「生物多様性条約」は、個別の野生生物種や、特定地域の生態系に限らず、地球規模の広がりで生物多様性を考え、その保全を目指す国際条約です。1993年12月29日に発効したこの条約は、生物多様性の保全だけでなく、さまざまな自然資源の「持続可能な利用」を明記した条約でもあります。
条約の概要
目的
生物多様性条約は、3つの大きな目的を掲げた国際条約です。
- 生物の多様性の保全
- 生物の多様性の持続可能な利用
- 遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分
発効年: 1993年12月29日
生物多様性条約は、1992年6月ブラジルで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で、条約に加盟するための署名が開始され、1993年12月29日に発効しました。
締約国数: 193の国と地域
(2010年2月1日現在)
日本は1993年5月23日に批准し、締約国になりました。また、アメリカはこの条約を批准していません。
条約の意義
生物多様性条約は、どのように、各国の生物多様性保全の役に立っているのでしょうか。
各国の取り組みの指針
条約の締約国は、その第六条で、締約各国に対し、生物多様性の保全と持続可能な利用を目的とする「国家戦略」、または国家計画の作成と実行を、義務づけています。
また、生物多様性の持続可能な利用のための措置として、持続可能な利用の政策への組み込みや、先住民の伝統的な薬法のように、利用に関する伝統的・文化的慣行の保護・奨励についても規定しています。
地球の生態系の中に産する「遺伝資源」の利用に関しても、資源利用による利益を資源提供国と資源利用国が公正かつ公平に配分すること、また途上国への技術移転を公正で最も有利な条件で実施することを求めています。
これらの条約の指針は、それぞれの国内における、環境行政の大きな方向性を示すものとなり、その実施を通じて、生物多様性の保全が行なわれる事になるのです。
国際協力と知見の共有
さらに、特に重要な地域や、絶滅の危機にある種の特定、モニタリング調査などを行なうことの他、先進国の資金により開発途上国の取組を支援する資金援助の仕組みと、先進国の技術を開発途上国に提供する技術協力の仕組みがあります。
経済的・技術的な理由から、生物多様性の保全と持続可能な利用のための取り組みが、十分でない、と見なされた開発途上国に対し、支援が行なわれるのです。
また、生物多様性に関する情報交換や調査研究についても、各国が協力して行なうことになっています。
条約の課題
条約は、「生物多様性の保全」を、その目的の筆頭に挙げています。
しかし、この条約会議の内容は近年、「生物多様性(=自然資源)」の利用のルールづくりや、それによって生じる利益の配分ルールづくりを行なう場、としての色彩が、むしろ強くなっています。
そして、このルールと利害をめぐり、実際には環境保全を進めようとする先進国と、これから開発を進めようとしている開発途上国との間で対立が起きています。
豊富な生物資源を有する途上国と、それを利用開発する先進国との対立は、非常に複雑な問題です。「資源を持つ国」と「技術を持つ国」という新たな対立が生まれています。「持てる者」と「持たざる者」という単純な構図では説明できなくなってきているのです。
このような利害をめぐる課題が大きく扱われることで、ヒト以外の生物への恩恵を含めた、より広い視野で、生物多様性の保全を目指すという、条約本来の課題に対する意識が、薄められてしまっている、という問題も起きています。
WWFの評価
これまでの生物多様性条約の貢献と活動に関して、WWFはまず、世界各地で自然保護区の設定が進んだことを評価しています。
現在では、地球上の陸域のうち、およそ13%を占める面積が保護区になりました。
ただ、保護区となっていても、効果的な管理がなされていないところも多く、これだけで生物多様性の保全が実現できているわけではありません。
このような問題のある保護区では、資金を増やし、管理面での課題を改善していく必要があると考えています。
また、その際には、保護区がもたらす経済的な利益を評価し、「生態系サービスへの支払い制度」(PES: Payment for Ecosystem Services)を適切なかたちで導入するなどの手法で、資金の確保を検討することも一つの重要な試みとなります。
一方、海洋や沿岸については、まだ保護区が十分に設定されていません。
現在、世界の海洋で保護区になっている面積は、海全体の1%未満です。
条約事務局が目指している、「2012年までに代表的な海洋保護区のネットワークを作る」という目標についても、実現に向けた取り組みの状況は、芳しくありません。
このため、WWFでは、状況を改善する一つの手段として、海洋保護区のネットワークを選び出すためのガイドライン策定を求めています。
こうした陸域・海域の保護区は、生物の多様性を保全するとともに、炭素の吸収・固定源ともなり、気候変動の緩和策としても有効であると考えられます。
そのためには、生物多様性条約と、気候変動枠組み条約との連携改善を図る必要もあります。
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