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WWFの活動

活動トピック

ブキ・バリサン・セラタン国立公園の保全

インドネシア・スマトラ島の南端に位置し、「スマトラの熱帯雨林」としてユネスコの世界自然遺産にも指定されている、ブキ・バリサン・セラタン国立公園。起伏に富んだ山間の熱帯林には、絶滅のおそれの高いスマトラサイ、ゾウ、トラや幻のウサギと言われるほど珍しいスマトラウサギなどの野生生物が生息し、豊かな森林がもたらす自然の恵みは、周辺に暮らす人々の生活をも支えています。しかし、この国立公園の自然環境は、違法な土地占拠や開発、密猟などの脅威に依然としてさらされています。WWFでは、現地の国立公園管理局や地域住民と協力し、この森を守る活動を行なっています。

世界指折りの豊かな熱帯の自然

ブキ・バリサン・セラタン国立公園は、スマトラ島の西側を南北に走る脊梁山脈の南端に位置し、その多くが山岳の熱帯林に覆われています。この国立公園では、105種の木、126種のラン、26種のラタン(籐-とう)や15種の竹がこれまでに確認されており、絶滅の危機に瀕しているラフレシアやショクダイオオコンニャク(スマトラオオコンニャク)など多くの植物の重要な生育地となっています。

また、野生動物についても、90種の哺乳類、322種の鳥、52種の爬虫類、51種の魚類が記録され、スマトラサイ、スマトラゾウ、スマトラトラなど、絶滅の危機にある大型哺乳類の貴重な生息地にもなっています。

特にスマトラサイは、現在世界に生き残っているとみられる推定総個体数300頭以下のうち、この地域に60~80頭が生息していると考えられており、世界では最大の生息地となっています。

2004年には、その自然の豊かさがあらためて高く評価され、スマトラ島内にある他の国立公園とあわせ「スマトラの熱帯雨林遺産」として、ユネスコの世界遺産にも指定されました。

歴史ある国立公園の現状

ブキ・バリサン・セラタン国立公園は、1935年に野生生物保護区として制定され、その後の1982年に面積35万6,800ヘクタールを有する国立公園指定されました。
自然が豊かなインドネシア国内でも、最も古い歴史を誇る国立公園の一つです。

しかし、ブキ・バリサン・セラタン国立公園は、地元の人たちでさえも分からないほど国立公園の境界が曖昧で、居住地や農地を得るために不法な土地売買や占拠、開発などが問題となってきました。

すでに公園内の28%のエリアで、森林が、米などの食料や、コーヒーのような換金作物を違法に栽培するための農地に転換されています。さらに森に侵入しての野生動物の密猟も跡を絶ちません。

また、スマトラ島南部の港と中心都市をつなぐ幹線道路が、国立公園を横断する形で走っており、これも自然を分断する一因になっています。

こうした現状は、ただでさえ開発などによって失われ続けている、多くの野生生物の生息域をさらに分断し、希少な種の生存を脅かす原因となっています。

また、このような野生生物の生息地が分断、縮小することにより、近隣で暮らす地域住民と、これまで森に生きていたゾウやトラなどの野生動物が衝突する事故も多発しています。

WWFの取り組み

国立公園を管理する行政当局は、保護対策を進めようとしてきましたが、実際に現場で管理やパトロールにあたるレンジャーや施設・器材は、慢性的に不足しており、国立公園内での違法な行為の取り締まりを十分に行なうことができませんでした。

また、地域住民には保護区であることを認識していなかったりか、認識していてもほかに生活の糧を得る術がなくやむを得ず違法行為を行なっているケースも多く認められます。

WWFでは、こうした問題を改善するため、国立公園内の不法な土地占拠や農地開拓を取り締まるための、国立公園管理局のレンジャーや地域住民による共同パトロールや、国立公園内での道路建設の在り方に関する提言、専門家を招いてのワークショップなどを開催し、ブキ・バリサン・セラタンの保全を推進しています。

また2007年には、ブキ・バリサン・セラタン国立公園内で違法に栽培されたコーヒーが世界各国に輸出されていることを指摘した報告書を発表しています。
それ以降、コーヒー業界の主要関係者とワークショップや地域の農家への講習会などを行ない、持続可能なコーヒー生産を行う体制づくりを支援し、国立公園周辺に暮らす人々が不法な土地占拠や伐採、密猟などを行わなくても生活できるように、合法で持続的な収入源を確保するための支援を行なっています。

こうした活動のなかで特に大きな成果を上げているのが、2009年からはじまった訓練されたゾウとゾウ使いによる森のパトロール、"エレファント・パトロール"です。主な目的は、国立公園内で不法に開拓された農地や居住地の監視、野生のゾウの群れの調査です。

WWFでは、専門家とも協力しながら、この地域で頻繁に村落に姿を現し人間と争いを起こす野生ゾウにGPS機能を備えた発信器を付けました。

これをもとに野生のゾウが人家や畑に近づいた際には、エレファント・パトロールチームが現場に駆け付け、大きな音を鳴らして追い払ったり、住民に連絡を取って危険を知らせたりして衝突を未然に防ぐ取り組みを行っています。

この訓練されたゾウと、GPSを使ったゾウによるパトロールは、徐々に効果を発揮しはじめ、これまでに不法占拠と野性のゾウと近隣の住民との争いの減少に結びついていることが調査により明らかになっています。

森を守り、増やす

かつて豊かな熱帯の自然林に覆われていたスマトラ島の森林は、ここ25年間で約半分にまで減少しました。伐採された木材からつくられる紙製品や、その後につくられた農園で収穫された農作物は、海を渡ってこの日本に届くものもあります。日本は、スマトラの森の減少に無関係とは言えないのです。WWFは、これからも残された森林がこれ以上無秩序に開発されることのないよう、行政組織や地域と活動を続けるとともに、代替産業の支援として持続可能な農業、地域の自然を生かしたエコツアーや地元の人々と協働した植林など、新たな取り組みにも力を入れてゆきます。



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国立公園の森。多種多様な熱帯の植物が見られる

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国立公園の西側にはすぐ海が広がる

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スマトラサイ。
世界に300頭ほどしか生息していない

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スマトラウサギ。
実際に人の目に触れることはきわめて希。
生態も謎に包まれている

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公園内やその周辺には、荒れた土地も目立つ

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国立公園内にあるフィールド・オフィス。
活動の拠点になる

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ゾウとゾウ使いによる国立公園内のパトロール

関連情報

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