活動トピック

ウミガメについて

2000 A WWF Species Status Report より

はじめに

現在、地球上に生息しているウミガメは全種、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストにその名前が掲載されています。大平洋ではオサガメ、地中海ではアオウミガメの数が激減しており、今後も個体数の減少は続くと予想されます。
また、ウミガメは全種、ワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約=CITIES)の附属書 I に掲載されており、この条約に加盟している140カ国で国際間の取引が禁止されています。

ウミガメは1度の産卵で100個以上の卵を産みます。しかし、砂浜では人間による卵の捕獲が後を断ちませんし、孵化した子ガメの多くは、カニ、キツネ、鳥などに襲われて命を落とします。海にたどりついても魚に食べられるものが多く、厳しい自然の中で1年以上生き続けられるものはごくわずかです。
さらに、成長したカメは外海で漁業用の網に引っ掛ったり、汚染などで死亡するものが少なくありません。さまざまな困難を乗り越えた、非常に少ない数のウミガメしか命を繋いでいくことができないのです。

今、ウミガメのライフサイクルにあわせた保全の方法が必要とされています。ウミガメが毎年産卵に訪れる海岸では、地域の人々への理解と保全に関する働きかけが必要ですし、成長したウミガメが暮らす外海では、国際的な保護のための協定を結ばなければなりません。
メキシコ湾のように、30年にわたる保護の取組みの結果、ケンプヒメウミガメの数が回復しつつある地域もありますが、他のほとんどの海域・地域ではウミガメは危機にさらされており、早急な対策が必要とされているのです。

WWFは、これまでに多くの方々からお寄せいただいた支援をもとに、世界の各地でウミガメの保護や調査、そして、その生息環境である海洋を保全する活動に取り組んできました。ウミガメは、外海ばかりでなく、サンゴ礁やマングローブ、砂浜といった、さまざまな自然があって、初めて生きていくことのできる野生動物です。そして、その海は、私たち人間が生きていく上でも欠かすことの出来ない、大切な環境に他なりません。
WWFは、ウミガメが生き続けることのできる海の環境保全を目指しています。

index
要約
歴史と文化
ウミガメの自然史
世界のウミガメ
脅威と問題
WWFのウミガメ保護活動
ウミガメ保護活動史
近年の取り組み
今、何をすべきか
REFERENCES
■原文レポート(英語:PDF形式)
2000 A WWF Species Status Report"Wanted Alive! Marine Turtles in the Wild"
(表紙:339KB/本文:4.2MB

要約

ウミガメは1億年来、この地球に生息している驚くべき生物です。中には、およそ2億3千万年前のものとされる化石もあります。現存するウミガメは7種が知られていますが、様々な国の文化・風習のなかで崇拝されてきました。長寿のシンボルとして、あるいは子孫繁栄、強さ、邪悪から人間を護ってくれる存在として、人はウミガメを崇めてきたのです。オーストラリアの先住民アボリジニを始めとして、アジア・太平洋地域の人々、さらにアフリカ沿岸地域、中南米からヨーロッパまで、カメは特別な存在でした。カメの甲羅の上に世界が創られたとする神話もあるほどです。

歴史上、最も大きなウミガメ、アーケロン(Archelon ischyros)は、体長3.5メートルにもなり、今から 6500万年以上前の白亜期に生息していました。また、発掘調査によると、人類は有史以前からウミガメの狩猟を行ってきたことがわかっています。現存するウミガメの中では、オサガメが最も大きく、爬虫類全体としても、最も大きい種のひとつです。成長したオサガメはなんと、甲長が180センチ、体重は500キロにも達しますが、これまで記録された最大のオサガメは、1988年にイギリスのウェールズ地方の砂浜で動けなくなっていた雄のオサガメで、体長は256センチ、体重は1トン近くありました。

砂浜での産卵、そして、孵化した仔ガメが一目散に海をめざしていく姿など、ウミガメは常に人々の注目を集めてきた動物です。ダイビングやシュノーケリング、また海水浴をしていた人々の中には、運良くそうした光景を目撃できる例があります。しかし、これまで人々によって崇拝され、今もその風潮が残っているその一方で、ウミガメは何世紀にもわたり食料として、また装飾品や商業取引の対象として利用されてきました。この他にも、乱獲、汚染、あるいは漁業用の網に引っ掛かるなど事故による溺死、また生息地の消失などの脅威にさらされ、世界に7種いるウミガメのうち、6種は絶滅の危機に瀕しています。タイマイとケンプヒメウミガメは国際自然保護連合・種の保存委員会(IUCN/SSC)のウミガメ専門家グループにより、もっとも絶滅の恐れの高い「近絶滅種(CR)」に指定されています(IUCN,2000)。また7種全てがワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約=CITIES)の附属書Iにリストアップされており、この条約の加盟140カ国で国際間の取引が禁止されています。

タイマイの甲羅から作られる「鼈甲(べっこう)」は装飾品として、古くは古代エジプトの頃から取引され、はるか遠方の地まで運ばれていました。そのような取引のおかげで紅海沿岸の港は栄えたと言われます。クレオパトラの浴槽がべっ甲でできていた、とする説もあるほどです(Parsons,1972)。また、人類最古の硬貨にもウミガメの姿が描かれていました。紀元前700年以降ギリシャの都市国家エギナで発行されていた硬貨は、当時「カメ」と呼ばれていたそうです。

べっ甲は、特に日本を中心とする東アジアおよび東南アジアで、今も高い需要があります。さらに、キューバとドミニカ共和国の2カ国が、タイマイの国際取引の再開を提案しています。WWFは、タイマイおよび他の6種のウミガメに関する国際的な商業取引の再開に反対しています。100年前から200年前には無数にあったウミガメの個体群が、今では消滅してしまったり、その規模が縮小しています。すべての海洋では地域的な絶滅が見られ、しかも長期的な保全・管理のおかげで安定している個体群でさえも、完全に安全だとはいえないのです。マレーシアでは、ウミガメ4種の産卵数がここ数十年で激減しており、オサガメにいたっては、50年代以降98パーセント減少したといわれています。

1980年代前半に、ウミガメの主な死亡原因がトロール船によるエビ漁であると確認されて以来、混獲されたウミガメなどが逃げられるよう、TEDと呼ばれるウミガメ除去装置が開発されました。しかし、ウミガメ除去装置が西半球で広く使用されているとはいっても、全世界のトロール漁業で使われているわけではありません。メカジキやマグロのような遠海魚を対象とした延縄漁業による死亡も増えつつあり、深刻な脅威となっています。こうした漁船は毎年数十億という数の鈎針を取り付けていますが、その数は増え続けています。ウミガメはこういった延縄の鈎針を飲み込んでしまったり、縄に絡まって溺れてしまうのです。生きている間に放してもらえたとしても、体内に鈎針が埋まったままでは大半が死んでしまいますし、また他にも、様々な刺網漁や、魚を捕らえるためのワナで命を落とすこともあります。死亡事故を減らすためには、使われる道具の改善や、漁業の方法を変えること、特定の海域を特定の期間、閉鎖するなどの措置が必要とされます。また、漁業に携わる人たちがそのような努力に協力してくれるよう、働きかけていくことも必要もです。

近年は、ウミガメの謎を解明するべく、遺伝子解析や人工衛星を用いた遠隔探査など強力で新しい手段が開発されていますが、それでもまだ多く謎が残されており、今後やるべき課題が山積しています。
ウミガメの保全は沿岸地域の管理計画、および生態系の保全計画に組み込まれる必要があります。水質維持のための規制や、重油や化学薬品の流出など、緊急事態の対策計画も、ウミガメのよりどころでもある健全で豊かな生態系を保全するためには不可欠です。さらに、ダイナマイト漁や海洋廃棄物、油による汚染などの脅威を排除しなくてはなりません。たとえば産卵期の砂浜では照明を規制するなど、必要に応じた法の制定を推し進める必要があるといえるでしょう。砂防工事や埋め立て工事、砂の採取、歩行者や車両の通行などについても、産卵する雌や卵、孵化した仔ガメを保護するため、産卵期の砂浜では制限されなくてはなりません。また長期的にモニタリングを行うことも、生息地への影響を判断する上で、重要なことです。

世界各地でウミガメが生き延びられるかどうかは、沿岸域の地域共同体による、日常的な支援が得られるかどうかにかかっています。ウミガメが貴重な食料になっている地域もあれば、エコツーリズムの収入源になっている場所もあります。もしウミガメが絶滅していなくなってしまったら、それは世界にとって、歴史のなかで崇拝されてきたシンボルを失うというだけでなく、数億年もこの地球上で息づいてきた動物が、滅びてしまうことを意味しているのです。

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歴史と文化

カメは象徴的な存在として、世界各地の文化・風習のなかで崇拝されてきました。 カメは長寿のシンボルであり、また子孫繁栄、強さ、邪悪から人間を護ってくれる存在です。

オーストラリアの先住民アボリジニにとって、あるいはケニアのバジュニ族などアフリカ沿岸地域の人々にとっても、カメは重要な意味を持っていました。カメの甲羅の上に世界が創られたとする神話もあるほどです。
たとえば北アメリカのフーロンやイロクォイ・インディアンの間に伝わる「空から落ちた女人の伝説」にも、その天地創造に関わるカメの姿が描かれています。この物語では、地球ができるまで、一人の女人が天上の世界にいました。「そこには水以外には何もなく、ただ広い、広い海があった。そこにいるのは、海の上か海の中に住んでいる動物たちだけだった。そこへ空から一人の聖なる女人が落ちてきた」(Clark,1979)。暗闇に落ちてきた女人が溺れないように彼女を下からすくい揚げた鳥がカモだという説と、アビだという説がありますが、いずれの説でも、背中に乗らないかと女人に尋ねるのは、大きなカメだったということになっています。そのカメの甲羅を囲むようにして世界が創られ、花や木が育ったのでした。「その大亀は今でも世界を背負っている」といいます(前述)。

ヒンズー教では、ヴィシュヌ神は2回目の輪廻ではカメの姿で登場します。大洪水の後、神々は世界を持ち揚げようとすしますが、ヴィシュヌ神は自らカメに変身し、世界を甲羅に乗せて持ち上げ、荒海から救ったとされています(Pritchard ,1990)。ヒンズー教の教えでは、このカメがゾウを支え、ゾウたちが世界を支えています。世界各地の寺や神社では、様々なウミガメや淡水ガメ、そしてリクガメが祭られています。カメは、インドでは聖なる動物とされ、隣国のバングラデシュには、何世紀もの間、カメが飼われてきたイスラム教の寺院があります。バングラデシュのチッタゴンの町では、人々はインドスッポンの一種であるクロスッポンという、この寺院の池でしか見られない淡水ガメをとても大切にしています(Pritchard ,1990)。
最近、台湾で発見された1883年のものとされる石版には、金朝時代、女の赤ちゃん、老齢の牛、そしてカメを守ろうとしていた18 人の裕福な博愛主義者の物語が書かれていました。

カメが登場する最古の記録は三畳紀の末、今から約2億3000万年前の化石です。古代のカメにはその甲羅や骨格など、今日のカメに見られる特徴の多くがすで備わっており、その結果として、カメ類はその後の進化の中で大きく変化していないことがわかっています。
ウミガメは、おそらく三畳紀末に沼や湿地帯に生息していた種の子孫だと思われますが、約1億1000万年前頃に現在の姿になったと考えられており、それが今日まで地球の海を棲みかにしてきました。最も大型のアーケロンが生きていたのは、約6500万年以上昔の白亜紀で、甲長は3.5メートルにも達したとされています。また、発掘調査によると、人類は有史以前からカメの狩猟を行ってきたことがわかっています。

熱帯の太平洋の島々では、今日でもタイマイは神聖な生き物とされ、ギルバート諸島ではウミガメは家のお守りとなっています(Witzel ,1983)。中米のマヤ文明では、月の神はべっ甲の胸当てで身を守っています。またトルテカ人はオリオン座の盾のことを「トー」と呼んでいましたが、これは彼らの言葉でカメの意味でもあります(Devaux ,1991)。
さらに北のアメリカ合衆国では、現代版のカメ崇拝とも言うべく、カメ人気が急上昇しています。数千人がカメの愛好会に所属し、海だけではなく、ニュースレターやインターネットのホームページ上に登場するカメの将来に注目しているのです。

確かにウミガメはこれまで人々によって崇拝され、今でもそれが残っている地域があります。しかし、その一方でウミガメは何世紀にもわたり食料として、また装飾品や取引の対象として利用されてきました。タイマイの甲羅から作られるべっ甲は装飾品として、古代エジプトの頃にはすでに取引され、はるか遠方の地まで運ばれていました。そのような取引のおかげで紅海沿岸の港は栄えたのです。ヌビアやエジプトの古代の墓からは、べっ甲の装飾品が見つかっています。英語の「carapace」という言葉は、ウミガメの甲羅がリクガメのそれに似ていることに由来していますし、スペイン語(carey)やフランス語(caret, ecaille)のそれは、西インド諸島のアラワク人の言葉にその語源を持つとされています(Persons,1972)。

クレオパトラの浴槽がべっ甲でできていたとする説もあります(Parsons,1972)。古代ローマやインドでは、べっ甲の装飾品を中国皇帝に贈っていましたし、パラオではべっ甲は「女性の金」という儀式に使われていました(Witzel ,1983)。また人類最古の硬貨にもカメが描かれていました。紀元前700年以降にギリシャの都市国家エギナで発行されていた硬貨は、当時「カメ」と呼ばれていたのです。
19世紀になると、イギリスやフランス、アメリカでべっ甲製品の展示会が開かれるようになりました。1852年、女性用の櫛の生産が最も盛んだったのは、スコットランドとアメリカのマサチューセッツ州。イギリスの季刊誌は、「その類のもので 最も多くの国々から輸入されているのはべっ甲である」と記しています(Parsons,1972)。

今日、7種のウミガメ全てがワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約=CITIES)の附属書Iにリストアップされており、この条約の加盟140カ国では国際取引が禁止されています。しかし、べっ甲の需要は、特に日本や東アジア、および東南アジアでいまだに高いものがあります。底引き網漁など混獲による死亡、いまだに行われている取引、地域の人々の生活のため、商業目的のため、あるいは儀式のために、ウミガメとその卵は乱獲され、生きている伝説とも言うべきこの動物は、今、絶滅の危機に瀕しています。

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ウミガメの自然史

分類と分布

海洋に生息する数少ない爬虫類の中で、ウミガメはおそらく最も一般的に知られている動物です。ウミガメ以外の爬虫類には、ウミヘビ(約50種が生息、海洋性爬虫類の中では最大のグループ)、ウミイグアナ、そして、ワニ類の中で汽水域や沿岸海域に生息する種などが挙げられます。

