「原子力をCDMに」との主張で日本が「化石賞」を受賞


温暖化担当の山岸です。
国連の気候変動会議が開かれているパナマに来ています。

6月に開催されたドイツ・ボンの会議に続き、今回の国連気候変動パナマ会議でも、日本が化石賞を受賞してしまいました。化石賞は、国連の温暖化防止会議において、その日に最も「後ろ向きな主張」をした国に対して与えられる不名誉な賞です。

受賞の理由は前回と同じく「原子力発電をクリーン開発メカニズム(CDM)の中で認められる活動にすべし」という主張によって、です。

CDMは、京都議定書の中で認められている仕組みで、先進国が温室効果ガスの削減目標を達成する際に、途上国で行なったプロジェクトでの排出量削減を「クレジット」として得て、目標達成に加算できる、というもの。

現行のルールでは、原則的に原発はCDMのプロジェクトとして使えませんが、日本政府は以前から「原子力発電を新たにCDMのプロジェクトとして認められるようにすべし」と、主張。今の交渉の中で、そのルールを改めることを求めてきました。

そして今回、その「認められるようにする」という選択肢を、交渉されている文書から削ることを、日本はインドと共に拒否しました。

これはつまり、原発を途上国に輸出し、自国の削減目標達成に利用しよう、ということです。

福島での原発事故が、今も多くの人を苦しめ続け、事故の検証すら終わっていない中、当事国である日本がこのような主張することについて、国際的な市民社会からは、もはや困惑に近い驚きと、批判の声が挙がっています。

これを推進する人たちは、いずれにせよ原子力の拡大が進む途上国では、まだ日本の技術が入った方が安全に運用できるはずだ、と主張します。でも、その「安全神話」の驕りこそが、そもそも今回の事故を招いたのではなかったのでしょうか?

日本政府は、エネルギー政策だけでなく、こうした国際交渉での原子力の扱いについても、根本的に見直すべきです。

「化石賞」とは石油や石炭などの温暖化を促進する化石燃料と、古いもの=時代遅れ、の意味を重ねたものです。

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「本日の化石賞」の授賞式の様子

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報道もたくさん詰め掛けました

 

 

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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