クマとの共存を目指して


日本の山林や中山間地域を取り巻く状況は変化しています。その結果、増えてきたクマと人との衝突。クマとの軋轢(あつれき)は、私たちの社会問題でもあるのです。人間とクマの距離を適度に保ち、共生していくためにはどうすればいいのでしょうか。

「クマは森なり」

日本は国土面積のおよそ2/3が森林に覆われ、そして国土面積のおよそ半分にはクマが生息しています。

クマは日本の森林生態系を代表する動物です。日本の森にクマが生息しているということは、それだけ豊かな森が残っているといえるでしょう。

一方、日本は森に覆われた狭い国土の中に、多くの人間と多くのクマが隣り合って生きている地域だともいえます。そのような状況であるがゆえに、人間とクマとの軋轢(あつれき)が生じ、近年ではその軋轢がますます大きな問題になっています。

出没の予防方法

ツキノワグマやヒグマの人里への出没は、山中にクマの食物が不足することが直接の原因だと考えられています。そして、日本の中山間地域が抱える高齢化、過疎化、耕作放棄地などの問題もまた影響していると考えられます。クマの出没は、これらの自然的、社会的な要因が複雑に絡み合っている現象ですから、すぐに防除できるようなものではありません。
さらに、クマが(大量に)出没してからあわてて対応しても、即効性のあるものではありません。普段から出没防除の重要性を認識し、少しずつ対策を進めることが大切です。

誘引物(ゆういんぶつ)の除去

クマの生息地に隣り合った農地や集落の周辺に、クマの食物となるようなものを放置すると、クマを誘引する(引き寄せる)場合があります。クマの生息地、あるいはその周辺では、次のような誘引物の管理をしっかり行なうことが必要になります。

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ツキノワグマ

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ツキノワグマのすむ森

  • 生ゴミ
    クマが簡単にゴミを食べあさることができないようにすることが必要です。ゴミ収集所をクマが近寄りやすい場所に設置しない、ゴミ出しのルールを守ってゴミを長期間放置しない、そして必要に応じてクマ対策ゴミ箱を設置するなどの対策が考えられます。クマ対策用ゴミ箱は、専門業者が製造するクマが開けることや、破壊することができない本格的なものもありますし、家庭用物置を改良して戸を開けにくくしたもの、あるいは小型のコンテナなどでも代用できます。
  • 放置された果物
    クリやカキなどが収穫されないまま放置されてあると、それらがクマを誘引することがあります。早めの「もぎ取り」あるいは、幹の周りにトタンを巻きクマが木に登れなくするなどの対応が必要です。また実をもぎとりやすくするために、木を低く剪定(せんてい)することも効果的です。

農地・果樹園への出没防止

農地では果樹園が最も被害を受けやすいところです。果樹園以外で被害を受けやすい農作物は、飼料用トウモロコシや稲などです。ハチミツはクマを強くひきつけるため、クマの生息地の近くで養蜂を行なう場合は、クマへの防除対策が必要になります。地域によっては、自家消費用に小規模な養蜂を行なうことがありますが、例え小規模でもクマを誘引しますので対策が必要となります。クマの生息地に隣接した淡水魚の養魚場でも、ニジマスやヤマメなどとそれらの飼育用のエサが被害を受けることがあります。

  • 果実の廃棄
    商品にならない果実などをまとめて放置、放棄すると、クマを誘引する大きな原因となります。果樹園や民家の庭などで、果物をまとめて廃棄する場合、廃果はクマが近寄ることができないところまで持ち出し、適切に処理することが必要です。
  • 電気柵の設置
    電気柵の設置は有効な手段です。電気柵は、果樹園、養蜂箱や養魚場周辺などだけでなく、集落と森林の境界などクマとの遭遇の危険が高いところ、斜面林などクマの移動ルートとなるところ、などに設置することも有効です。

電気柵について

電気柵は電気を通したワイヤーに、クマが触れると電気ショックを与えるものです。このことにより、クマに「この場所は恐い」ということを学習させます。電気柵は、例え物理的にクマが乗り越えられるものであっても、一度電気ショックを経験した動物にとって「近寄りたくない」という心理的なバリアを生じさせます。

クマの足の裏は、通電性の高い肉球で接地面も大きくなっています。また嗅覚が優れたクマは、柵などを鼻で確認しようとする習性があります。そのため、クマの鼻が電気柵に触れたとき、鼻から手足にかけて高圧電流が流れることになります。