現在、世界には少なくとも7のウミガメが生息しており、東太平洋に生息するアオウミガメ(クロウミガメとも呼ばれる)を、8種目の種と分類するかどうかについて、意見が分かれています。7種のウミガメのうち、オサガメ科(7Dermochelyidae)に属するものは、オサガメ(Dermochelys coriacea)1種のみ。以下の残り6種はウミガメ科(Cheloniidae) に属しています。
分類学者の中には色や体の形の相違を理由にウミガメの亜種をいくつか挙げていますが、こうした亜種名は一般的には使用されていません。現在は形態学的な特徴の差異以上に、遺伝子的な差異やそのパターンに学術的な関心が集まっています。

ウミガメは、7種のうち5種が世界中の海(主に熱帯・亜熱帯水域)に生息しています。残り2種は比較的限られた海域に分布しており、ケンプヒメウミガメは主にメキシコ湾、ヒラタウミガメはオーストラリア北部とニューギニア南部の海域にのみ生息しています。ウミガメ類のほとんどは、その一生を大陸棚と呼ばれる浅い海域で過ごしますが、オサガメとヒメウミガメは、外洋で多く過ごすと言われます。また、雄は海から出ることはありませんが、雌は産卵の時だけ卵を産むために砂浜へ上陸します。生まれてから 数年間は流れに身を任せるような状態で、外洋で過ごし、成長すると沿岸海域の食物の豊富な場所で過ごすようになります。

繁殖

繁殖期に入ると、雄と雌が採食場となる沿岸域から卵を産む砂浜近くの海岸近くへ次々と集まり、ペアの相手を探します。雌は何匹かの雄と交尾し、雄の精子を溜めてくり返し産卵するための準備を整えます。
夜になると雌は海を出て砂浜を這い上がり、通常1回の産卵につき100個以上にものぼるたくさんの卵を産みます。そして夜明けまでに、再び海へと戻って行きます。静かな砂浜であれば、この産卵のプロセスを1回の繁殖期の間に数回くり返すこともあります。しかし、産卵が終わると、その後2年ほどは次の産卵を行うまでの準備期間となります。特にヒメウミガメの2種は、数多くの、時には数千匹にものぼる雌のカメが数日の短い期間のうちに一度に砂浜にやって来て産卵することから、その光景はアリバダ(スペイン語で「到着」の意味)現象としてよく知られています。
一回の産卵期に一匹の雌が卵を産む場所は、多くの場合、砂浜の中でもある特定の場所、数メートルの範囲内に限られますが、これはウミガメが一つの産卵場所を守って行こうとする習性の表れです。さらに特筆すべきは、雌は自分が生まれた砂浜に帰ってくる確率が高い、ということ。この事実は、各繁殖コロニーから検出されるミトコンドリアDNAが、ある特定のパターンを示していることから証明されています。ミトコンドリアDNAは、細胞質の中に含まれ、母親から娘へと遺伝するものです。このことは、雌の遺伝子が、繁殖コロニーから別の繁殖コロニーへと移動しにくいことを示しています。

一方、他のタイプのDNA(細胞核に含まれるもの)の相違については、同じようなパターンが示されていないことから、繁殖コロニー間の遺伝子の移動が、ある程度発生していることがわかっています。これは、雄が異なる繁殖集団の雌と交尾を行っているためであると考えられます。成長した雄にとって、卵を産卵する場所よりも交尾相手の雌を探すことに対する関心度が高いと考えるならば、雄が異なる繁殖コロニー間に遺伝子の移動をもたらす主な要因であるという推察も説明がつくでといえるでしょう。採食場には異なる集団から様々なウミガメの個体が集まってくることから、このような繁殖と存続の仕組みができたものと考えられます。

もっとも、遺伝学的な根拠は急速に増えつつあるものの、全てのウミガメの習性が一様であるわけではないので、それほどには単純には集まったデータの解析ができるわけではありません。例えば、一部の熱帯のオサガメが全く新しい砂浜に卵を産む例や、オーストラリア沿岸に住むアオウミガメが、生まれた場所以外の近隣の砂浜を、産卵場所として使用している例も報告されています。しかしながら、新たに得られた遺伝学的情報が私達に伝える重要なことは、全ての繁殖コロニーが各ウミガメ個体を基本とした保護管理を必要としている、ということです。
つまり、ある一つの繁殖コロニーがダメージを受けた場合、それを他のコロニーにいる雌の個体で補うことはできないのです。さらに、採食場の海域には、さまざまな集団からウミガメが集まっており、必ずしも一番近くの産卵場所から来た個体だけではないことも、遺伝学的データから証明されています。言い換えれば、ある国の人々がウミガメを保護する場合、他の国々で生まれたウミガメも保護することになる、ということです。こうしたことから、ウミガメ保護の国際協力が一層重要度を増してきていると言えるでしょう。

孵化

母ガメが海に戻ってしまうと、卵は全く無防備になります。ウミガメの卵は温度に応じて55日から75日で孵化します。孵化個体の大きさと重さは卵の大きさと比例しており、他の爬虫類と同様、孵化した個体の性別、は生まれた場所の気温により決定づけられます。気温が低ければ雄になりやすく、気温が高ければ雌になりやすいのです。
卵が孵化する比率は80パーセントにのぼります。しかしながら孵化する前、ほんの一例ではありますが、マングースやスナガニ、ネズミ、アライグマ、ジャッカル、イノシシや犬などといった外敵に食べられてしまう可能性があります。また、世界各地でウミガメの卵はタンパク源として、さらには強精作用の高いものとして珍重されているため、人間の手が届きやすい産卵場所では、ウミガメの卵が全て奪われてしまうようなことにもなりかねません。その他にも、産卵場所が満潮時の潮の高さよりも低いところにあった場合、卵が波に流され、失われてしまうようなことも起こります。

孵化した個体は、必ずというわけではありませんが、通常は夜間に砂の中から出てきます。光源(これは何も邪魔が入らない自然の場所であれば海の水平線にあたる)に向けて、仔ガメたちは次々と波間へと進んで行きます。しかし、人間の手が入った海岸では、人工の光が、産まれたばかりのウミガメたちを海ではなく陸のほうへおびき寄せてしまうため、外敵に食べられてしまったり、車に轢かれたりするといった危険が待ち構えています。
また、そのような目に遭わなかった仔ガメも、いずれ乾燥して死んでしまいます。人間とウミガメとの共存が図られている砂浜では、照度の低い黄色照明に覆いをつけるようにしていますが、こうすれば問題はかなり軽減されます。仔ガメたちが水辺に向かって急ぐ間、特にこれが昼間であれば、外敵に食べられてしまう危険性は非常に高くなります。人間にとっては産まれたばかりのウミガメは小さすぎてあまり価値がなくても、鳥や獣、カニなどにとっては、またとないご馳走なのです。
結果として、孵化したウミガメのうち、海まで無事辿り着けるものはほんのわずかに過ぎません。一度海に入ると、仔ガメたちは波に乗って沖へ向かいますが、沖でも、鳥やハタ、マダイ、オニカマス(バラクーダ)などの大型の魚に食べられてしまう危険が、まだまだ待ち構えています。

生き残った仔ガメたちは外洋で分散し、海の中で数年間を過ごします。完全に繁殖が可能な成熟個体に成長するまで沿岸海域に戻らない種もいれば、まだ若くてもある程度大きくなれば戻ってくる種もいます。この期間は最長十年まで続き、「失われた数年間(Lost Years)」とよく言われているほど、どのウミガメの種に関する生態においても、いまだに一番謎の多い期間です。しかしながら最近では、孵化個体のかなり長期に渡る追跡調査がなされています。ウミガメは海のより深いところにいればそれだけ鳥や他の魚に食べられてしまう危険から逃れることができると考えられています。ある程度大きくなって鳥などによる捕食の恐れがなくなれば、ウミガメを食べるものといえば、サメ、まれにシャチ、そしてもちろん人間、これらのみなのです。

概してウミガメは、その種の保存のために、長い時間(おそらく平均20年から30年、水温の低い栄養分の少ない海ではそれ以上)をかけて成体となり、そして成体になってからは、膨大なエネルギーを費やして、繁殖期に何回も、そして数多くの卵を産む、という方法をとっています。つまり、一つの卵や孵化個体が種の存続に貢献する確率は低いけれども、逆に、一匹の成熟した個体、またはある程度成長した個体は、非常に大きく貢献していることになるのです。こうしたことを考えると、ウミガメの卵のほんの一部が砂浜から失われてしまったとしても、すぐに深刻な事態を引き起こすわけではないが、反対に、産卵している雌を直接砂浜で捕獲するようなことを行えば、ウミガメの個体数に多大な影響を与えかねない、ということが分かります。

人間は主に、その肉、甲羅、脂肪を目的にウミガメを獲っています。ウミガメは特に人間による捕獲に非常に弱い動物です。なぜなら、捕まえられやすいからです。卵を捕ることは穴を掘ってバケツに詰めるくらい簡単なことです。雌は特に砂浜に上がって卵を産むとき全くの無防備ですし、成体のウミガメも、ゆっくり泳ぎ、息継ぎのために海面まで上昇してくるので、透き通った熱帯の海ではボートの上からでもよく見え、漁業者に簡単に捕まってしまいます。こうしてウミガメはモリで捕らえられたり、網にかけられたり、簡単にダイバーに捕らえられたりしているのです。

ウミガメは、かなり陸地から離れた外洋を、時には大きな集団で泳いでいるのがしばしば目撃されており、かなり長い距離を移動することが出来るとみられています。衛星GPS技術を使ってウミガメの追跡調査を行った研究によると、ウミガメは一生のうち何千キロという莫大な距離の移動を行うことが明らかになりました。最近では、ある雌のウミガメを衛星により追跡したところ、太平洋を横断して7000キロに渡って移動し、その後通信が絶たれてしまった例が報告されています。雌の多くが、かなり広い海域を、食物を求めて移動するにも関らず、同じ砂浜に卵を産みに戻ってくるのです。

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世界のウミガメ

アカウミガメ (Caretta caretta

アカウミガメはウミガメの中でも大型の種で、甲羅の大きさは大きなもので1メートル以上、重さは180キロまで成長し、大きな頭と強い顎が特徴です。一生を通して肉食で、軟体動物(巻き貝や二枚貝)やカニ、ウニ、海綿などといった海底付近にいる動物や、海中を泳ぐクラゲなどを捕食しています。アカウミガメの生息域は世界各地の熱帯・亜熱帯の沿岸海域に広がっており、メキシコ湾流やカリフォルニア海流といった暖流に乗って、長い距離を移動します。成体の個体が単独で、または若い個体が集団で外洋を泳いでいる姿はよく目撃されていますし、温帯の海でも比較的頻繁に、また時には汽水の潟湖や入り江などにも姿を現します。

繁殖期の雄と雌による相手探しは外洋で行われ、他の種とは異なり、砂浜からは距離を置いたところで交尾がおこなわれます。大西洋における主な産卵場所はフロリダ州と南カロライナ州の沿岸。地中海ではもっとも頻繁に見られるウミガメで、ギリシャ、トルコからイスラエル、チュニジア、リビアなどに渡って産卵の報告があります。インド洋では、南アフリカ共和国ナタル州の北側、オマーンのマシーラ島が主な産卵場所です。また、東南アジアからオーストラリアにかけて広く産卵が行われていますが、太平洋のまん中や西側の島々ではほとんど行われていません。雌は一回の産卵につき40個から190個(平均は100個程度)の卵を産みますが、体の大きい雌ほど大きい卵を産みます。国際自然保護連合(IUCN)の種の保存委員会(SSC)ウミガメ専門家グループによると、アカウミガメは絶滅危惧種(EN)に指定されています。

アオウミガメ (Chelonia mydas

軟骨と内臓の周囲の脂肪分が緑色であることからこの名前で呼ばれますが、アオウミガメは、見た目の色は濃い暗褐色と緑がかった黄色です。最大1.5メートル程度まで成長し、ウミガメ科では最大の種です。一部の学者は、ハワイと東太平洋のアオウミガメ個体は特に色が濃いことから、これらをクロウミガメ(Black Turtle)と呼んでいます。最も大きなアオウミガメの雌は大西洋や西太平洋でみつかっていますが、インド洋やカリブ海では大きな個体はあまりいません。一番小さな個体はガイアナで見つかりました(80センチ)。重さは90キロから200キロにも及び、上から見ると甲羅は楕円形で、頭は比較的小さくて短い形をしています。アオウミガメは広く熱帯の海、特に大陸の沿岸海域や島の周辺に生息しており、また穏やかな内海にも生息しているという報告があります。ウミガメの中では唯一の草食性で、海草や主に熱帯や亜熱帯の沿岸の浅い海で育つ着花性植物を主食としています。雌は採食場所から産卵場所まで、非常に長い距離を移動します。

産卵場所は広く、太平洋中央部の島々のような、現在では他の種がほとんど産卵を行わなくなってしまったような場所でも産卵しています。アオウミガメの雌は非常に強い産卵場所定着性を表すことがあり、一匹の雌はだいたい3年に一度産卵を行い、一回の繁殖期に2回から5回、1回あたり40個から200個の卵を産みます。卵は孵化するまでに およそ50日から70日かかります。

インドネシアからオーストラリアにかけて点在する島々では、一年間におよそ10万匹のアオウミガメが殺されているとみられています。また、タイやマレーシアなど数カ国では卵がほとんど残らず略奪されてしまっています(マレーシアのサラワク州では、1930年代半ばに220万個生まれていた卵が、1995年には17万5000個にまで減少、今も乱獲が続いています)。また、その他の地域でも疾病による個体数の減少が広がっています。アオウミガメは、世界各地で個体数が減少しており、特にインドネシアでは1940年代と比較すると10分の1に、仏領ポリネシアでも半分以下に減少しています。国際自然保護連合(IUCN)の種の保存委員会(SSC)ウミガメ専門家グループによると、アオウミガメは絶滅危惧種(EN)に指定されています。例えば、マレーシアサバ州タートルアイランド国立公園やアメリカ合衆国フロリダ州のように、断固とした保護活動を推進した結果、生息数が回復した例もありますが、ほんの一握りの例にすぎません。

タイマイ (Eretmochelys imbricata

体長およそ90センチ、体重は平均60キロの重さのある中型のウミガメで、「ホークスビル」という、その英名から連想できるように、肉食の鳥の嘴に似た、細長く先のとがった口をしています。甲羅は色とりどりの複雑な模様に彩られています。重ね合わさった背甲は琥珀色、黄色、茶色のすじや大理石模様がみられますが、工芸品などさらに磨かれた甲羅(鼈甲)ではその模様が特に鮮明になります。全ての熱帯海域に生息し、それ以外の地域で見られることはめったにありません。タイマイは、工芸品などとして取引きされるカメの甲羅(鼈甲)の唯一の供給源となっている種です。

