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  サンゴ礁の危機: 新石垣空港問題

空から見た白保海域。■「白保」を有名にした危機

 白保のサンゴ礁を埋め立てる「新石垣空港」の建設計画が発表されたのは、1979年のことでした。
 戦争の時も、飢饉の時も、海の幸に救われてきたという地元白保の人々の多くは、この計画に対し、反対運動を展開。その後、WWFや日本自然保護協会などの環境団体も加わり、さまざまな調査や計画の見直しを求める活動が行なわれるようになりました。白保のサンゴ礁のすばらしさが明らかになり、世界的にも知られるようになったきっかけは、皮肉にもその自然を破壊しようとしていた、空港の建設計画だったのです。
 この白保の海を埋め立てる計画は、地元の根強い反対と、白保のサンゴ礁の保全を求める国内外の自然保護団体や研究者たちの働きかけによって、ついに中止となりました。しかし、空港建設の計画自体が消えることなく、紆余曲折を経て、白保の海上、宮良牧中、と建設予定地を変えてきました。

  その後、稲嶺沖縄県知事が、前知事の決定を白紙に戻して建設候補地を再度選択することを発表。「新石垣空港建設位置選定委員会(位置選定委員会)」を設立し、2000年3月までに建設候補地の絞り込みを行いました。その候補地とは、カラ岳東側(白保の海の埋め立てを伴う)、カラ岳陸上、宮良、冨崎野の4カ所でした。
  WWFジャパンは、沖縄県からの要請を受け、この選定委員会のメンバーとなっていました。しかし、いずれの候補地も出された情報が不十分であったばかりか、環境保全という視点から見ると問題がありました。WWFジャパンは「現空港の拡張も選択案として加えてもらいたい」という要請を出しましたが、これは受け入れられませんでした。
2000年3月11日、沖縄県石垣島の位置選定委員会は、7回目の全体会議を開催し、空港の建設予定地を「カラ岳陸上」に決定。この「カラ岳」とは、石垣島白保集落の北端に位置する小さな山のことです。この計画では、その山の一部を削り、サンゴ礁の広がる海の目の前まで伸びる形で滑走路が建設されるため、海を目の前に、高さ数十メートルの滑走路の壁ができることになっています。


白保の海から見たカラ岳カラ岳陸上案とWWFジャパン


 「カラ岳陸上」案は、選定委員による投票の結果、賛成34反対1で選定されました。これに際し、WWFジャパンは唯一の反対票を投じました。カラ岳陸上部での空港の建設は、海を直接埋め立てるわけではないとはいえ、サンゴ礁の海と沿岸部の生態系のつながりを分断してしまいます。また、空港建設に伴う表土の移動や地形の改変は、建設場所がサンゴ礁にあまりにも近いことから、赤土が流出したり、地下水系が汚染されたりといった、サンゴ礁生態系への直接的な影響も危惧され、そのまま容認するわけにはいかなかったのです。
  いっぽう地元では、経済効果や、現空港による騒音被害の解消などを求めて、新空港の早期建設を強く望む声がある一方、新空港建設による急速な変化に対する不安や、かけがえのない島の自然を失うことへの反対の声もあります。

 WWFジャパンは、「カラ岳陸上」案に反対の一票を投じましたが、白保のサンゴ礁生態系を将来にわたり保全するには、対立する意見であってもきちんと耳を傾けながら、どのような選択肢が一番よいのかを、地域の人々と一緒に探っていく必要があると考えています。そこで「カラ岳陸上」案決定後は、位置選定委員会での選定結果を尊重するという立場をとることとしました。
 

■白保のサンゴ礁生態系を守るために

 WWFジャパンは、位置選定委員会の解散後も、新石垣空港整備基本計画の策定など、空港建設事業のプロセスにおいて、自然環境がきちんと保全されていくよう、提言を行っています。
  2000年12月からは、位置選定委員会のあとを受けて設立された「新石垣空港環境検討委員会(環境検討委員会)」に、WWFジャパンは沖縄県の要請を受け委員として参加し、意見を述べてきました。
  それと並行して、白保サンゴ礁海域において、赤土堆積状況やサンゴ礁生態系についての独自のモニタリング調査を開始。調査結果に基づき、新石垣空港建設事業の問題点の指摘や、環境影響の回避に向けた提案を、委員会に対して行ってきました。

 特に環境影響評価の方法書、準備書、評価書の各段階においては、適切な環境影響調査、予測、評価の実施を要求する意見書を提出しています。また、第15回環境検討委員会では、当該事業の工事中および新空港供用後に予定されている環境モニタリング調査の (1)対象、(2)影響が確認された場合の措置、(3)環境モニタリング項目について、充分な環境配慮がなされていないとの認識から、環境影響評価書の補正において事後調査項目・期間の拡充を要望しました。
  しかし、WWFの意見・要望が充分に反映されないなままに、2005年9月には環境影響評価の手続きが終了し、環境検討委員会も解散しています。
  同年12月には国土交通大臣から、新石垣空港の飛行場及び航空灯火設置許可が出されました。これを受け、事業者である沖縄県は、2005年度中に実施設計を完成し、2006年度からは用地買収を進めています。

 美しい自然が、多くの人の関心と足を八重山に向けさせる一番の財産であることは、誰よりも島の人々がよく知っていることです。陸上での工事が新たな赤土流出を招くことは無いのか、建設後も海に何らかの影響を及ぼすことは無いのか。まだまだ慎重に考えねばならない点は多く残されています。
  沖縄県は、新石垣空港の建設工事や供用に伴う環境影響について、モニタリングを行うために事後調査委員会を設立することにしています。

 新石垣空港の建設が具体化した現在、環境モニタリング調査のやり方に不十分な点が残されたままでは、着工後、予測できなかった環境影響が出る可能性を否定できません。WWFジャパンでは、複数の主体が多角的な視点から環境影響をモニタリングする方が、きめ細かな環境評価が可能になると考え、自主的なモニタリング調査を実施することにしています。
  今後も空港建設事業が、白保の自然環境に悪影響を及ぼさないよう、最大限の働きかけを行なっていきます。
 

新石垣空港問題に関する資料はこちら

 


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