クマの学習能力を利用する電気柵は、非常に有効な手段です。そのためにはクマが「近寄りたくない」という心理的効果を持続させなければなりません。したがって、電気柵に触れたクマに電気ショックを常に与えられるよう、電気柵の電圧を一定に保ち、効果を持続させることが重要になります。

電気柵の保守管理の中心は、漏電対策になります。電気柵の回りの雑草などが伸びてワイヤーに接触すると、漏電の原因になります。定期的に電圧をチェックして、漏電を起こしているようだったら、草刈りをしなければなりません。

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テンサイ(さとうだいこん)畑の周りに
張り巡らされた電気柵

  • ※動画形式のファイルをご覧いただく場合には、Microsoft Windows MediaPlayerが必要です。

周辺環境の整備(河川敷の下刈り・刈り払い)

クマは人間と出会わないよう行動しているため、身をかくすための林や藪(やぶ)のある場所を選んで移動する傾向があります。そこで、集落に接しクマの出没ルートとなっている森林、雑草が生い茂り見通しが悪くなっている道路の路肩や道路脇の斜面(法面:のりめん)などの刈払いをおこなうことにより、クマの出没を抑制する効果が期待できます。

遭遇を防ぐために

クマによる人身被害を防ぐためには、クマとの遭遇を避けることが最も重要です。ほとんどのクマが、人間と出会わないよう用心しながら活動しています。クマは人の気配に敏感なので、クマのほうが先に人間の接近に気がついて隠れる場合が多いようです。

そこで、クマから早く気付いてもらえるよう、また、人間もクマに出会わないよう用心することが、不用意なクマとの出会いを回避することにつながります。

音を出す⇒自分の存在をアピールする

音を出すことで自分の存在を、クマに知らせる工夫をしましょう。大きな音の出る鈴やラジオをつけて歩くことは有効です。ただし、渓流沿いや強雨の日などは、周囲の音でかき消されてしまうこともあります。そのような場合や見通しの悪い場所では、ホイッスル(笛)を吹いたり、「おーい!」などと大きな声を出す、あるいは要所要所で手を叩くなどをするだけでも効果が期待できます。なお、ラジオや鈴による防御方法は、せっかくの自然の雰囲気を損ねるとして反対する意見もあります。

朝夕や天候の悪い日を避ける

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クマ注意の看板

早朝や夕方はクマの行動が比較的活発になる時間帯ですから、それだけクマに出会う確率が高くなるといえます。さらに、この頃は薄暗くなっているので、クマがいた場合でも発見が遅れてしまうことがあります。また、雨や霧、強風など天候の悪い日も、人間とクマの双方でお互いの発見が遅れ、ばったり出会う確率が高くなるといえます。

クマの出没情報や痕跡(こんせき)に注意する

クマの出没を知らせる看板のある場所や、クマのものと思われる足跡やフンなどが見つかった場所は、そこが実際にクマの行動圏内である印(しるし)です。

これらのものを見つけたらその先には行かない、引き返すなどの注意をするべきです。子グマを見つけても近づいてはいけません。近くに母グマがいる可能性が高いため、速やかにその場所を離れましょう。

シカの死体に土や枯葉がかけられていたら、近くでクマが見張っている可能性が高くなります。速やかにその場を離れ,もしその場所が登山道などあれば関係機関に連絡をして死体の撤去を要請しましょう。

なるべく一人で行動しない、周りに気を配ること

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ツキノワグマの足跡

山菜採りやきのこ狩りなどは採集に夢中になりがちです。ときどき周囲に注意し、藪の中など見通しのきかない場所には、不用意に入り込むべきではありません。また、二人以上で行動するべきです。数人で行動する場合も、各人ばらばらにならず、なるべくまとまって行動しましょう。

人間がおいしいものはクマもおいしい

食料品やごみは必ず持ち帰ること。人間の食料品またはその臭いなどに馴れさせてはいけません。生ゴミなどに触れる機会が増えることによって、クマは人里にまで生ゴミなどを探しに来るようになるからです。

生息環境の整備

ヒグマとツキノワグマは、日本の森林の「キーストーン種」あるいは「アンブレラ種」であると言われています。「アンブレラ種」とは、生息地面積要求の大きい種、つまり生息していくために大きな面積の土地を必要とする種です。したがって、その種が生息できる環境を保全すれば、おのずから多数の種が生存する環境を保全することになります。
つまり、クマが生息できる森林環境を保全することは、豊かな森林環境を保全することにほかなりません。