産卵は広域で行われますが、ほかの種と比べると産卵場所は拡散しています。いくつかある主要産卵場所のうち、わずか5つの産卵場所に、年間1000匹以上の雌ガメが上陸します。サンゴ礁付近で一番よくダイバーが見ることのできるウミガメの一種でもあります。タイマイはサンゴ礁近くの砂浜で産卵し、雌ガメは2~3年ごとに卵を産み、1回の産卵につき60個から200個の卵を産みます。また、タイマイは海綿類などを食物とし、ほそい口先を使って、サンゴ礁の岩の裂け目に潜っている無脊椎動物を食べます。タイマイは可動生物と非可動生物の両方を食物としているのです。

タイマイの甲羅(鼈甲)は装身具や装飾品となるため、数世紀に渡り、捕獲の対象とされてきました。過去数十年の間に、東アジア、特に日本において甲羅の取引きが目立っています。国際会議や各国の規制により、いくつかの国々ではこれら鼈甲の取引きを厳しく規制することが求められました。日本は1994年まで鼈甲の主要市場でしたが、2000年にはキューバがドミニカと共に、日本へのタイマイの甲羅の輸出、国際取引の再開をワシントン条約締約国会議で求めました。現在もキューバ、ドミニカ、インドネシア、ソロモン島やフィジーなどでは、国内取引のためにタイマイは捕獲されています。これまでに世界中で起きていた急激な個体数の減少と、今後予想される個体数の減少から、現在タイマイは種の保全委員会のウミガメ専門家グループにより近絶滅種(CR)に指定されています。WWFは、タイマイの甲羅の国際取引の再開に反対しています。

ケンプヒメウミガメ (Lepidochelys kempii

ヒメウミガメ属の2種類のカメは、ウミガメの中でも一番小さく、体長は70cmほどにしかなりません。ケンプヒメウミガメの甲羅はほぼ円形で、腹甲の両側の下部には4つずつ小孔があります。この小孔は大量に産卵する時期に必要となる、フェロモン腺を放出する穴です。

ケンプヒメウミガメはメキシコ湾とアメリカ合衆国の西大西洋岸にのみ生息しています。浅く砂や泥のある海を好み、ルイジアナ州、テキサス州やアラバマ州沿岸の礁湖に生息しています。ですから、ケンプヒメウミガメは岸の近くでよく見ることができます。

ケンプヒメウミガメが、他の種類のウミガメと違う点は、その体の大きさや分布区域だけではありません。その産卵には、ほかのウミガメには見られない、大きな特徴があります。ケンプヒメウミガメの産卵は、目立つ日中に行われ、しかも複数の産卵場所で産卵が行われることはありません。ケンプヒメウミガメはメキシコにある、メキシコ湾に面した20キロにわたるランチョ・ヌエボの砂浜のみで産卵を行うのです。かつては、数万匹の雌ガメがその砂浜に上陸し、集団で産卵を行いました。現地の人々は「到達」という意味でこの集団産卵を「アリバダ」と呼んでいます。しかし今日では、産卵にやってくるカメの個体数は数百匹になってしまいました。雌ガメは1シーズンにおよそ100個の卵を産みます。

ケンプヒメウミガメは肉食の動物ですが、孵ったばかりの仔ガメや年の若いカメが何を食べているのかは、あまり知られていません。成体になると、カメはカニ、エビ、ハマグリやウニを主食とし、体長は72センチほど、重さは35キロから50キロにまで成長します。

1965年にケンプヒメウミガメが保護されるまでは、卵の大量採掘が行われていました。1940年後半には、一日に4万匹以上の産卵個体が砂浜にやって来ていたのが、1980年代後半には1シーズン数百匹まで減少してしまったのです。ランチョ・ヌエボにおいて産卵されたすべての巣を守るため、莫大な保護のための努力が払われ、そして漁業の網による混獲を減らすためのウミガメ除去装置の使用義務化などが行われた結果、このケンプヒメウミガメは個体数が急激に回復を見せています。しかし、これまでの減少の経緯から、種の保全委員会のウミガメ専門家グループは、この種を近絶滅種(CR)としています。

ヒメウミガメ  (Lepidochelys olivacea

別名:タイヘイヨウヒメウミガメ、オリーブヒメウミガメ

ヒメウミガメの外見はケンプヒメウミガメと非常に似ており、背甲の縁がわずかに反り返った、分厚い体型をしています。このウミガメは、体長約72センチ、体重は35キロから50キロの重さに成長します。外見は似ていますが、この2種のヒメウミガメの生息域は全く異なっています。ヒメウミガメはメキシコ湾やフロリダには生息しておらず、アンティル列島、南アメリカの北部沿岸、西アフリカ、インド洋、オーストラリア、そして東南アジアを生息域としています。このように生息域が広範であるにもかかわらず、ヒメウミガメは大陸や大きな島などにある、採食場所と産卵地の間だけで、大群で回遊しているところを観察されるのみです。

主に産卵が行われる砂浜は、中央アメリカのメキシコからコスタリカの太平洋側、北東インド、スリナムなどです。産卵場所の砂浜によっては礁湖(ラグーン)によって本土から切り離されるところもありますが、これらの場所では、数千匹の雌ガメが海から一斉に上陸し、2、3日わたってほぼ同時に産卵します。「アリバダ」と呼ばれるこの集団による産卵は、この種が今日まで生き残ったことから、その数が捕食者を圧倒させ、身を守るために備わった方法だと考えられています。
しかし、多数の産卵が行われる砂浜は10キロ以内と比較的せまいため、次々と上陸する雌ガメの産卵場所は密集し、自分の卵を産もうとする雌ガメによって、すでに産まれた卵を掘り返すこともよくあります。
このような集団の到来は1シーズンに2回から7回あり、それぞれの雌ガメは平均して、約110個の卵を産みます。ヒメウミガメは広範囲にわたる様々な非可動生物から可動生物までを食物としています。

記録されている個体数の減少と、絶えない漁業の網による混獲、そして砂浜の開発などの要因により、ヒメウミガメは種の保全委員会のウミガメ専門家グループにより絶滅危惧種(EN)とされています。

ヒラタウミガメ (Natator depressus

ヒラタウミガメは、縁が上向いたなめらかな背甲を持つ、平たい体型の、区別のしやすい種類のウミガメです。生息域はオーストラリア大陸の北半分の沿岸域から、インドネシアとパプアニューギニアの南に広がる海域でしか見られず、他の種類のウミガメと比べ、狭い範囲に生息しています。ヒラタウミガメは大陸棚の浅い海域からめったに離れることはありません。産卵は、オーストラリア北部の海岸のみで行われますが、沖にある小さな島などが主要な産卵場所となっています。浜にやってくる産卵期の雌ガメは、自然界におけるおそらく唯一の捕食者であるクロコダイルに時々捕食されることもあります。

成長期の初期に何を摂取しているのかは、あまり知られていませんが、胃の中の残物からみてこのヒラタウミガメは、イカやナマコ、そして骨格を持たないサンゴ(ソフトコーラル)など、軟体動物を食物とする、肉食動物だと考えられています。雌ガメは約100センチまで成長し、体重は約90キロほどになります。

ヒラタウミガメは制限された生息範囲からみて、生息域、特に産卵場所を失うことにより、大きな影響を受けやすい種です。しかし、一番の脅威は、ヒラタウミガメが好む水域における多数の漁業船による混獲と考えられています。もっとも、ヒラタウミガメは現地の人々から特に重宝されている動物ではないので、捕獲が目的とされることはありません。これは、この肉食動物のウミガメが、食用としておいしくないと考えられているためです。
一年間の産卵個体数は多くて1万匹ですが、全くと言ってよいほどヒラタウミガメの実態は調査されたことがないので、はっきりした産卵個体数を知るのは不可能です。ヒラタウミガメはウミガメの中で比較的に絶滅の危険が少ない種と見られていますが、まだ不明な点が多く、種の保全委員会のウミガメ専門家グループは、このウミガメを情報不足種(DD)としています。

オサガメ (Dermochelys coriacea

オサガメはウミガメの中で一番大きく、また現代に生きる爬虫類の中でも最大の種の一つでもあります。驚くべきことに、体長は180センチ、体重は500キロという重さにまでなります。しかし、過去に記録された最大のオサガメは、1988年にウェールズの砂浜をさまよっていた巨大な雄のオサガメで、体長は256センチ、体重は916キロもありました。オサガメの特徴は、その驚異的な大きさの他に、革でできたようなうね状に隆起した背甲を持っていることで、他のウミガメに見られるような、尖った鱗板はありません。また、前脚は他のカメと比べて不釣り合いに長く、成体のオサガメでは背甲の長さの半分ほどにもなります。

オサガメはウミガメとしては珍しく、広範な緯度に生息し、成体のオサガメは10℃の水温にも耐えられます。北はアラスカから、南はアフリカ南部の喜望峰で確認されたことがありますが、通常はアメリカ北東部のニューイングランド沖や、フランス西岸のビスケー湾、そしてオーストラリア南東の沖などに生息しています。オサガメは通常外洋に生息し、主に産卵期になると沿岸を訪れます。また数百メートルも潜ることができます。成体のオサガメは、主にクラゲや被嚢動物のように、湧昇流や潮目で集中的に見られる外洋の軟体動物を食物としています。オサガメが海水温度の低い大西洋の北西部などで通常見られる理由は、その場所で時期的にクラゲが集まるためだと考えられています。

オサガメにとって最も重要な産卵地は、メキシコ西部の沿岸やスリナム、仏領ギアナ、マレーシア、インドネシアのイリアンジャヤやスマトラの西部などがあります。雌ガメは1シーズンに4回から5回産卵し、1回につき60から120個の卵を産みます。不思議なことに、一回の産卵数は多い代わり、その多くは、個々の卵が小さく、黄身のない卵も多くあります。これらの卵は、巣のスペースを確保するためのものと考えられています。

オサガメの肉はとても脂っこいため、人間の食用としては好まれていません。世界中に生息するオサガメ減少の原因は、跡を絶たない卵の乱獲や漁業用の網による混獲、そして砂浜の開拓などです。種の保全委員会のウミガメ専門家グループは、このオサガメを最も絶滅のおそれの高い「近絶滅種(CR)」としています。

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脅威と問題

かつて、ケンプヒメウミガメはメキシコ湾で最もよく見られたウミガメでした。しかし、現在では絶滅が危惧されています。この大規模かつ劇的な減少は、一晩で40,000匹の雌が産卵のために上陸したとされる1947年に作成された記録映画『アリバダ』(スペイン語で「到着」の意)を見ても明らかです。もし、その夜に産卵しなかった雌の数が、産卵した雌の2~3倍に達し、しかもほぼ同数の雄が沖から離れた場所にいたと考えると、このウミガメの50年前の個体数は数十万規模だった計算になります。しかし、1985年にランチョ・ヌエボで産卵した雌はわずか200匹でした。それでも、保護活動が開始されてから20数年、ウミガメ除去装置(TEDs=Turtle Excluder Devices)が出来てからほぼ10年が経った現在、産卵のため海岸に戻ってくるケンプヒメウミガメの数は急激に回復しつつあります。

個体数減少の原因としては、どんなものが考えられるのでしょうか? 世界のウミガメの個体数を減少させる、主な人為的要因を以下に列挙してみました。ただし、種類や生息地によっては影響の度合いが異なる場合があります。

世界のウミガメの危機

現在世界に分布しているウミガメは全てIUCNのレッドリスト(絶滅のおそれのある種のレッドリスト)に掲載されています。

和名 学名 IUCNレッドリストの評価
アカウミガメ Caretta caretta (EN) 絶滅危惧種
アオウミガメ Chelonia mydas (EN) 絶滅危惧種
タイマイ Eretmochelys imbricata (CR) 近絶滅種
ケンプヒメウミガメ Lepidochelys kempii (CR) 近絶滅種
ヒメウミガメ Lepidochelys olivacea (EN) 絶滅危惧種
ヒラタウミガメ Natator depressus (DD) 情報不足種
オサガメ Dermochelys coriacea (CR) 近絶滅種

出典:国際自然保護連合(IUCN)種の保存委員会(SSC)ウミガメ専門家グループ
2004年版IUCNレッドリストより。

直接的な消費

ウミガメ類は一般的に美味しい食肉となる動物です。もっとも、オサガメはほとんど食用にされておらず、地域によっては、他のウミガメの肉もまずいとされており(例:メキシコ湾のケンプヒメウミガメ)、毒性があるとさえ言われることがあります(インド大西洋の一部に生息するタイマイ)。ウミガメの食用には長い歴史があります。一匹から食肉が豊富に獲得でき、簡単に捕獲できるという点も重なって、海岸地域に住む人々にとってウミガメは魅力的な食材とされてきました。16世紀後半以降、アオウミガメはカリブ海の植民地では、早くから働く水夫たちやプランテーション所有者にとっての主要な食材となっていました。また、年間に数万匹のウミガメがジャマイカのグランド・ケイマンと西インド諸島の数ケ所で食べられていたと推測されています。ウミガメは空気呼吸をする動物なので、ボートや陸路での輸送にも耐えられ、また短時間であれば囲いに入れて飼育することも出来ます。そのため、ロンドンでは18世紀半ば以降、カリブ海から船で運んだウミガメのスープが作られるようになりました。そしてこの輸出入は、その後、規模がかなり縮小したものの、20世紀まで続きました。

地中海のアオウミガメは、1940年代に産卵期の雌を乱獲したため、ほとんど絶滅してしまいました。同様に、沿岸地域の開発が進み、人口が増え、乱獲に対する文化的な抑制が働かなくなったことに伴い、世界各地にある多くの個体群が大量に消費され、ウミガメは大きな被害を受けました。
ウミガメの卵も親ガメと同様、簡単に採集でき、栄養価の高い食物です。そのため、産卵期に雌が海岸にやってくることは、食生活に喜ばしい変化をもたらす「恒例の贈り物」とされ、伝統的に獲られてきました。また、ウミガメの卵は精力増大に用いられることが多く、違法取引が行われるほど、卵の魅力は大きなものでした。

