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石垣島・白保サンゴ礁での調査概要と結果まとめ

WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」では、世界的に貴重なサンゴ礁が残る、沖縄県石垣島の白保でサンゴ礁の保全に取り組んでいます。この「しらほサンゴ村」では今回、地域の方々や、研究者、ボランティアの皆さんの協力のもと、2000年から取り組んできた、さまざまな調査の結果をまとめ、サンゴ礁環境の現状を明らかにしました。こうした調査データは、サンゴ礁の保全の基礎となるものです。

サンゴの海と「白保」の暮らし

「しらほサンゴ村」は、2000年4月、石垣島白保のサンゴ礁を保全するために、多くの方々の寄付、募金等を得て、WWFジャパンが設立した施設です。

現在、サンゴ礁文化と呼ばれる島の生活文化の継承、暮らし向きの向上とあわせて、サンゴ礁を保全する「持続可能な地域づくり」を進めています。

この白保は、東京から約2000km、那覇から400km離れた八重山諸島の石垣島の東海岸に位置し、そのサンゴ礁は、アオサンゴをはじめとする120種以上のサンゴのサンゴや300種以上の色とりどりの魚が棲む、生物の楽園といえる場所です。

とりわけ、1987年にIUCN(国際自然保護連合)が行なった調査により、ここに生息するアオサンゴ群落は、北半球で最大級とされ、学術的にみて貴重な海であることがわかりました。

また、白保は古くからの農村ですが、目の前に広がるサンゴ礁の海とも、関わりの深い暮らしを営んできた場所でもあります。

昔から人々は農作業の合間に、潮の引いた海岸に下り、海の恵みを得てきました。また、屋敷の周囲にはサンゴで石垣を築くなど、美しい街並みを形成しています。

豊かな農地もサンゴの風化した土壌に支えられ、農業に関わる神事や祭事の中にも、海とのつながりが見られます。まさに『サンゴ礁文化』といえる海と人との関係が白保にはあります。

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脅かされるサンゴ礁と11年におよぶ調査

しかし、沖縄がアメリカから日本に返還された後、大規模な開発による赤土の流出や、オニヒトデの大発生により、沖縄のサンゴ礁は大打撃を受けました。

さらに、98年には、地球温暖化の影響とも考えられる海水温の上昇により、世界的にサンゴの大規模な「白化現象」が発生。白保でもその被害が大きく顕れました。この時の白化をはじめ、以前はなかったとされる異常な高水温などもこの十数年で、頻繁に確認されるようになっています。

かつて、「魚湧く海」と呼ばれたほど、たくさんの生きもので満ちていた白保のサンゴ礁も、今日ではその様相を変えつつあります。

劣化するサンゴ礁環境の原因究明と保全対策を実現するため、「しらほサンゴ村」では、2000年以降、多岐にわたる調査を行なってきました。また、地元の人も海の様子を知り、その保全への理解を共に深めていただくため、市民参加型調査の実施に取り組んできました。

これまでに行なってきた主な調査は、下の6つになります。

No.1 赤土堆積調査
海へと流れた赤土は、沖縄のサンゴ礁にとっては大きな問題。赤土は、海水の透明度の低下を引き起こし、さらにはサンゴを白化させたり、壊死させることがあります。この調査では年4回、季節ごとに、32ポイント(調査地点)(2004年からは27ポイント)の白保の海の底質を採取。降水量や風向も参考にしながら、状況を分析しました。白保サンゴ礁での赤土堆積は深刻な状態で、サンゴ礁が健全だと言えるギリギリか、それを越える状況が続いています。

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No.2 ウミガメ上陸・産卵調査
白保の海岸ではアカウミガメ、アオウミガメ、タイマイの3種のウミガメが上陸・産卵します。特に、石垣島の中では珍しくアカウミガメの産卵が多い場所です。この調査は、4月から9月にかけて、白保の集落から北部のカラ岳周辺の浜を調査し、上陸・産卵跡を探しました。浜は礫(れき:粗いサンゴ石)が多く、産卵にむいた場所が少なく、さらに浜への自動車の乗り入れや、新石垣空港の騒音・ライトの影響が懸念されます。

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No.3 サンゴ定点調査
白保サンゴ礁内の環境の異なった4つの地点に、5~8個の1m四方の永久方形区を設け、1~数ヶ月毎に写真撮影をしました。サンゴの被度(海底をサンゴが覆っている割合)を測定し、大きな変化が見られた場合、環境負荷とサンゴ類の減少要因を推定しました。ほとんどの方形区でサンゴが減少していますが、特に台風前後では、変化が大きく、2006年以前に限って言えば台風の波浪による破砕や埋没が最も見られました。また、2007年の白化や病気が、人的被害などもサンゴが減少した要因の一つであることが分かりました。