里山の整備

里山は、かつて薪や炭の原料となる木材を生産する森林(薪炭林:しんたんりん)として主に使われてきました。しかし1960年代のエネルギー革命、高度経済成長によって日本の経済構造が第一次産業から大きく変化し、里山を利用する人が減ると、しだいに放置されていきました。

薪炭林はコナラ、クヌギ、アカマツなどの樹木を中心とする雑木林です。コナラ、クヌギの果実=ドングリはクマの食物になります。これらの樹木が生長し高木となり、それらの高木の下にはさまざまな草木が被い茂るようになりました。

このように姿を変えた里山は、クマにとって潜在的な食物の供給地、あるいは好適な生息地となっている可能性があります。里山は人里に最も近い森林です。この里山にクマが住み着いてしまうと、人間との接触の機会が多くなり、軋轢(あつれき)を生む原因となります。 

里山に人間の手が入らなくなった現在、生長した雑木林を適切に整備し、クマが利用する頻度と身を隠す場所を減らし、人間との軋轢(あつれき)を減らすことが求められています。つまり、クマの生息域と人間の生活圏の中間に位置する里山に、「緩衝地帯」としての機能を再び持たせることが望まれているのです。

奥山(恒常的生息域)の整備

奥山とは、人里から離れ、集落や農地などがほとんどない森林、あるいは自然植生で被われた地域を指します。クマが年間を通して生息・分布する地域を「恒常的生息域」といいますが、奥山がそれに相当します。

日本では1950年代から、ブナやミズナラなどの自然林を切り払って、その跡地にスギやヒノキなどの人工林に変えていく「拡大造林政策」を国策として推し進めてきました。その結果、日本の森林の約4割は人工林となりました。

一方、1970年代に入ると国内の木材価格は下落。以来、林業の不振が続いています。人工林、特に地理的に不利な奥山の人工林は、管理することができなくなり、放置されたままになっていることが問題になっています。

このように十分に管理されていない人工林を、ブナやミズナラの広葉樹林へ近づける取り組みが、少しずつ始まっています。ブナやミズナラの広葉樹林には、クマへの食物となる植物が多く生育するので、このような取り組みが進めば、奥山がクマをはじめとする野生生物にとってより生息しやすい環境になっていくでしょう。

そのとき忘れてはならないのが、人間とクマの距離をどうやって「適度に保つ」のかということです。里山がクマと人間の生活圏を隔てる役割(緩衝地帯としての役割)を失ってしまった現在では、クマの生息地が整備されてクマの生息数が増えると、それがそのまま人間との軋轢の増大に繋がる可能性があります。

多大な労力をかけて里山を以前の状態に戻していくのか、あるいは新しく緩衝地帯として機能する方法を模索していくのか。まさしく、里山の機能が失われてしまった今こそ、考えていかなければならないことでしょう。

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中国山地のブナの大木。
その実はクマの貴重な食物になる

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どんぐり(ミズナラ)

国有林による緑の回廊

林野庁では、国有林野事業の一環として、森林生態系保護地域などの保護林を設置してきましたが、ばらばらに存在しているものが多くあります。そこで、これらの保護林の間を野生動植物が移動することがでるように、相互に繋ぎ合わせる「緑の回廊」プロジェクトを進めています。

このように「保護林ネットワーク」を作ることで、森林の機能を向上させ、より広範囲にわたって生態系を保護することができます。クマの行動域は広範囲にわたりますから、このようなプロジェクトによって、効率的にクマの生息地をつなげることができ,遺伝的な交流の確保をはじめとして、生息環境のより一層の保全が期待できます。

2012年4月現在で、全国24ヶ所の国有林が、緑の回廊として設定されています。

クマと共存すること

クマと人間の関係は、一概に説明できるものではありません。
原因やトラブルの形がさまざまである以上、共存を実現するためには、その地域に応じた取り組みや施策が必要になるからです。また、こうした現場での取り組みには、地域や国のレベルで決められる、野生鳥獣をめぐる政策の決定が、大きな影響を及ぼします。また、個人や集落などでの、クマを誘引しないための自主的な取り組みも重要です。このような取り組みは、実践できているケースもあれば、そうでないケースもあります。ただ、多くの場合に共通しているのは、人間とクマの距離を「適度に保つ」ことが重要だという点です。