ウミガメはまた、装飾品利用を目的とした鼈甲や、革製品として利用する皮革を目当てに捕獲されます。最近では、ウミガメの皮を使ったカウボーイ・ブーツがメキシコのティファナで自由に手に入るとか、アメリカ国境でたくさんのブーツが押収されたなどの情報が寄せられています。ウミガメの国際取引はワシントン条約(CITES)によって違法とされているにもかかわらず、光沢のニスが塗られ固定された剥製が、ベトナムやカンボジア、メキシコやカリブ海沿岸地域にある観光客向けの骨董品店で今なお堂々と売られています。

混獲と延縄(はえなわ)漁業

混獲(誤って漁網にかかってしまうこと)は、数知れないウミガメの命を奪う、大きな脅威です。その犠牲になるウミガメは、年間20万匹とも30万匹とも言われます。特にトロール網による被害が大きく、数十年に及ぶ卵や雌の捕獲で減少していたウミガメに、このトロール漁船がさらなる打撃を与えました。これは、とりわけケンプヒメウミガメを減少させた、主因の一つと見られています。なぜなら、このウミガメはメキシコ湾の豊富な小エビ(漁業の対象となる)が集まる海域で食物を摂るからです(後述の「エビ漁業」の項を参照)。
マグロやメカジキの延縄(はえなわ)漁業は、オサガメやアカウミガメを釣り針に引っかけてしまうため、ウミガメの減少と大きな関係があります。ウミガメはこの釣り糸に引っかかり、からめ取られてしまい、水面に浮かび上がることができず、溺れてしまうのです(肢がなくなってしまう場合もあります)。また、ウミガメが釣り針を飲み込んだら、生きたまま逃げることが出来ても確実に死んでしまいます。
この問題は特に深刻です。なぜなら、この2種のウミガメの主食は、沿岸域に高密度で集中する浮遊生物だからです。これらの生物はマグロのような遠海魚(しかも、漁業対象となる魚)の食物でもあるのです。

生息環境の破壊と変化

沿岸域で行われる、ツアーや観光のための防波堤やホテルの建造、そしてマリーナなどのインフラ整備は、世界中でウミガメの産卵場所を破壊してきました。ウミガメの産卵行動は、人の近づかない手つかずのビーチで行われてきましたが、近年では、人工の光による害や騒音によって、理想的な産卵環境がしばしば侵害されています。ウミガメの産卵は、海辺沿いの砂浜で行われますが、家屋や道路の光が生まれたばかりの仔ガメたちを惑わせ、中にはその光に引き寄せられて、海から離れていってしまうものもあります。ウミガメの成体についても、アドリア海沿岸のような交通量の多い地域では、深刻な生理的ストレスが見られていると報告されています。この場合、もう産卵のため陸へ上がってこなくなる可能性もあります。

汚染

アルミニウム、ヒ素、カドミウム、銅、鉄、水銀、セレン、亜鉛などの重金属が、打ち上げられたウミガメの生物組織、特に腎臓や肝臓などに残留していることが分かっています。
これらの金属は、毒性を発揮するレベルの濃度が検出されています。同様に変異を誘発するような物質や発がん性物質も含まれていると見られ、有害性が知られているプラスチック製品に使われているフタル酸エステルも、ウミガメの卵から検出されています。これらの物質およびその他の物質がウミガメの生殖生物学と健康状態、および保全にどのような影響を及ぼすのか、いまだ明確には分かっていませんが、少なくともそれが悪影響であることは確かです。
その他の海洋汚染物質である固形のごみが、ウミガメに及ぼす影響については、はっきりと分かっています。タールの塊やコンドーム、釣り糸、プラスチックバッグやボトルなど、実にさまざまなものが胃の中から発見されます。

これらは、ふつうの栄養摂取に差し障るほど大量に、どの種類のウミガメからも出てきます。時にウミガメは、3m×4mの厚手のビニールシート(アカウミガメから検出)やアメリカのニューヨーク沖でオサガメが飲み込んだ180mの単一フィラメント線など、目を引くものを口にしてしまいます。こうした分解しない物質は海の中に何年も残留し、たとえ直接飲み込まなくてもそれにからまってしまったりします。すると良くても泳ぎの妨げとなり、悪くすると肢をなくしたり、窒息や溺死したりすることがあります(漁業で用いられる流し網のケースなど)。

海のゴミを飲み込んだりからまったりする問題は、特に生まれから数年間(いわゆる「失われた数年間」)の仔ガメにとっては深刻です。この期間、仔ガメたちは外洋の強い海流の中を漂いながら、ホンダワラ類の海藻がある海域と、食物が豊富な潮目の近くに必然的に集まってきます。プラスチックゴミもまた、ここに集まり、食用になるコケムシやフジツボ、藻類がすぐにその上を覆います。また、タールの塊や発泡スチロールのペレットは、海を漂うホンダワラとほぼ同じ形と大きさをしています。これらは、仔ガメがさまざまな物を間違えて飲み込んでしまう原因となっているのです。

疾病

1970年代後半、衰弱性、変形性の腫瘍が多くのウミガメから見つかりました。
これらの異常はそもそも、1930年代にアオウミガメに見られたものでした。ヒトに出来るいぼに似た「フィブロパピロマ」というこの腫瘍の罹患率は、1980年代のフロリダとハワイで劇的に増加しました。全ウミガメの個体数の実に50%以上から、発症が見つかったのです。
フィブロパピロマの流行は新しい現象でした。このウミガメの腫瘍は、かつて何千匹ものウミガメを捕獲し、観察していたハワイのウミガメ漁師たちの言によると、1950年代以前は、事実上存在しなかったと見られています。一般に腫瘍がよく見られるのはアオウミガメですが、アカウミガメ、ヒメウミガメ、ヒラタウミガメ、オサガメでも見つかりました。場所によっては罹患率が92%にも上り、水循環が比較的抑制されたような、海辺近くの浅瀬に多いと見られています。そして、海生生物のすみかは、全てではないにせよ、その多くは、人間が多く住む地上排水の近くにあるのです。

悪性腫瘍によって目が見えなくなったり、食べることが出来なくなったりするウミガメもいます。肺や肝臓、腎臓や消化管など体内で発症した腫瘍は、浮揚能力や内臓、腎臓に障害をきたし、転移した細胞組織の壊死に拍車をかけます。
一般的な病状は、急激な衰弱が起こり、動きが緩慢になり、また視界も狭まります。あまり時間が経たずに死んでしまう場合も多いようです。1983年以降、31~54%のハワイのアオウミガメがフィブロパピロマにかかっていることが分かっています。近年、腫瘍の発生が抑えられつつあるという報告はありますが、発症してしまったウミガメのその後は良いとは言えません。状況証拠からは汚染物質が原因であると推測できますが、今のところ、汚染されたウミガメからは、汚染物質の異常濃度を検出できていません。病気は様々な要因の複合した結果であると言えるでしょう。また、汚染によるストレスで苦しむウミガメは、比較的害のない病原菌にさえも感染してしまいます。

エビ漁業

近づいてくる漁網から逃げようと泳ぎ回るうちに、ウミガメたちはやがて疲れて網にかかってしまいます。
この問題を何年にも渡って研究してきたアメリカ国際海洋漁業サービス(US National Marine Fishers Services)は、ウミガメ除去装置(TEDs=Turtle Excluder Devices)を漁師たちが仕事に使える形で開発しました。除去装置は、大きなメッシュタイプの網もしくは金属製のマス目をはめ込んだパネルで、漏斗型のエビ釣り網にバリアとして差し込みます。漁船が底引き網を引くと、エビや海の小さな生き物が除去装置のマス目を通り抜け、獲物が集められる漏斗のお尻に付けられた小さな袋に入る仕組みです。つまり、ウミガメやサメ、魚などは、パネルを通過するには大きすぎて、除去装置の避難ハッチから出ていくわけです。こうして、混獲は97%も減らすことができました。
除去装置がなければ、網にかかったウミガメは水中で引き回され、時には溺死したり、死に至るような生理的悪影響を被ることになります。除去装置の使用の義務づける以前、アメリカでは、毎年何万匹ものウミガメがエビ釣り網にかかって溺れ死んでいました。

エビ漁に携わる漁師は何百万ドルもの設備投資と漁獲量の減少が、エビ漁業業界に打撃を与えることを警戒していますが、除去装置はアメリカをはじめ、各地で効果が確認されています。この除去装置は、ウミガメ以外にも、時にはエビの10倍の量も混獲されてしまう他の生き物をも、ふるいにかけて効率的にエビを漁獲できるため、燃費の面でも役立っています(エビは他の生物に押しつぶされたりしない)。ですが、アメリカ政府の定めた除去装置の義務付けは、漁業史上で最も厳しい規則となりました。
メキシコと13の南米各国もこの義務づけに従っていますが、その主な理由は、1989年にアメリカ国務省の法律が、商業用のエビ漁について、ウミガメ保護のための適切な措置を講じていない国からのエビ輸入を禁じたからです。1988年に、5億6000万ドル相当の150,500トンのエビがアメリカ領海内で水揚げされました。同年に消費された残りのエビ365,500トンは、主にインドやインドネシア、メキシコ、マレーシア、韓国、日本など、ウミガメがいまだに危機にさらされている国々から輸入されたものです。
除去装置を利用することの利点があるにもかかわらず、その導入には反対している国もあります。アジア4カ国(タイ、インド、マレーシア、パキスタン)は1997年に、十分なウミガメ保護措置を講じていない国からのエビ輸入を禁じたアメリカの決定を非難し、WTOのルールに関する機関、WTO調停委員会へ提訴しました。WTOには環境保護を目的とする場合、自由貿易の規則を保留する権限がありますが、委員会はGATT(関税と貿易に関する一般協定)を含めた、関連する国際的な環境保全に対する協定を無視し、アメリカの規制は違法だとしました。アメリカが控訴すると、後にWTOは環境保全を目的とした貿易規制のポテンシャルを評価しましたが、今でも自由貿易の観点から、アメリカの採った行為は違法だとする意見もあります。
WWFは、WTOが、その憲章前文で謳われた、「環境に配慮し、持続可能な開発を支える貿易を振興する」という権限を遂行していないと考えています。

乱獲

自然条件下のウミガメは、孵化直後の仔ガメ、そして幼体期の死亡率が高い動物です。しかし、幼年期を生き延び、遅い性的な成熟期を迎えたウミガメの死亡率は、非常に低く、長生きします。
残念なことに近年の状況は「自然」な状態からほど遠く、ウミガメは生涯を通じて死の危険にさらされており、その結果、一層急激な、個体数の減少にさらされています。コロンブスの時代には、カリブ海は「アオウミガメに埋め尽くされ、サイズは大変大きく船が座礁してしまうかのような多さ」と描写されるほどでした。こんな光景は現在はほとんど見ることが出来ません。メキシコの太平洋湾岸に卵を産みに来る雌のアカウミガメの数はここ十年のうちに10分の1に減ってしまいました。オーストラリア東部の場合は1970年代半ば以降、その個体数が50~80%も減少しました。ケンプヒメウミガメは絶滅寸前にまで激減、リストはさらに続いていて、読むと憂鬱になってしまいます。
ウミガメ減少の原因は多種多様ですが、生態上の2つの特徴に起因した、下記のようなストレスが特に繊細なウミガメを脅かす要因と見られています。

一つは、ウミガメの集団に痛手を与える、卵の乱獲や巣の破壊などによる「根底の破壊」。たとえば、分かっている限りでも、アオウミガメは性的に成熟するのに30年から50年かかり、繁殖はそれから約20年の間しかできません。
目に見えるウミガメ総数は成体のウミガメの全てと言っても良いでしょう。この数は、幼体および亜成体が徐々に成長してゆく間、維持され、種を存続させるものです。ですからもしも、卵が一つも生まれなくなったとしても、また、卵がすべて取られてしまったとしても、成体の個体数はしばらくは維持されていくでしょう。成体のウミガメの個体数が減るには何十年もかかるからです。

しかしそのままでは、新しい命が生まれるまでの間に、幼体および亜成体の個体の蓄積は、だんだんとなくなっていくことになります。 理論上、「完全に成熟した個体」は、20年間は生き延びるため、状況がさほど深刻ではないと思わせがちです。ですが、実際には、これらの成体のカメが死んでしまった後、それに代わる孵化個体や幼体、亜成体がいないため、種としては絶滅の危機に瀕することになるのです。もし幼体および亜成体のウミガメが、たとえば混獲などで死んでしまうと、より早く、その状況が訪れる可能性があります。

ウミガメ保護のための国際的取り決め

ウミガメ製品の国際取引は、かつてウミガメ個体数を減少させる主な要因でした。現在、ウミガメは全種、ワシントン条約の附属書Iのリストに掲載されており、条約の締約国間における取引は減りましたが、ワシントン条約の対象外である国内市場向けの違法取引・違法捕獲は今なお懸念されており、地域社会における消費も続いています。

ウミガメ類はそのほとんどが、「移動性野生動物種の保全に関する条約」(ボン条約:CMS)の対象となっています。CMSの文言は、回遊性の海生生物やその生息地を地域レベルで保全するための基本的な概念を多く含んでいます。ヒラタウミガメを除くすべてのウミガメは、ボン条約の附属書IおよびIIの双方に記載されています。また、「ウミガメの保護と保全に関する米州会議(IAC)」は、ウミガメおよびその生息地の保全のための基準を定めた、唯一の主要な国際協定です。IACはウミガメが海洋を移動する、多くの国の人々が共有する財産であると認識しています。ですからIACは、ウミガメ生態研究家や保護活動家の国際グループメンバー、特にラテンアメリカの専門家たちから盛んな支持を受けています。発効するためには8カ国が協定に批准しなければなりませんが、現在では12カ国が署名し6カ国が批准しています。協定は2000年の発効を目指しています。

IACが提言した政策は、地域の管理計画や取り決めを進展させるものです。IACが規定した目的は「締約国の環境・社会経済・文化などの特徴を考慮に入れ、信頼できる最も有効な科学的証拠に基づいた、ウミガメの個体数と生息地をより一層守り、保護し、回復させていくため」であるとしています。同様に、『特別保護地域・特別保護動物(SPAW)にかかわるプロトコル』や『カリブ海広域の海洋環境の保護と開発に関する会議』(別名『カルタへナ会議』)は、IACを補完するものです。カリブ海のウミガメ6種はすべて、『SPAWプロトコル』の附属書IIのリストに掲載されています。

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WWFのウミガメ保護活動

WWFは、1961年に創立されて以来、世界中の数多くのウミガメの保護活動を支援してきました。初期の活動の多くは、40カ国以上に渡る国々での調査活動で、その中には産卵場所である海岸を確認することも含まれています。他の活動としては、卵の保全とその孵化、保護地域の設立、ウミガメの生物学、環境学などの研究に重点をおいていました。また、ウミガメ製品の売買を監視する一方、漁業による脅威の調査を行い、ウミガメ保護の国際会議とワークショップ開催のための資金支援を行いました。

