、月ごとに最も自然エネルギーの出力がピークに近い値が、毎日発生すると仮定していることになる。雨や曇りの日は修正するという案もあるが、基本的には構造的に余剰の発生時間が大きくなる分析手法となっていることに注意が必要である。

WWFの手法は、九州にある104地点の拡張アメダス気象データ(1990~2000年の20年間の代表的な気象を再現したデータ)による発電電力量を、1時間ごとに365日計算し、2013年度の電力需要と合わせてシミュレーションしているため、より実際に近い結果を示していると言えよう。

WWF検証シミュレーションを踏まえたWWFからの提言

現状の地域間連系線を広域で活用する運用に速やかに移行すること

予測できる変動電源である自然エネルギーの変動は、広域で運用されるほど、変動を吸収することがより容易になる。特に電力需要の大きい系統であるほど、変動吸収が容易であるため、今回のような小さな系統である九州地域だけで変動する自然エネルギーを吸収することを考えるのではなく、隣接する系統と一体で考えることが重要である。

日本には、地域間を結ぶ連系線の容量は決して欧州に比べても見劣りしない規模をすでに備えている。その地域間連系線を異なる一般電気事業者間では、非常時以外には使わないというこれまでの前提が、自然エネルギーの変動を吸収できない体制を作っている。

電力システム改革の一環で、広域で運用することを進める広域運用機関が2016年から運用されることになっているが、自然エネルギーの変動吸収を広域で日常的に行う体制に移れば、既存のインフラの活用で、もっと自然エネルギーの導入は進む。すみやかに現状の地域間連系を広域で平常時から運用する体制へ移行していくべきである。

特に西日本には大規模電力需要地である関西エリアがあり、東日本には東京エリアがあるため、西日本一帯、東日本一帯で運用することによって、自然エネルギーの大幅導入を果たすことができることを、WWFエネルギーシナリオ電力系統編(資料1)は示している。

揚水発電を自然エネルギーのために使用すること

これまで揚水発電は、事実上、原子力発電の蓄電システムとして機能してきた。この揚水発電という既存のインフラを、自然エネルギーのために使用することを前提にして、運用を検討する必要がある。

気象予測を使用した出力予測システムの実用化をすみやかに進めること

今や自然エネルギー先進国では、気象予測を用いた出力予測システムを活用することで、変動する需給バランスを保つことが当たり前に行なわれている。翌日の変動電源の出力分を予測することで、それを除いた残余需要分だけ、前日に化石燃料由来の電源を準備すればよいことになる。

日本ではまだ開発段階であっても、導入した国においてはほんの数年で実用化し、さらに予測の精度を上げている。たとえばスペインでは2006年に導入された気象予測の出力予測システムが、2010年にはその予測の精度を急速に上げている(資料2)。日本においても早急に気象予測を使った出力予測システムを中心にした系統運用を行っていけば、自然エネルギー電源の急速な普及を支えることができる。

この出力予測システムの活用によって、系統の安定度を高めるだけではなく、予備のための化石燃料電源の必要容量を下げることによって経済性も高めていくことができる。今回のWWF検証シミュレーションでは、保守的な前提とするために、火力発電を電力需要の2割とおいたが、気象予測を使った出力予測システムを活用すれば、さらに火力発電所の必要容量を低く抑えることができるはずである。

リアルタイムの出力量の把握や出力抑制指令があったときにすぐに実行できる伝達システムの構築

変動する電源である自然エネルギーを大幅に系統に給電していくにあたって、いざとなれば出力抑制ができるという機能があることは重要である。スペインでは、10MW以上のすべての自然エネルギー電源は、中央給電指令所から直接制御できる設備を備えなければならないと決められている。

中央給電指令所から、出力抑制指令があればすぐに実施できる体制があれば、日本においても自然エネルギーを大量に導入していく系統システムへ移行しやすくなる。今後の自然エネルギー電源の設置に、これらの伝達システムを整備することを義務化するなど、自然エネルギーを主要電源とする環境を整えていくことが重要である。

自然エネルギーに特化した制御センターを中央給電指令所に設置して運用すること

上記に述べたような気象予測を使った出力予測システムや直接制御の機能を持つ自然エネルギー専門の中央制御センターがあれば、リアルタイムで自然エネルギーの制御が可能となる。スペインのREE(系統運用会社)においては、日本と同じ孤島のような条件下で、発電量に占める自然エネルギー割合30%を実現しているが、そのカギが、中央給電指令所に自然エネルギーに特化した制御センターである。

日本においても、広域運用機関の中央給電指令所には、このような自然エネルギーに特化した制御センターを設置してくことが望まれる。

余剰電力の発生を最初から見込んで、積極的に余剰電力の活用を考えていくこと。特に余剰電力による水素製造は、運輸用や産業用の燃料需要を自然エネルギーで満たすために重要である

余剰電力の発生は、変動する電源である自然エネルギーを大量に導入した中で、その発電容量を需要電力容量に合わせていく方法として、むしろ必然である。余剰電力の発生を所与のものとして見込み、余剰電力の使い道を考えていくことが、安全な国産エネルギーである自然エネルギー中心のエネルギー供給社会に必要なのである。

WWFシナリオでは、余剰電力によって燃料電池車や産業用の用途として、水素を製造することを想定している(資料1)。水素は、化石燃料に頼った輸送用の燃料を代替していくためにも、化石燃料から製造するのではなく、自然エネルギー由来で製造することが求められている。さらに水素は、季節変動のある自然エネルギーを、季節を越えて利用するためにも必要となる。余剰電力の発生は、むしろ自然エネルギーの活用の可能性を広げるために必要な事であると言える。

おしまいに

今回の接続保留問題に代表されるような「変動する自然エネルギーをいかにして無駄なく、需給のバランスの中で活用するか」という問題は、固定価格買取制度を導入して自然エネルギーの大幅導入を果たしてきた国々では多かれ少なかれ経験済みのことである。否定的にとらえることではなく、むしろ制度のよりよい改善をはかっていくために必要な過程であると言えよう。

今回の接続保留問題においても顕わになったとおり、日本では、「自然エネルギーをフルに活用するための系統運用」という発想が十分ではない。系統運用に関する根本的な発想の転換が必要である。

固定価格買取制度の導入で、自然エネルギーの導入が進んだとはいえ、いまだ日本においては、大規模水力を除いた自然エネルギーの割合は、2.2%に過ぎない。日本においても自然エネルギーの運用データが蓄積されてくれば、様々な手法が適用できるはずであり、その際には、自然エネルギー先進国の成功や失敗例から学んだ知見を活かしていくこともできる。いたずらに接続可能量などを設定するのではなく、自然エネルギーの導入に合わせて、運用しながら学んでいくという姿勢が大切ではないか。"否定"から入るのではなく、"いかにして可能に"していくか、という姿勢が、今最も求められている。

関連資料

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資料2:

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