人間とクマが共存するための「特効薬」はありません。そして大量出没時における大量捕獲のような対症療法的な対応ではなく、根本的な原因を特定し、それに対応した改善を図ることが必要とされています。また取り組みの成果がすぐに出てなくも簡単に諦めずに、粘り強く柔軟性を持って臨んでいく姿勢も大事です。 

WWFジャパンが考える「クマと共存するために重要なこと」

古来、日本は森に覆われた国であり、人間やクマをはじめとする野生動物は、森の恵みを受けて暮らしてきました。人間と野生動物が共存するバランスは、時代によって、また地域や文化によっても異なります。

さて、平野の周辺部から山間部に至る、まとまった耕地が少ない地域を「中山間地域」と呼びますが、このような地域が国内には多くあります。

中山間地域は、人間が暮らす平野とクマが棲む山間地の中間に位置するため、かつては両者の「緩衝機能」としての役割を担っていました。しかし、現在では過疎化や少子高齢化といった社会・経済的基盤の変化が著しく進み、田畑や山林に人の手が入らなくなってしまいました。その結果、「緩衝機能」としての役割を果たさなくなり、人とクマの距離が縮まっています。

ここ10年、クマが人里へ大量に出没する問題が頻発しています。その直接的な原因のひとつとして、クマの食糧不足(ブナやミズナラなどが凶作のときに発生)が考えられますが、人とクマの距離が縮まっていること、そして狩猟者の減少なども、また大きく影響していると考えられています。

「人間とクマが共存するバランス」が保てなくなりつつある今、私たちがクマと共存する上で大切なのは、まず野生動物であるクマの生態を知ること、そして私たち自身の社会の変化を知ること、その上で両者のバランスがどこにあるのかを探すことではないでしょうか。

そのために必要な要素はいろいろ考えられますが、WWFジャパンでは、現時点で、特に次の4つが重要だと考えます。

①    科学的な調査およびモニタリング
クマの生態について、まだまだ解っていないことが多くあります。クマの分布および生息数の変化、繁殖生理や大量出没の仕組みなどについて、科学的な調査およびモニタリング(監視・追跡調査)を全国レベルで継続して行なうことが重要です。また、その結果得られる科学的な情報が、各地の現場で活用されることも重要です。

②    効果がある手法の実行
クマとのトラブルが生じている地域では、クマを呼び寄せるエサになる物を取り除く、クマが近づけないように電気柵などの侵入防止柵を設ける、あるいは徹底して追い払い再び近づかないよう学習させるなど、効果が実証されている手法を着実に実行していくことが重要です。
一方、国内の中山間地域における社会・経済問題は深刻であり、上記の実行は難しい場合もあります。そこで、それぞれに異なる地域の状況を考慮し、その地域における最善の取り組みにチャレンジができる体制を整えていくことが重要です。

③    生息地の整備
人間もクマも森の恩恵を受けています。人間もクマなどの野生動物も森林資源を有効に利用できるよう、「森林の適切な管理」*注1の推進、そして「保護価値の高い森林」*注2の保全が重要です。従来の国内制度においても、生物多様性の保全や野生動物の生息地整備を、より重視する必要があります。そのためには、保護地域の制度を有効に活用するとともに、それ以外の森林においても森林計画制度などの活用が必要です。計画的にまとまった面積の生息適地(コアエリア)を確保し、他の地域と連続性を持って繋げること。そして、その周りに人間の生活圏との緩衝地帯(バッファーゾーン)を配置することが重要です。

④    専門家の配置
クマをはじめとする野生動物とのトラブルが深刻な問題になっていますが、野生動物管理の専門家が不足しているため、十分な対応ができないことがしばしばあります。
クマの安易な捕殺が進まないように、またトラブルを軽減するために、野生動物についての知識と管理技能を持った専門家を、全国各地に配置することが重要です。また、各地に配置された専門家が、地域に根差した活動を、長期的に行なえるための体制を整えることも重要です。
そのためにはまず、野生動物の専門知識を持つ人材を育成する仕組みをつくること。また、育成された人材が各分野そして各地域で、専門家として活用できる総合的な人材育成・活用体制を整えることが必要です。