また、WWFは後にIUCNウミガメ専門家グループの設立を支援しました。1969年にその最初の集会が開催された時、ウミガメ専門家グループは「大型のウミガメにとって、現在の世界の状況は非常に深刻である」という宣言を発表。20世紀におけるウミガメの減少は、大きな問題であるとして、以後グループのメンバーたちは、様々な手段の保護、より世間の認識を高めるキャンペーン、ウミガメの保護に向けた国際協力などを要求する取り組みを始めます。WWFは1970年代に、南アフリカ、オーストラリア、ラテン・アメリカなどの沿岸域で、調査機関を設ける活動を開始しました。1979年、WWFはウミガメ保護に関する最初の会議の開催を支援し、137の緊急企画のを発動を助けました。そして、1980年代は、WWFにとって「ウミガメの年」となりました。

過去30年間、生物学者たちは成体と仔ガメに標識(タグ)をつけたり、最近は人工衛星技術を使うなどして調査を行ってきました。そして、これらの研究から、ウミガメの保護には地域ごとのアプローチが必要であることが明らかにされてきました。ウミガメは広い行動圏を持つ動物ですが、それゆえに、多くのウミガメが生息域のあちこちで、さまざまな脅威にさらされています。その中には、故意にしかけられた罠による被害や、漁網に運悪くひっかかってしまうといった事例なども含まれています。WWFはウミガメ保護のための国際支援を続けながら、地中海、インド太平洋、東太平洋、カリブ海などの地域に焦点を当てた保全の取り組みに力を入れています。1999年には、WWFはIUCNウミガメ専門家グループが用意した報告書『ウミガメ保護のための研究と管理技術』の出版に際して、共同出資者にもなりました。

ウミガメ製品取引の監視

現在、多くの国々がウミガメの捕獲と卵の採取を規制する国内法を持っていますが、その多くは、ワシントン条約(CITES)の加盟国です。しかし、いくつかの国では、数種のウミガメが危機に瀕していること、あるいは脅かされていることを認識していません。例えば、インドネシアでは、アオウミガメが危機に瀕しているとは考えられておらず、その多くが食肉として利用されています。熱帯や亜熱帯の国々でも、ウミガメの卵の採取は許可制で、法律上は採取がコントロールされていることになっていますが、この許可はしばしば濫用されています。1996年、メキシコのオアハカの海岸では、50万個ものヒメウミガメの卵が、違法に採取されました。

WWFと国際自然保護連合(IUCN)の野生生物取引監視機関であるトラフィック(TRAFFIC)は、違法な国際取引が、どの程度行われているかについての報告をまとめ、国際条約違反に対する各国政府の管轄機関に注意を喚起する活動を行っています。今もこれらの違法行為は広がりつつあると見られ、いまだに、鼈甲、皮のブーツ,ウミガメの剥製、肉や卵の隠れた取引が実際に行われています。例えば、1990年から1995年の間に、EUの税関の職員が、インドネシアから持ち込まれた違法なウミガメの甲羅を多数押収しています。また、1998年9月には、日本の警察官が66kgの鼈甲を国内へ密輸入しようとした5人を逮捕しました。アメリカでも最近、フロリダやニューヨーク、カリフォルニアの国際空港で、ウミガメの肉や卵を手荷物の中に入れ、密輸しようとした人が、多数逮捕されています。これらの輸入が禁じられたウミガメの肉や卵は、エスニック・レストランへ流通し、そこで珍味として高値で売られています。ウミガメの卵の取引が増加の傾向にあるとみられるため、トラフィックはより効果的な保護・管理の実施を求め、ウミガメの危機に関する情報の収集と、普及活動を強化しています。

トラフィックはまた、各国政府と共同で、多くの合法な国内取引であっても、それがウミガメの脅威となっている場合は、種の保護の観点から改善するための取り組みを行っています。例えばベトナムでは、非常に多くのタイマイが、食用や薬用のため合法的に漁獲されていますが、その上に、海辺の生息場所が開発によって脅かされています。ベトナムを訪れる観光客の数は確実に増加していますが、タイマイの剥製や鼈甲の製品が、地元の市場で売り出されている例も、しばしば見受けられます。そして、観光客の多くは、そのような品物を自分の国へ持ちかえることが、違法であることを知らないのです。

1993年から1994年に、トラフィックが行った、商業取引によるタイマイの個体数への影響についての研究では、この商業取引が、他のさまざまな脅威にさらされているベトナムのタイマイを減少させる、一つの要因となっていることが明らかにされました。この研究の結果、トラフィックは、商業を目的としたタイマイの捕獲の禁止を求める勧告を、ベトナム政府に対して行うことができたのです。
また、トラフィックは、北アメリカ、バハマ諸島、キューバ、ドミニカ共和国、ハイチ、ジャマイカ、メキシコ、プエルトリコ、タークス・カイコス諸島、英領バージン諸島および米領バージン諸島での、漁業とウミガメの一時的商業取引の法的な分析、さらに取引の再検証を実施しています。

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ウミガメ保護活動史

地中海

産卵場所の保全

地中海のアオウミガメとアカウミガメは、ギリシャ、トルコ、キプロスに最大級の個体群が確認されており、その生息地域は地中海東部に位置しています。地中海はオマーンとアメリカに次いで、三番目に大きなアカウミガメの生息地であると考えられています。WWFとIUCNは、1978年にトルコのエーゲ海と地中海の海岸沿いにある生息地の調査を手始めに、より多くの人たちにウミガメのことを知ってもらうキャンペーンと、標識をつけるプログラムを始めました。1987年、トルコのWWFの協力団体であったトルコ自然保護協会(DHKD:後のWWFトルコ)は、ダリアン-コイセギッツ地域を、地中海におけるアカウミガメの最も重要な生息地として、保護キャンペーンを行い、ここで計画されていた大規模な観光開発を止めることに成功しました。この結果、ホテル計画は取り潰され、ダリアン地域はは保護区となったのです。1988年、トルコの地中海沿岸全域を調査した結果、17カ所のウミガメにとって重要な海岸が確認されました。これらの海岸はさまざまな脅威にさらされており、そのうちの40%に相当する606キロの海岸線は、観光によってひどく荒らされていました。さらに、残り約半分のウミガメの営巣地となっている海岸も砂の浸食により破壊が進んでいました。DHKDはこれらの現場で数々の保護活動を行い、政府に保護規約を制定させ、保護区の設定を強く求める活動を展開。これらの努力によって、トルコではウミガメが自然保護運動のシンボルとなりました。
アカウミガメの営巣密度は、ギリシャのザキントス島の営巣地が、世界で最も高いものの一つと見られています。一つの要因としては、ここにアカギツネのような捕食者がおらず、他の動物に食べられてしまう可能性が低いことが挙げられます。 ザキントス島におけるウミガメの中心的な生息地はセカニア海岸で、1平方キロメートルあたりのウミガメの密度は、時に3000頭にも達します。1981年にWWFはギリシア政府と共に、海岸線の地図を使いながら、ザキントス島のウミガメの長期的な調査に取り組みました。当初、ウミガメの保護は開発の利益に反するものとして憎悪の念で迎えられましたが、1986年に始まったギリシア・ウミガメ保護協会の広報活動のおかげで、ザキントスのウミガメは、今や島の観光の大きな目玉となっています。ギリシア・ウミガメ保護協会は、WWFの支援のもと、ウミガメの調査を続けながら、観光客への普及活動と学校での教育活動に取り組んでいます。
カベス湾では、海底に広がる海草の藻場がアオウミガメの主要な生育場所となっている事が早くから知られていましたが、1980年の後半まで、この北アフリカ沿岸におけるウミガメの研究は、ほとんど行なわれてきませんでした。カベス湾では年間およそ3000頭ものウミガメが殺され、チュニジア全体では6000頭にのぼる個体が殺されていたと見られています。1989年から1993年まで、WWFは北アフリカ海岸のウミガメの産卵場所、採食場所、越冬地となっている地域の多くを明確にする研究を支援しました。モロッコやアルジェリアの沿岸でも、同様の活動は行われましたが、研究はチュニジアの海岸に集中しました。
研究チームは更に、1995年から1998年まで、リビアの海岸線を調査し、特に北部の海岸沿いにそれまで知られていなかった、相当な数のアカウミガメの産卵場所を発見しました。これらのいわば「知られざる」ウミガメの個体群の存在は、何年もの間、エジプトでの漁が、成体のウミガメを数多く殺してきたにもかかわらず、地中海のウミガメ個体群を絶滅に追い込むことが出来なかった事実を物語るものです。

漁業の脅威

1977年、WWFは、地中海の中部および西部において、成体と亜成長のウミガメにどのような脅威が迫っているかを調べ、保護のための作戦を立案しました。スペインの港で行われた漁師の調査では、沿岸漁による最も重大な脅威は、事故による混獲である事が確認されました。後の調査では主として、延縄漁で犠牲になるアカウミガメは、毎年16000頭に及ぶと見積もられています。網で捕まった後、ウミガメは逃がされますが、大半は溺れてしまいます。そして、生きたまま放されたとしても、たいていのウミガメの、口の中には釣り針が残っているのです。1987年から1990年まで、WWFは延縄漁の影響と釣り針が口に入ったカメの生存率についての研究を行いました。
1994年、WWFは、全地中海のウミガメ、特にアカウミガメ保護のための取り組みを始めました。この活動の主な目的は、海での成体のウミガメの死亡率を下げることです。研究は生物学者のルーク・ローレン博士によって、ウミガメの種と個体数についての研究と同時に、生息地現場での調査が行われました。博士の最終レポート「地中海アカウミガメの個体数の保護と管理」は1997年に刊行されました。ローレン博士の調査によると、ウミガメに対する極めて大きな脅威が明らかにされています。毎年エジプトで行われる漁によって、ウミガメが数千頭殺されており、続いてトルコ、チュニジア、イタリアの漁船によって、数は下回るもののやはりウミガメが犠牲になっています。博士は、2万頭以上のウミガメがスペインの沿岸域で混獲に遭い、その内の4000頭が結果として死んでいると推定しています。また、相当な数の個体がトルコ、ギリシャ、エジプトのトロール漁によって死んでいたと考えられます。エジプトではウミガメの肉は食肉としていまだに取り引きされており、その血は貧血の伝統的な薬として時折飲まれています。エジプトで殺されている全てのウミガメのうち、3頭に1頭は、地中海で絶滅の危機にさらされているアオウミガメです。

インド-太平洋

1960年代から1970年代に、WWFは、オーストラリア、タイ、マレ-シア、西インドネシアでウミガメの研究を始めました。

オーストラリア

オーストラリア国立大学のロバート・バスタード博士は、クイーンズランドの沿岸と、沖合にある島々で調査を行いました。博士はヒラタウミガメの産卵場所がアボリジニ保護区の中の誰も住んでいない安全な場所にあることを発見。同時に、ロングアイランドのトレス海峡で、これまで記録の無かったタイマイの繁殖を、オーストラリアで初めて確認しました。この調査の結果、クイーンランド州政府は、ウミガメの産卵地として重要な海岸を守る国立公園を設立しました。

タイ

タイでは、1970年代まで、ウミガメの状況は大変深刻でした。卵は商売のために獲られていましたが、収穫は激減しており、採取を制限する規制も無視されていました。より一層大きな脅威となっていたのは、ドリフトネット式の漁船の増加で、この漁法によってたくさんの成体のウミガメが死ぬことになりました。1980年、WWFは、タイ南西部の海岸にある50あまりの島からなる、タルタオ国立公園の中に設置されている公園支部に、産卵場所での密漁者の取り締まりと、ウミガメの現状を調査するために必要な船を提供しました。また、1987年には、タイ南部でウミガメの営巣地の保護を開始しました。1990年から1996年までWWFは、プーケットとパンガーで「理想的な自給自足のウミガメ保護の村」を作った村人を支援しました。しかし依然、観光と卵の採取、そして漁網による事故死は、タイ沿岸域のウミガメの生存を脅かしています。

マレーシア

マレーシアでは、WWFはマレー半島トレンガヌ沿岸でオサガメの保護活動を行いました。トレンガヌはマレーシア西部でオサガメが産卵を行うを作る唯一の場所です。1970年代まで、ここは仏領ギニアに次いで世界でおそらく二番目に大きなオサガメの産卵場でした。しかし、年々危機的な状況は深刻になりました。トレンガヌの成体のウミガメは、遠く離れたフィリピンや日本においても漁業者に捕獲されてしまうため、死亡率が高くなっていました。マレーシア政府に対し、トレンガヌ沿海に浮かぶパラオ・レダン島と、その周辺の島にある産卵場所として重要な海岸を、海洋国立公園を設立して保護するよう要請を行ったのは1977年のことでした。オサガメの卵の販売と消費は1988年以来禁止とされています。
1989年、WWFはウミガメ保護区を設立するため、マレーシア連邦水産局を支援するアドバイザーのための基金を設けました。アドバイザーであるジャニー・モーティマー博士はマレー半島、サバ、サラワクでウミガメの重要な生育地の調査を行い、トレンガヌをはじめとする多くの産卵場所にオサガメのサンクチュアリーを設け、保護管理を行うトレーニングコースを作り、そしてウミガメの死因を調査しました。しかし、政府とWWFの努力にもかかわらず、トレンガヌの産卵場所は大幅に減少してしまいました。トレンガヌでは過去十年間にヒメウミガメの個体数が激減。プトラ大学ウミガメ研究部によると、その間にタイマイも産卵する残存個体数が大幅に少なくなったといいます。

インドネシア

1960年代にウミガメの卵の採取はインドネシアでは(少なくともジャワでは)減りました。 ウミガメ専門家グループは、ウミガメの甲羅の日本への輸出規模に対して深刻な懸念を表明しました。1966年 から1972年にかけて76,636キロの甲羅がインドネシアから輸出されましたが、これは15万頭の成体のウミガメの甲羅に相当する量です。同時に剥製のウミガメ、油、肉、皮などの販売もありました。法律によって守られているオーストラリアの海域を除くと、全インド-太平洋地域において、漁業によるウミガメへの圧力が増加していることは、間違いなく、大きな脅威となっています。
1979年にWWFは、インドネシアのイリアンジャヤの南にある、離島のアル島で、オサガメと、アオウミガメの肉と卵を食料として漁を行っている地域社会の調査を支援しました。 しかしながら、そこでは実際にはタイマイの取引が行われており、乱獲によってウミガメの頭数は減っていたのです。この後、島の南側に10万ヘクタールの海洋保護区を作る提案がなされました。また1984年には、ウミガメの取引に関する研究がバリ、ウジュンパンダン、スラバヤ、ジェパラで行なわれました。
WWFは、イリアンジャヤにおける保護区のネットワーク作りを目的としたより大きなプログラムの一環として、ウミガメの産卵場所として重要な幾つかの海岸を明らかにしました。またWWFは、テルク・センデラワシ国立公園でウミガメの保護活動にも参画しました。

