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熱帯林の生物多様性の豊かさについて、このような話があります。
1980年、中米パナマの熱帯雨林で調査をしていた生物学者たちは、飛び上がるほど驚くような事実に遭遇しました。
雨林に自生する19本の樹木を調べてみたところ、1,200種ものカブトムシが見つかり、しかもその8割が、これまで存在が知られていなかった、新種だったのです。
森全体に視野を広げてみたとき、そこには一体どれくらいの未知の生物が息づいているのか、想像することすら、容易ではありません。
このことは、次の事実を物語っています。
「人類は、自分が暮らすこの地球という星に、どれくらいの種数の生物が生きているのか、ということよりも、宇宙にどれだけの星があるか、という事の方を、よほどよく知っている」。(WRI)


生物多様性の世界が、どれくらい奥深く、謎に満ちているかは、パナマの森での出来事から30年が経った今も、変わることがありません。
現在までに、科学的に認知され、名前がつけられている野生生物の数は、アフリカゾウからシロアリ、さらに小さな藻類などの生きものまで含め、約140万~180万種。
しかし、予想される未知の生物の種を含めた種数は、実に1,000万種にのぼるといわれ、最大では1億種に届くのではないかという推定もあります。
そして毎年、その数全体の0.01%~0.1%が、絶滅していると科学者は警告しています。
仮に全生物の種数が1,000万種だとしたら、毎年1,000種から1万種の生物が、この地球上から姿を消している、ということです。
もちろん、長い地球の歴史の中では、恐竜などをはじめとする、生物の大絶滅が幾度も起きてきました。
しかし、現代に起きている種の絶滅、生物多様性の喪失が、過去の大絶滅と決定提起に違うのは、生物が絶滅するスピードが圧倒的に速い、という点です。
その速さは、人間が関与しない状態で生物が絶滅する場合の、1,000倍から1万倍になるといわれています。
これらの数値は、科学的に算出されたものですが、いずれも幅があり、まだ正確とはいえない面があります。それでも今、この世界で起きている生物多様性の喪失が、きわめて大規模で、深刻であることに、間違いはありません。



その危機が急激に大きなものとなったのは、20世紀以降の100年間です。一体何が、生物多様性を脅かしているのでしょうか。
その要因は、大きく4つ挙げられます。




さまざまな資源をもたらす生態系は、非常に微妙な生命のバランスで成り立っています。このため、一度壊してしまうと、人の力では完全な形に戻すことができません。
WWFが「Living Planet Report(生きている地球レポート)」の中で試算した結果では、過去30年の間に、世界の自然の豊かさは3割近く失われ、一方で、資源などの消費や環境への圧力は3割増加しました(右図参照)。
この流れを変えてゆかなければ、地球の自然環境と生物多様性は、失われ続けることになるでしょう。

[生きている地球の指数]
環境の豊かさがどれくらい失われたかを示す。
地域、淡水、海洋の3つの指数の平均した。基準となる1970年以降、その数値は30%減少している。