  • ※注1:「適切な森林管理」
    ①森林環境を適切に保全し、②地域の社会的な利益にかない、③経済的にも継続可能な、森林管理
    を指す。WWFでは、世界各地で森林保全活動の具体的手法として、FSC(Forest Stewardship
    Council、森林管理協議会)の認証制度を推奨し、「適切な森林管理」の実現を目指している。
    /activities/nature/cat1219/fsc/index.html
  • ※注2:「保護価値の高い森林」
    国や地域の法律で保護されている、いないにかかわらず、さまざまな観点から保全の必要性が高いとされる森林。例えば、次のような森林が対象となる。○重要な固有種、絶滅危惧種などの生物多様性価値が集中する森林、○水源の保護、土壌浸食防止など、自然の基本的なサービスを提供する森林、○地域コミュニティーの基本的ニーズを満たすために欠かせない森林、など。
    /activities/2009/09/701514.html

WWFジャパンの取り組み

WWFジャパンでは、上記4項目の改善に取り組むにあたり、西日本に注目しました。
西日本は森林開発などの影響により、ツキノワグマの生息数が減った地域です。九州ではすでに絶滅したとされ(環境省2012による)、現在、最も絶滅が懸念されているのが四国です。一方、西中国地域では90年代からの保護政策の結果、生息数や生息域が回復傾向にあると考えられています。その結果、人間とのトラブルも増えてきました。

WWFジャパンは、四国においてはNPO法人四国自然史科学研究センターをパートナーとして、また西中国地域においては地方自治体である島根県をパートナーとして、それぞれ異なるフィールドプロジェクトを2012年から新たに展開します。これら2つの地域に注力してフィールドプロジェクトを実施していきますが、他の地域でも、ツキノワグマおよびヒグマについて、社会から必要とされる情報について客観性と科学性を重視しながら収集、整理を行ない、積極的に発信していきます。

私たちの取り組みは小さなものかもしれませんが、地道ながらも着実な活動を積み重ねることで、問題の解決に貢献していきたいと考えます。

①    「科学的な調査およびモニタリング」への取り組み
WWFジャパンは、NPO法人四国自然史科学研究センターと共同で、国内で最も絶滅が懸念される四国山地のツキノワグマ地域個体群について、科学的な調査を実施し、この調査で得られる情報をもとに、自治体や国の行政当局などに対して個体群の絶滅を回避するための具体的な提案・提言を行ない、保護管理を促します。
また、国内各地で実施されているクマの保護管理の状況について、科学的な観点から情報収集・整理を行ない、積極的に発信していきます。さらに必要に応じて、クマ保護管理の主体となる関係機関や関係者に対して、要望や提案などを行なっていきます。

②    「効果がある手法の実行」への取り組み
WWFジャパンは、島根県と共同で、クマなどの野生動物と人間とのトラブルを軽減するためのパイロットプロジェクトを実施します。これは、全国に先行して過疎化が進む島根県の中山間地域の集落を対象に、その地域が抱える様々な問題を考慮し、住民の積極的な参加を促しながら実施する地域一体となった取り組みです。
このパイロットプロジェクトでは、すでに効果が実証されている獣害対策などを、島根県の中山間地域の実情に合わせながら実施していきます。その最終的な目的は、獣害をゼロにすることではなく、集落の許容範囲にまで軽減し、その結果「集落が元気になる」ことです。そしてプロジェクトを成功させ、島根県における一モデルを他の地域に示すことを目指します。

③    「生息地の整備」への取り組み
四国山地のツキノワグマ地域個体群は、剣山(つるぎさん)山系に残存する自然林に依存して生息していると考えられています。一方、今後の調査の結果にもよりますが、クマの生息に適している自然林の面積は、四国山地の地域個体群が安定的に生存するには、狭いのではないかと考えています。
まずは、既存の国内制度を活用し、生物多様性の保全や野生動物の生息地整備を働きかけていきます。さらには、既存の制度にとらわれない「適切な森林管理」の推進、および「保護価値の高い森林」の保全を促したいと考えます。

④    「専門家の配置」への取り組み
フィールドパートナーの島根県では、クマの出没が多い県西部の3地域事務所に各1名の鳥獣専門指導員(クマ専門員)を配置し、すでに地域に根差した活動を行なっています。
今回の新たなパイロットプロジェクトでは、2地域2名のクマ専門員に参加してもらい、地域コミュニティへ積極的に働きかけることで、プロジェクトを推進していく計画です。
島根県のクマ専門員が、今までより精力的に、人間と野生動物とのトラブルを軽減する取り組みにチャレンジし、パイロットプロジェクトの推進力となれば、現場における専門家の重要性を島根県内外に示すことができると考えます。

 

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