インドネシア・バリ島でのウミガメ保護活動
WWFバリ島ウミガメ保護プログラム ケトゥ・サルジャナ・プトラ

1970年代から、バリ島のアオウミガメ消費は、世界一でした。ウミガメの肉は、特にバダンや南デンパサーといった地域では、宗教的な目的や、伝統的儀式として使われており、これらの慣習は何世代にもわたって引き継がれてきています。

しかし、この伝統的なウミガメの利用に、変化が起こり始めました。過去十数年の間に、適切で持続可能な利用の範囲内にあった、儀式や宗教を目的としたウミガメの利用が、大規模な商業目的の漁獲へと拡大してきたのです。ウミガメの個体群を自然環境の中で保護してゆくことの必要性は、もっぱら無視され続けてきました。その結果として、インドネシアや近隣の沿岸域に現れる雌のウミガメの数は著しく低下しており、近年は、顕著な減少が起きています。

WWFは、バリ島の自然資源保護団体や、地方自治体と共に、これらの問題について、いくつかの方法で取り組んでいます。まず重要なのは、デンパサー近郊のタンジュン・ベノアや、島の東部にあるパダンバイのような、いくつか主要な港を通じてバリ島に入って来るウミガメの数を記録し続けることです。また、これらの港に食肉として運ばれてくるタイマイやアオウミガメの記録を頻繁に行うことも欠かせません。これらの記録された情報には、捕獲されたウミガメのサイズの解析も含まれています。

2つ目に大事な点は、ウミガメの肉を食べる人や、バリ島の外からやってくるウミガメ取引業者、国内外の観光客に対する、教育と普及のプログラムを発展させ、実施することです。その目的は、現在の人数割り当て制による、バリ島内での年間ウミガメ肉消費量を減らすこと。1990年にバリ島政府が発表した人数割り当て制度では、年間5000頭となっていますが、ウミガメ個体群の保護管理の為には、年間消費量を3000頭に抑える、というインドネシア政府の指針規定内の方が、効果をもたらすと考えられています。

WWFの教育や普及プログラムでは、ウミガメの個体数、生態学的知識や、保護のための法律に焦点が置かれています。地元の自然保護団体と共に、WWFは2つの連携したプログラムを通してウミガメの取引を監視し、またバリ島の宗教や伝統、市町村の長を通し、ウミガメ肉の愛好者や若い人々に、アオウミガメが陥っている危機的状況を、教育する取り組みを始めています。バリ島東海岸にあるプランカク村では、地元の宗教的なリーダーたちが、この普及キャンペーンに参加し、学校の子供たちはウミガメの産卵場所を守るレンジャー(監視員)になっています。以前は、ウミガメを捕獲していた人々の多くが、今ではウミガメ保護のために活動し、若者たちはKelompok Pecinta Penyu Baliのようなウミガメ保護活動の主戦力になるような、独自の団体も設立しています。このプログラムでは、最終的には、彼らがウミガメを捕獲せず、代わりの収入源手に入れることを、目指してゆくことになります。

ソロモン諸島

何年も前の話ですが、アルナヴォン諸島では、ウミガメ漁をめぐる漁師のグループ同士の間に激しい争いが起き、そのために、たくさんの命が失われました。このため、海岸には幽霊が出る、という言い伝えが残ったほどです。1970 年代まで、このアルナヴォン諸島は、南太平洋で最大のタイマイの個体群が見られる場所でした。しかし、モーターボートの普及により交通の便が良くなったため、タイマイの危機は、次第に深刻になりました。1979年から1981年まで、WWFは、伝統的かつ持続的な方法でウミガメを資源として利用するため、ウミガメの調査を行いました。まず取り組んだ重要な課題は、アルナヴォン諸島のウミガメ保護区(1930年に設立)の保護を強化し、現地の保護官をトレーニングすることで、卵の孵化の成功率を高めることです。このプロジェクトでは、地域の人々が生きるために必要なオサガメを、伝統的かつ持続可能な方法で漁獲し、食べることを許可する一方、他の種類のウミガメ肉の販売を規制しました。そして、甲羅の商業的な輸出を全面禁止にすることで、ウミガメの乱獲も規制されています。

フィリピン

1993年、WWFはウミガメ保護のためのASEAN地域シンポジウムの開催に出資しました。アジア太平洋全域から専門家を召集し、地域のウミガメ保護プログラムをアジア太平洋地域で展開するためです。ここでなされた提案の中には、ウミガメの個体群を保護するため、国境を越えた保護区を設定することも含まれていました。ここで対象とされた地域は、地域最大のアオウミガメ繁殖地があるベラウ諸島を含む、タートル諸島、シパダン諸島など、フィリピンからボルネオのサバにかけての海域です。WWFは、 フィリピン、マレーシア、インドネシアから集まった代表の集会に参加し、これらの島々での保護戦略について共に検討しました。タートル諸島が保護区に指定されたのは、1996年のことです。

インド洋

1969年から1974年にかけて、WWFはインド洋の南西部で行われた大規模なウミガメの調査活動を支援ました。この調査の結果により、パラダイス諸島、モザンビーク、レユニオン周辺の4つの島に、5つの海洋保護区が新設され、4つの保護地域を追加する提案が行われました。また、WWFは、トンガランド沿岸(現在のクワ・ズールー・ナタル)でのウミガメ保護活動を、30年にわたり支援しています。
WWFは、この他のインド洋地域では、インドとその沖のアンダマン諸島およびニコバル諸島で、ウミガメが産卵する海岸の調査を支援しました。また、パキスタンでも産卵場所となっている海岸の保全活動を支援したり、セーシェルのコウシン島とアルダブラ環礁でも活動を行いました。1980年代には、セーシェルでタイマイとアオウミガメのフィールド調査を支援し、セーシェル政府が保護のための多くの手段を講じるよう促しました。
オマーンの海岸での調査活動が始まったのは、1977年。オマーン南部のマシーラ島では、3万頭以上のアカウミガメ(アカウミガメ個体群としては世界最大)を確認しました。このアカウミガメの主な脅威は、産卵場所である海岸にあまりに多くの個体が集まり、巣があふれかえってしまうこと、そして、海岸近くの人為的な光が、卵から孵化した仔ガメを、海とは違う方向へと導いてしまうことです。マシーラ海峡とサウキラ湾に面した浅い海は、アオウミガメの主な採食場であり、アル・ハッドとマシーラは大きなアオウミガメ個体群の産卵場となっています。マシーラ島のアオウミガメとその卵は以前から島民の蛋白源として利用されてきましたが、その数は減少しており、オマーン政府も保護の必要性を認識しています。また、現地の人々によって集められたデータは、ウミガメの産卵の季節や、地域でどれくらい卵の採集が行われているか、そしてウミガメの個体数などを推定するのに役立っています。
1995年、WWFは、インド洋西部のウミガメ保護戦略を起案しました。これは、地域的または国際的な立場でウミガメの保護に関わっている期間や組織を結びつけ、IUCNの種の保存委員会によるウミガメ保護アクションプランに繋げることを目的としたものです。

インド ~世界最大のヒメウミガメ繁殖地
WWFインド S.M.サティーシャン博士

長年にわたり、インドのガヒルマタの海岸にヒメウミガメが現れることは、カニカ・ラジの人々の間では、よく知られていました。人々はウミガメの産卵シーズンに船一艘分の卵を採集することで、特定の収入を得ていたのです。ビタルカニカにウミガメの繁殖地があるというニュースは、1970年代にこの地域を訪れた当時のFAO(国連食糧農業機関)コンサルタントのH.R.バスタード博士により学界に公表されました。そして、博士はおびただしい数のヒメウミガメが、産卵場所を求めてオリサ北部へ移動すると推定し、政府にウミガメとその産卵場所を保全するよう訴えました。

バスタード博士の発表によれば、毎年ガヒルマタを訪れるヒメウミガメは、約100万頭(雄、雌同比率)、産み落とされる卵は5000万個にのぼります。1975年、インド政府はビタルカニカ野生生物保護区(BWS)を設立し、重要なウミガメの繁殖地と、マングローブを保全することを宣言しました。しかし、その後、インドで2番目に大きいマングローブ生態系である、このオリッサ州のマングローブは、徐々にエビの養殖業に脅かされ、減少していきました。全部で115.5平方キロのビタルカニカでも、30平方キロ以上のマングローブがすでに破壊され、残りの森も、オリサの沿岸を覆う、2万ヘクタール、6500ヶ所以上ものエビの養殖池によって占有され、危機に瀕しています。

1994年、WWFインドは、ビタルカニカ保護区における、ウミガメとマングローブの危機に対し、オリッサ最高裁判所に訴えを起こしました。その内容は、次のようなものです。

  1. ビタルカニカ野生生物保護区および周辺地域で、オリサ州が行っている、防波堤、漁業施設、道路、橋などの建設を制限すること

  2. オリサ州政府は、保護区内とその周辺地域のマングローブや、絶滅に瀕している野生生物を守り、そのための設備や人員を配備するよう指導すること

  3. 保護区内とその周辺地域で環境アセスメントを実施するための委員会を発足させること

この件について、オリッサ最高裁判所は、1998年5月14日に判決を下しました。

  1. ガヒルマタ地域へのトロール船の出入りを禁止すること

  2. ビタルカニカ野生生物保護区内の森林に、許可なしで入った者は直ちに立ち退くこと

  3. ビタルカニカ野生生物保護区内の河川や水系を含む、全ての森林地帯は保護下にあるものとし、森林庁の所有とすること

  4. 保護区域内では森林や水資源の新規のリースは認めないこと

  5. 保護区内での養殖業の禁止

  6. 保護区内に住む人々の生活水準を向上させるため、自然資源を有効に使用すること

  7. この地域で漁業を営むトロール船は、必ずウミガメ除去装置(TED)を備え付けなければならないこと

さらに、最高裁判所は州政府に対し、ウミガメの保護や調査をするための最高レベルの委員会を設けるように言い渡しました。1997年、オリサ州政府は問題となっていた地域をガヒルマタ(海洋)野生生物保護区としました。この取り決めによると、それまで行われてきた行為の一部は、1972年の野生生物保護法の下では違法となります。そして最後に、オリッサ最高裁での判決は、ビタルカニカ野生生物保護区に一部道路をつくることを例外として、保護区内での開発を禁じたのでした。この道路もまた、悪影響を最小限に留めるよう、計画を変更されました。

しかしそれでも、ウミガメの危機が去ったわけではありません、1999年、西ベンガルの森林省は、1万3000頭のヒメウミガメが、トロール船によって命を奪われたと報告しました。

中央アメリカ

カリブ海と大西洋西部

WWFが南米のスリナムでウミガメの保護を開始したのは、1967年のことでした。その活動は、現在も続けられています。1970年代に、ウミガメ研究協会(Chelonian Research Institute)のディレクターであり、ウミガメを専門とする生物学者のペーター・プリチャード博士が、スリナムと仏領ギアナの沿岸を調査した結果、この地域が世界で最も重要なオサガメの繁殖地だということが確認されました。
スリナムの自然保護団体、STINASU(Suriname's Foundation for Nature Preservation)は、ブラジル沖に生息し、スリナムで繁殖活動を行う、特異なアオウミガメの個体数を調査するため、WWFに支援を要請。1980年に「ヘッドスタート作戦」が始まったのでした。
また、ブラジルでは同年、森林開発機構(IBDF)によりTAMAR (Tartaruga Marinha)プロジェクトが発足し、地域の自然保護団体や政府機関がこの活動の実践にあたりました。1986年、WWFはこれらの取り組みに対する支援を開始し、密漁の抑制と、ウミガメの危機的状況を一般の人々にもっと理解してもらう活動を推進。かつてはウミガメの卵の密漁者であった人々を、浜辺の管理人として雇うという革新的な試みも行われました。1992年には、約1000キロメートルにわたる浜辺の産卵場所は、プロジェクト・スタッフの監視下に置かれることになりました。そして10箇所中、4箇所の重要な地域が保護地域として指定されました。このプロジェクトは、ウミガメのライフサイクルの、あらゆる時期と場面を保護対象とした活動であり、地域の人々を交えた、公共福祉活動や教育を取り入れた、完成度の高い自然保護活動のモデルとなりました。
カリブの他の地域では、WWFはメキシコのケンプヒメウミガメの調査を支援をしました。ウミガメの生息するベネズエラのアヴェ島は、カリブ海東部で唯一のアオウミガメの繁殖地で、現在は保護区に指定されています。WWFは、今もこの地域でウミガメの保護活動を継続しています。また、コスタリカのトルトグエーロ国立公園におけるアオウミガメ産卵場所の保護強化のための資金提供も行いました。
世界的にも減少が懸念されていたタイマイは、1980年代初頭まで、カリブ海ではほぼ絶滅状態にありました。しかも、タイマイの野生での生態や行動は、ほとんど知られていなかったのです。WWFはウミガメを専門とする、経験豊かな生物学者アーチー・カー博士と、その同僚のアン・メイランが、パナマおよびリーワード、ウィンドワード諸島のサンゴ礁で(サンゴ礁はタイマイの採食場所)行った、タイマイの生態調査に対して支援を行いました。カー博士はまた、いわゆる「失われた数年間」の謎(仔ガメが成体になるまでの数年間、海での生活史が謎に包まれている)を解こうとしていました。博士は生まれた仔ガメたちが、最初の一年間はカリブ西部の海に見られる、サルガッソーという海藻の塊の上で、それを食べながら海藻とともに流されて生きている、という仮説を証明しようとしていたのです。そしてコスタリカのトルトグエーロで2000匹以上のタイマイの仔ガメに標識をつけ、嵐の後に浜辺に流れ着いた若いタイマイの胃の中を調べたり、漁師のからの情報収集を行いました。その結果、フロリダ東部を繁殖地とするタイマイと、カリブ沿岸で繁殖するアカウミガメは、マット状になったサルガッソーの上で最初の一年間の大半を過ごしていることが明らかになりました。