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No.4 水温調査
定点観測と同じ4地点で機械を設置し、水温を測定しました。水温はサンゴの白化に密接に関係するので、重要なデータとなります。毎年夏には高水温を記録しますが、特に2007年の夏は記録的な高水温となり、八重山地方では大規模なサンゴの白化現象が起こりました。また他の季節には、低温白化の原因となる低水温も記録しています。

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No.5 生物多様性調査
赤土問題などの環境負荷の増加によるサンゴ礁生態系への悪影響を調べるために、礁池内の環境の異なる4地点に2本ずつ50m測線を引き、赤土の堆積量と礁池内のサンゴ被度の関係性、底質、底生生物や魚類の調査を年1~2回行ないました。全ての測線でサンゴの減少が確認され、礁池中央よりサンゴ被度の高い礁嶺付近の測線の減少率が高くなりました。減少の要因は、2004年、2005年に多数襲来した台風の波浪によるものと2007年の大規模白化と考えられます。

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No.6 サンゴ群落地図調査
アオサンゴ群落の詳しい分布状況、観光利用の盛んなエリアでサンゴの地図作りを行ないました。航空写真をもとに、サンゴの種類や被覆密度(一定の広さの海底に、どのくらいの生きたサンゴが見られるか)を書き込んでいきました。この調査により、以前よりも正確なアオサンゴの分布がわかりました。2011年のアオサンゴ群落域での再調査ではサンゴ全体の被度が減少しているものの、アオサンゴの被度は変わっていないことが分かっています。

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これまでの結果から分かったこと

「しらほサンゴ村」の開設以来、11年にわたる環境モニタリングの結果、白保のサンゴ礁海域では、サンゴ群集の健全性が大きく損なわれていることが明らかになりました。

サンゴが劣化する主な原因は、大型台風や大規模白化などによるサンゴの破壊・死亡と考えられます。この背景には赤土、栄養塩などの陸域からの物質が川を通じて多量に海に流入し、サンゴ礁にストレスを与え続けていることによって、健全に生育できない状況があります。

サンゴに悪影響を与える環境負荷のほぼすべては、人間の活動によるものであり、地域での取り組みから、地球温暖化への対策まで、広くさまざまなレベルでの活動を継続していく必要があります。

白保地域での活動については、市民による団体「白保魚湧く海保全協議会」が、サンゴ礁を地域みんなの財産と位置づけ、その保全に取り組んでいます。
ウミンチュ(海人:漁業者)を中心としたこの団体のメンバーは、赤土調査やサンゴ群落調査にも参加してきたほか、地元の小学生と一緒に畑の周りへ月桃(ゲットウ)という在来植物を植え、畑からの赤土の流出を防ぐ「グリーンベルト大作戦」等を行なっています。

また、「しらほサンゴ村」で定期的に開催している物産展「白保日曜市」の主催メンバーが、このグリーンベルトで植えられた月桃の葉や茎から、フレグランススプレーを作るなど、地域の方々による地域活性化とサンゴ礁保全の取り組みが大きく育ってきました。

海についてのさまざまな調査活動についても、今後は、地域が主体となった体制に移行されようとしています。
「しらほサンゴ村」でも2012年以降、調査を主導する立場から支援する立場に回り、今までの調査データや経験を活かしながら、地元の方々と共に、サンゴ礁の保全活動を続けていく予定です。

「しらほサンゴ村」は、地域の活性化を通じたサンゴ礁を実現し、世界のサンゴ礁でも通用するような海の保全活動のモデルづくりを目指し、これからも活動してゆきます。

白保サンゴ礁11年間の主な出来事

1998:白保を含め、世界的にサンゴの白化現象を確認
2000 調査の結果、1998年の白化からの回復は健全と言えず
2001 轟(とどろき)川河口周辺でハマサンゴ大量死
2002 轟川河口周辺で赤土による大規模なサンゴ白化と死亡を確認
2000~03 赤土堆積状況「生態系を健全に保てるかどうかの瀬戸際」
2003 アオウミガメおよびアカウミガメが多数上陸、産卵
2004 台風の影響でアオサンゴ群落の一部が埋没
2005 轟川河口で赤土によるサンゴ白化を確認
2006 轟川河口北部で赤土による白化を確認
2007 高水温による大規模な白化現象を確認
サンゴ礁観光利用区域ではサンゴ破損の被害が10回以上と多いことが確認
2008 轟川河口で赤土による大規模な白化と死亡を確認
アカウミガメは多数上陸、産卵
2009 轟川、サンゴ礁域から残留除草剤を検出
2010 タイマイの上陸・産卵を確認
2011

アオサンゴ群落周辺では、5年前の調査と比べサンゴの種数が減っているものの、アオサンゴの被度は変わっていないことが判明

WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」 調査データ・資料の提供

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