太平洋東部

1970年、WWFの支援を受けたペーター・プリチャード博士は、ガラパゴス諸島(エクアドル)を訪れました。東太平洋に分布するアオウミガメ個体群(クロウミガメCheonia mydas agassiziとも呼ばれる)と、その繁殖地の状況を把握するためです。その結果、人間の影響は少ないものの、サンチャゴ島のジェームズ湾にある重要な産卵場所が野生化したブタにより、破壊されていることがわかりました。クロウミガメと、ガラパゴスに生息する巨大なゾウガメを絶滅から守るため、WWFは引き続きサンチアゴ島における野ブタの個体数のコントロールや、チャールズ・ダーウィン研究所の科学者たちによる長期的な調査を支援しました。
また、1970年代初頭、ガラパゴス諸島沖では、操業している漁船が多くのウミガメを捕獲しているという報告がありました。この問題はその後もっと深刻になり、ウミガメだけでなく、サメやアザラシなど他の野生生物についても同様の危機が広がりました。1971年には、日本の冷凍漁船が地元の漁師から大量の魚とカメを買っていたことがわかりました。これはエクアドル政府が禁じていた行為でした。
ヒメウミガメも1960年代、その甲羅を取るために数多く殺されました。1970年代には、エクアドルの沿海で推定45万匹もののウミガメが、国外に輸出するため殺されたといいますが、その主なものはやはりヒメウミガメでした。大半の輸出(ワシントン条約では明らかに違法)先はアメリカでしたが、特にフランスやイタリアなどを中心としたヨーロッパ諸国も輸出対象国でした。エクアドルは1981年、正式にウミガメの捕獲を禁止。しかしそれでも、密漁と生産・加工は引き続き行われていました。1989年、WWFはこの違法産業に対する捜査のためにエクアドルの自然基金を支援しました。

メキシコ ~ウミガメを守る戦い~

1967年、WWFはホンジュラスとメキシコの太平洋沿岸域で、ウミガメの状況を調査するための支援活動を行いました。この地域では、ウミガメの個体数はまだ多いながら(保護区となっている、ゲレーロのサンルイス・デ・ラ・ロマビーチでは、一回の集団産卵「アリバダ」で3万匹のヒメウミガメが観察された)、その一方で、商業目的のための採取がウミガメやその卵を脅かしていたからです。そして、現地で重要な職についている役人たちさえも、法を無視していました。
メキシコでの調査活動は1970年代まで続けられました。1977年までに、ヒメウミガメの個体は極度に減少していたにもかかわらず、捕獲は盛んに行われており、WWFは「ヒメウミガメは推定で15万匹いると思われるが、今年捕獲された7万匹のウミガメのうち、98%が産卵をひかえていた雌であった」という事実を報告。また、生き残っているウミガメについても、密漁や産卵場所が荒らされたことにより同様の危機にさらされていました。報告にはこうあります。「メキシコにおけるヒメウミガメ、アオウミガメ、オサガメの生息数は間違いなく減少傾向にあり、タイマイはすでに姿が見られなくなった。メキシコでは、1960年代初頭から年間50万~100万頭ものウミガメが殺されてきた。これは、世界中のウミガメ漁獲量の70%にあたる」。
東太平洋のアオウミガメ(いわゆるクロウミガメ)も、危機に瀕していました。20世紀初頭、ミチョアカン州では一晩に1万匹の雌ガメが産卵のため上陸していましたが、1970年代になると、甲羅を取るためにたくさんのウミガメが殺され、77年には完全に姿を消してしまいました。このような事態にも関らず、メキシコ政府はこれらウミガメ類の産卵場所として知られる3つの海岸のうち、2箇所で漁業拡大のため、地域の漁業者にウミガメの漁獲権を与えました。
1978年、ウミガメの乱獲をあおるような政策を掲げるメキシコ政府に対し、WWFの生物学者、リチャード・フェルガー博士とその同僚たちは、メキシコのすべてのウミガメを守り、管理するための包括的な計画案を打ち出しました。ミチョアカン州でウミガメを救うためのWWFの長期的なプロジェクトは、メキシコ水産庁、メキシコ海軍、ミチョアカン大学の学生と教授たちの協力を得てここにスタートしたのです。
障害を乗り越えながらも、ミチョアカン沿岸域での保護活動は1980年代初頭までに実を結び始めました。密漁は減少し、地域の子供たちはウミガメの産卵場所を守るために活動に参加、メキシコの生物学者たちもチームに加わりました。1990年までに、WWFのメキシコにおけるウミガメ保護活動は、人々の意識を高め、大学での教育や、保護区の設立と管理、研究、種の保存などの多角的な展開を見せていました。そして、このプロジェクトは、ウミガメ保護という一つの目標のために、いくつもの機関が協力して取り組む、活動のモデルとなったのでした。

ホンジュラス

1987年、WWFはホンジュラスのフォンセカ湾に生息するヒメウミガメの調査を支援しました。ここでは、7つの自治体がカメの卵を収入源としていましたが、その現状は、プリチャード博士が20年前、「海岸を訪れるウミガメの数よりも卵を採取する人の方が多い」と報告をした当時と少しも変わっていませんでした。そこで、過剰な資源の利用を食い止めるための普及活動が始められ、1989年には、WWFはフォンセカ湾のウミガメ保護政策を資金援助しました。フォンセカ湾は、今も継続している、中央アメリカの環境プログラム(PROARCA)の中心的なフィールドになっています。

コスタリカ

1982年、WWFは、世界でも最大級の集団産卵(アリバダ)が見られるサンタ・ロサ国立公園内のナンシテ海岸で、ヒメウミガメの調査プロジェクトに参加しました。ヒメウミガメの成体は、食物を得るため北はメキシコ、南はエクアドル沖まで移動します。その途中、漁網に引っかかるなどの被害を受けやすいのですが、産卵場所となるサンタ・ロサの海岸にいる間は安全です。つまりここは、ウミガメのライフサイクルと生態を調査する上で、絶好の条件が備わっている場所なのです。1990年、WWFは、ナンシテで見られるヒメウミガメの大規模な「アリバダ」の要因を研究するため、全米科学財団の研究に参加しました。そしてこの地域は、WWFが支援する、コスタリカの国立大学における野生生物管理プログラムの中心的な場所となりました。ここではウミガメ調査のために生態学者たちをトレーニングしたり、保護管理のための技術を教えたりします。
1985年、WWFはアメリカの太平洋沿岸域のウミガメについての初のシンポジウムに協賛し、コスタリカ大学と協力して、南米の太平洋沿岸に生息するウミガメ調査の国際的プログラムに資金提供を行いました。

大西洋東部

1970年代、セネガル政府は、WWFの支援を受け、沿岸域に数々の保護区を設立しました。この中にはマデリーヌ諸島や、ラング・デ・バルバリー、デルタ・ド・サルームといった国立公園が含まれています。1980年から81年にかけて、WWFはセネガルの海洋生物省に対し、ウミガメにとって重要であり、まだ保護下には置かれていない生息地域の基本調査を行うための資金支援を行いました。多くの沿岸域は開発によって脅かされており、都市部で肉を売ることを目的としたウミガメ漁は商業化されていました。WWFは、デルタ・ド・サルームとカイサッゲ鳥獣保護区で、ウミガメ保護に使用する備品などを提供しました。

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近年の取り組み

地中海

1998年、WWFは、ルーク・ローレン博士による地中海のウミガメの生態に関する広範な研究に基づき、地中海のウミガメ保護に向けた新しいアプローチを目指す勧告を発表しました。このアプローチは、ウミガメの成体および仔ガメの死亡数を減らすことを目的とした、次の幾つかの緊急方策に着手するものです。特に、エジプトにおける、意図的なウミガメの捕獲の減少と、地中海の東部における、底引き網漁、延縄漁業、そして様々な小規模沿岸漁業によるウミガメの混獲の減少、またあらゆる種類の漁業により混獲されるウミガメの死亡数を減らすための普及教育です。また、都市開発および観光開発によるウミガメへの被害を制限するため、また、イヌやキツネによる捕食を減らすため、ギリシャ、トルコ、そして、キプロスにある産卵場所の海岸を保全する運動を継続してゆかねばなりません。
WWFは、地中海の環境保全を目的とした、「Out of the Blue」プログラムの一環として、代表的なウミガメ保護区のネットワーク設立を働きかけています。海洋および沿岸指定の保護区や国立公園は、まだまだ数が少なく、実際に存在するわずかな保護区においても、管理はしばしば不十分であるか、あるいは全く不足している状況にあります。科学者たちは、特にEU加盟国(欧州連合)以外の国々において、チチュウカイモンクアザラシ(Monachus monachus)やウミガメ類、また数種類の魚類のような、危機に瀕している野生生物の生息地を確認するための調査を行っています。科学者たちは、自然環境の保全と、環境に配慮した持続的な開発を推進することを目指しながら、沿岸域の総合的な管理について大きな関心を払ってきました。その中でも、最も重要な課題の一つは、北アフリカ、特にリビアにおいて新しく発見されたウミガメの産卵場所と、その採食場所となっている藻場のある浅海域の保全を開始することです。
WWFは、漁獲状況を調べ、また、ウミガメやサメの混獲や死亡数を報告するため、イタリアの延縄漁業船団に対する監視活動を行いました。

ギリシア

1990年代初頭、観光事業の発達により、ラガナス湾で産卵するウミガメの保護活動が大きな圧力を受けました。WWFは、ザキントス島で産卵するウミガメの半数以上が上陸し、地中海において最も高い密度でアカウミガメが産卵する、セカニア沿岸の土地を購入し、保全を行いました。その結果、観光による直接的な被害と脅威は減少しました。また、WWFは、その海岸地域を脅かす、浸食や土砂などの堆積、そして植物の侵入などの脅威に対処する研究を委託し、措置を講じました。ここでは、地域の人々が、ウミガメの産卵シーズン中、海岸の監視員として雇用される一方、ウミガメに対する社会的な認識を高めるためのプログラムが開始されました。セカニアの海岸は、1999年にギリシャ政府が設立したザキントス国立海洋公園の一部となりましたが、政府がこの場所を保護区に指定するその少し前、欧州委員会(European Commission)は、ギリシャがEUの「ウミガメ生息地指針」に反して、アカウミガメの十分な保護に取り組んでいないことを言及し、欧州法廷への申し立てを行っていました。ウミガメ保護協会、WWFおよびグリーンピースは、共同でウミガメの産卵場所の保全を働きかけています。

トルコ

WWFの地中海の環境保全プログラム「Out of the Blue」の中で、WWFトルコ(かつてのトルコ自然保護協会(DHKD))は、トルコ・ウミガメ委員会と協力して、トルコ国内のウミガメの産卵場所を保全する活動を続けています。現在、プログラムでは、近年のウミガメ調査の報告と、沿岸域の総合的な管理体制の枠組みのもと、社会的関心と地方当局の意識向上、現地でのウミガメに関する専門的な知識の拡充、そして産卵個体の監視方法の開発といった取り組みが行われています。

インド-太平洋

1999年、WWFはNGOや政府のネットワークと共に、マレーシア、サバ州において7月15日から17日まで行われた、第2回東南アジア諸国連合(ASESAN)ウミガメ会議に参加しました。地域に基盤を持つ、ウミガメ保護のための協調体制を整えることは、ウミガメ保護を推進する上での優先事項です。東南アジア地域では、ウミガメを始めさまざまな海洋生物が、沿岸開発や、砂やサンゴ礁の採掘、汚染、卵の過剰な採取、そして、延縄漁業などの魚網に誤って絡まる混獲によって、危機に瀕しています。マレーシアに限っても、4種のウミガメはこの十年数間に急激に減少し、特にオサガメは危機的状況に陥りました。過去30年間にわたる政府とWWFの努力にも関わらず、マレーシアばかりか、東南アジア中で、ウミガメは減少傾向にあります。そのような中、1996年、フィリピンとマレーシアの9つの島からなる島々が、タートル諸島重要保護地域に指定されたことは、将来に向けた取り組みに、わずかながらも希望を与えるものでした。

インドネシア

1991年、インドネシアのPHPA(Forest Protection and Nature Conservation)総裁は、WWFに対し、当時行っていた海洋保全プログラムの強化支援を要請しました。ウミガメを保護する上で、幾つかの方策が緊急に必要とされていたのです。この時、調査によって、海洋保護区においてさえ、毎年少なくとも2万頭の成体および仔どものアオウミガメが殺され、バリの食肉マーケットに供給されていたことが分かっていました。また、この他にもさらなる脅威として、インドネシア国内に生息する6種全種のウミガメの卵が、毎年900万個も採集されていることや、計画性のない観光開発、アオウミガメが採食する海草藻場の破壊などが挙げられていました。この現状を受け、WWFは、より厳しい法律の制定と、貿易の規制を働きかけ、国を交えた保護運動の協調実施を目指すための、ウミガメ保護プロジェクトを開始しました。
1991年に設立された、アル・テンガラ海洋保護区は、WWFが資金の提供を行って、アオウミガメとタイマイの生態についての研究を行ってきた中心的な場所です。しかし、保護区であるにもに関わらず、アル保護区のウミガメとその卵を含む海洋資源は、商業目的の取引のため、大量に搾取されています。ここでの研究で得られたデータは、保護運動を支援し、地域社会が持続的にウミガメを資源として利用する方法を含む、保護区管理のための計画作りに役立てられることになっています。
観光楽園であるバリ島における計画性のない開発は、観光客がその目的とするところの、素晴らしい魅力の要素である、貴重な海洋生態系を、きわめて深刻な危機に追い込んでいます。WWFは、信頼できるエコツーリズムの導入推進や、島の北西部におけるヒメウミガメやタイマイの最後の産卵場所を保全する運動を支援しています。バリでは、周辺地域から島内への、アオウミガメの輸入数に制限が設けられることになりましたが、その輸入割当てはほとんど無視されており、インドネシア政府は規制の実施状況を改善する必要があります。

フィリピン

1993年以来、WWFは、ASEAN諸国に対し、加盟国が協調してウミガメの保護管理に取り組むよう、活動を行ってきました。その中でも大きな成果は1996年に、世界で初めて誕生した、国境を越えたウミガメ保護区、タートル諸島重要保護地域(Turtle Islands Heritage Protected Area)の設立でした。
タートル諸島に住む住民の70パーセントは、貧困状態に置かれており、保健衛生設備も最低レベルか、あるいは全く不足しています。そして、漁業とウミガメの卵の採取は、伝統的かつ非常に重要な、島民の収入源でした。栄養価の高いウミガメの卵は、島民の多くが栄養不良であるにも関わらず、通常食べられることなく、売られていることの方が多いのです。WWFのタートル諸島における広範な保護プログラムには、幾つかの目的がありました。その中には、島民の保健や生活水準の向上を支援すること、海洋資源の持続的な利用を推進すること、そして、新しくかつ独特な、この保護地域の重要性を島民に広く伝えることなどが含まれています。実際、ウミガメの卵や、他の資源の過剰な搾取を減らすためには、島民が生計を立てるための革新的な方法が、緊急に必要とされます。島へのエコツーリズムのためのガイドライン作成や、島の女性が経済収入を得る機会の創出、そして地域住民に十分にウミガメの保護運動に参加してもらう方法が模索されています。
ウミガメの研究も行われていますが、その結果は、島における保護管理のためのプラン作りに役立てられます。短期的また長期的なウミガメの個体数の変動とその周期を把握するため、科学者を支援する一方、ウミガメが産卵する全ての島々の中でも、最高の産卵密度を誇るバグアン島の情報のデータベース設立を目指しています。また、何頭かのウミガメには、電波発信機を取り付け、その個体の移動を人工衛星で追跡する調査も支援しています。(この取り組みについては、ウェブサイト:www.oneocean.org/ambassadorsをご参照ください)。

マレーシア

沿岸開発や、砂の採掘、汚染、卵の採集と消費、そして、魚網に絡まる混獲などによる影響の結果、マレーシアで数多く産卵していた4種のウミガメは、この十年の間に激減。オサガメはその産卵個体数が、1950年代以来、98パーセントも減少しました。今も残る、最も重要なウミガメの産卵場所となっている海岸は、テレンガヌ(マレーシア半島の東海岸)と、サバ州、サラワク州にあります。
この状況を受け、1996年10月、マレーシア水産局は、WWFを始めとする幾つかのNGOと研究所、そして法人パートナーと共同で、ウミガメと淡水生のカメの保護管理についての全国セミナーを開催しました。このセミナーで提起された7つの決議を受け、WWFは水産局と協力して、ウミガメの産卵場所と採食場(藻場)の保全モデルと、産卵場所の保護管理ガイドラインを作成。マレーシア国内の各州は、このモデルに基づき、法律を制定するよう、求められることになりました。現在、州の間では、保護の取り組みに大きな差が生じており、WWFが、ウミガメの卵の採集と売却、そして消費を全国的に禁止するよう求める一方、水産局では魚網による混獲の死亡数を減少させるため、TED(ウミガメ除去装置)を用いる実験を行っています。
1999年5月、WWFマレーシアは、特にウミガメと淡水ガメに関わり、その保護計画や意志決定に携わる人を対象とした、ハンドブック「沿岸域および河口域の綜合管理(Integrated Coastal and Estuarine Zone Management)」シリーズの第4版を発刊しました。そして、その1ヶ月後には、テレンガヌのケーシにおいて、マデラ・ウミガメ保護区が誕生。BP Amoco Malaysia社系列の企業の資金支援を受け、WWFはこの重要な保護区において、社会的な普及啓発を行うための施設の設立を監督しました。

ベトナム

現在のところ、ベトナムでは、ウミガメの卵と肉を含む、海洋資源の利用に関する法的制限は課せられていません。オサガメ、アカウミガメ、アオウミガメおよびタイマイの個体数は、著しく減少しています。WWFの支援により、ベトナム政府は、海洋保護地域のネットワーク確立のため、沿岸域の中で、条件に合った地域を検証しています。すでにある海岸保護区としては、ベトナム南東部のコン・タオ国立公園がありますが、これは東南アジアにおいて最も重要なウミガメの産卵場所の1つです。WWFと国立公園のスタッフは、コン・タオでの保護管理を改善する大規模なプランの一環として、4年前に始まった、ウミガメについての研究と調査プログラムを継続しています。16の島からなるこの群島内において、ウミガメを保護する活動を展開するため、より多くの地域住民、特に漁民が参加するプランが立てられています。

インド洋西部

1995年11月に、WWFは、ウミガメ保護のための優先事項を決定するための、IUCNのMTSG(ウミガメ専門家グループ)会合の開催を支援しました。WWFは、MTSGによる「西インド洋におけるウミガメ保護戦略アクションプラン」の勧告に対応する形で、各地域におけるウミガメ専門家のネットワーク強化に努めています。1996年以降、WWFはこれら地域の科学者に対し、国際的なウミガメ会議への参加を支援し、1997年には、ケニア、タンザニア、エリトリア、マダガスカルおよびモザンビークから、資源管理者や漁民を招いた、TED(ウミガメ除去装置)技術についてのワークショップを協賛しました。
WWFは、タンザニアのマフィア島、ケニアのキウンガ海洋保護区、モザンビークのバザルト群島を含む、東アフリカ沿岸の数多くの海洋保護区での活動に関与しています。これらの保護区全てに共通した重要な目標は、地元の地域社会による、海洋資源の持続可能な利用を確立すること。そして、サンゴ礁に生息する魚類やウミガメ、ジュゴンなどの危機的状況に置かれている生息地を保全することです。
WWFインドもまた、自然保護ボランティア・プログラムや、森林・野生生物部門の地域保全プログラムを通し、アンドラ・プラデッシュ北部沿岸における、ヒメウミガメとその産卵生息場所の状態、そして生態と管理に関わるプロジェクトを資金的に支援してきました。なお、このプロジェクトは 1997年1月から1998年6月まで行われました。

ケニア

WWFは、ケニア野生生物部局およびその他の機関と協力しながら、ケニア北部海岸にある、比較的最近設立された、キウンガ海洋保護区とその境界内の村で、さまざまな保護・開発プロジェクトに取り組んでいます。ウミガメの産卵する海岸は定期的に調査されており、地元の小学校でも、保護に関する活発な教育プログラムが展開されています。住民も調査活動に貢献し、1998年には地元から約100件の報告が寄せられました。ソマリアとの国境近くという遠隔地であること、地域の経済基盤が欠如していたり、また、不安定であることから、これらは挑戦的な取り組みとなりますが、幾つかの地域社会からは熱心な反応が返ってきています。またWWFは、ケニア・ウミガメ保護委員会およびキピニ共同体保護・開発プログラムが発表した、ケニアのウミガメ回復行動計画を推進しています。

マダガスカル

マダガスカルの南部沿岸域は、その景観や、ウミガメを始めとする野生生物をテーマにした、エコツーリズムを実現する大きな可能性を秘めた地域です。アオウミガメ、タイマイ、そしてアカウミガメが産卵のために上陸する、フォート・タウフィン周辺では、地域社会に基づいたウミガメの保護プログラムが開始されました。また、この地域は、マラガシ地方政府により、エコツーリズム開発のための優先地域として認定されました。

南アフリカ

WWF南アフリカは、クワ・ズールー-ネイタル地方の北部海岸で、南アフリカ政府のトンガランド・ウミガメ保護プロジェクトを支援しています。ここでの研究は、モザンビーク南部とコモロ諸島を含む、30年以上に渡るものであり、アカウミガメとオサガメの産卵個体、そしてウミガメの長期的な移動の傾向について貴重なデータを提供し続けています。南アフリカでの活動の中心的な地域は、野外レンジャーと学生による、定期的なパトロールが行われている、南北56 キロにわたって続く、バンガ・ネクの海岸地帯です。1997年以来、標識を付けられた雌の数個体が衛星によって追跡されてきました。ここで調べられた、ある雌のオサガメの移動は、桁外れに大きな距離に及んでいました。それはアフリカ南端を過ぎて南に向かって大西洋まで泳ぎ、その後東のオーストラリアを目指し、 送信器のバッテリーが切れる前の5ヶ月間で7,000キロに渡って移動していたことが記録されたのです。

ラテンアメリカおよびカリブ海

ウミガメは世界的に絶滅が危惧される野生動物の一つであり、WWFのラテンアメリカ・カリブ海プログラムにとっても、その保護は、大きなテーマです。1999年後半、WWFは国際自然保護連合(IUCN)・種の保存委員会(SSC)ウミガメ専門家グループ、WIDECAST、そして国連環境計画(UNEP)と共に、ウミガメの地域的管理の必要性についてさらなる検討を行うため、カリブ海域における、地域レベル会議を支援しました。この会議には、広いカリブ海沿岸の35の国や地域を代表して、27の政府から31人の資源管理担当者が出席。会議での勧告には、利害関係者の協力を強化すること、より広い地域社会の参加を促進すること、ウミガメやその生息地の科学的調査と監視を支援すること、地域および国の管理計画を開発すること、国内法の適用を改善すること、カリブ広域全域でのウミガメ保全のために各国の政策を調和させることが、盛り込まれました。また、各国の資源管理担当者たちは、効果的な科学的管理を実現する、幾つかのポイントを示しました。さらに、次の二つの点も、合意されました。

1. ウミガメはカリブ海域では伝統的に消費されてきた資源であったことに対する理解
2. 実際の資源管理はウミガメが分布する複数国家間の、地域的なつながりを通じて行うことで、可能になること

会議を主導していた科学者たちは、カリブ海に生息する6種のウミガメ全ての個体数が、著しく減少し、危機に瀕しているという明らかな証拠を提出しました。そして、資源としてウミガメを利用している現状に、大きな変化が起きない限り、またウミガメが分布する各国間による、地域的な管理が行われない限り、どの種のウミガメも個体数が回復するチャンスが、全くないことが明らかにされました。唯一の例外は、ケンプヒメウミガメであす。その生息数は、現在ではきわめて少なくなっていますが、その分布している国々や、アメリカ、メキシコなどによる数十年の保護努力の結果、個体数は回復しつつあります。

中央アメリカ

アオウミガメとタイマイを中心に、年間80,000匹以上のウミガメが、今も中央アメリカの沿岸域で捕獲されています。緊急に必要とされている直接的対策の一つは、この地域全域でのエビ漁業者によるヒメウミガメの混獲、および、特に太平洋における延縄漁業船団による、オサガメその他の種の混獲を防止することです。太平洋側のメキシコ沿岸で見られるヒメウミガメ、メキシコ湾のケンプヒメウミガメ、そしてユカタン半島のタイマイの個体数は、10年以上にわたる重点的な保護と生息地保全の努力のおかげで、やや回復傾向にあると見られますが、カリブ海のアオウミガメなど、他の種については、個体数が未だに危機的な状況にあります。それにもかかわらず、キューバやドミニカはこれらのウミガメの国際取引の再開を訴えています。

WWFは、中央アメリカにおいて、ウミガメ除去装置(TEDs)の使用を通して、地域社会や漁業者たちが、ウミガメの保護に参加することを奨励する活動を推進しています。この他の取り組みとしては、ポリ袋やバナナ農園から出る麻縄のようなゴミを、河川や海に捨てないよう求めるキャンペーンも含まれています。また、野生生物保護区やサンクチュアリの創設を促進し、ウミガメの見られる海岸域のパトロールや、海岸近くの街灯による仔ガメへの悪影響を減らす対策も支援しています。ウミガメの商業取引問題については、WWFは鼈甲製品の取引を禁止し、密漁対策の取り組みを関係当局に積極的に行ってもらうよう、活動しています。

中央アメリカにおけるウミガメ保護活動の力点は、総合的な沿岸域の管理と、保護区でのプログラム促進を目指す、中米環境プログラム(PROARCA)を通じて行われています。PROARCAは環境と開発のための中央アメリカ委員会と共同で運営されており、アメリカの国際開発庁の支援を受けています。PROARCAはTNC(The Nature Conservancy)や、WWF、ロード・アイランド大学によって実施されています。1995年以来、WWFはその活動を、二つの重点地区、すなわち、ニカラグア北東部のミスキト沿岸と、ホンジュラス、ニカラグア、エルサルバドルにまたがるフォンセカ湾に置いてきました。この二つの地域では、WWFはウミガメを含む海岸資源の持続可能な利用と管理を促進するため、地域社会と密接に連携した活動を展開しています。フォンセカ湾では、WWFは10ヶ所の保護地区を結ぶネットワークを構築するため、3ヶ国の政府と共に、活動を行っています。

WWFは、この地域でのウミガメに関する国内政策および国際政策に「海の変化」をもたらすべく、プログラムを広めています。WWFが支援した、コスタリカの環境法センターによる研究は、1998年に、コスタリカのトートグエーロで行われた、ウミガメ保全ワークショップの開催につながりました。

大西洋西部

ウミガメは非常に回遊性の高い動物です。ある地域で個体数が減少した場合、数百キロ、時には数千キロも離れた場所で、人間活動の直接的影響を被ったことが、その原因であることもあり得ます。
このことからも、タイマイ製品(鼈甲)の取引再開を目的に、1997年にワシントン条約当事者会議で行われた提案は、きわめて広い地域においてウミガメを危機に陥れ、深刻化する人間活動による脅威をさらに大きなものにするといえるでしょう。
カリブ海において、WWFは、国際取引の問題と、この海域に生息する6種の絶滅危惧種のウミガメに及んでいる、さまざまな脅威について言及してきました。WWFが踏み出した最初のステップの一つは、1999年11月に開催された「カリブ海広域ウミガメ保全:地域的保護管理のための協議」を共催したことでした。

この会議での勧告は、ウミガメの個体数を回復させるために必要とされる行動と、各国政府が保全に着手する際に必要とする協力体制の確立、そして、ウミガメ保護についての地域的な合意を取り付ける上で役立つものでした。この他のWWFの取り組みには、タイマイやアオウミガメにとって重要な生息場所である、マングローブや藻場、サンゴ礁などを保全するため、中央アメリカのサンゴ礁生態域内にある、保護区ネットワークを発展させる活動などが含まれています。

南米北部沿岸域

WWFは、1960年代以降、ガイアナでのウミガメ保護を支援してきました。ガイアナ、スリナム、仏領ギアナ、ベネズエラ、コロンビア、ブラジルなどの国々が領するこの生物学的に豊かな一帯の沿岸には、産卵のために上陸する数多くの希少なウミガメがいます。スリナムは4種のウミガメの主な生息地であり、その中には西部大西洋で唯一、ヒメウミガメが産卵に上陸する海岸もあります。ヒメウミガメの差し迫った危機は、この地域で行われる保護活動の中でも、最も重要な課題です。スリナムや仏領ギアナで産卵するオサガメの個体数は、過去30年間、増加傾向にあり、世界でもっとも大きな個体群となっています。また、この地域で見られるアオウミガメの個体数は安定したと考えられています。
数多くの取り組みを通じて、WWFはエビ産業やウミガメの過剰な漁獲、産卵場所である海岸の侵食といった脅威と闘っています。地域的なウミガメ保護プログラムは、スリナムのパラミボに新たに設立された、WWFのオフィスで実施されています。その他、現在行われている活動としては、何千頭ものアオウミガメが産卵のために上陸するスリナムのガリビ自然保護区や、仏領ギアナのいくつかの場所での保護活動などが挙げられます。WWFはまた、仏領ギアナのハッテス沿岸で行われている保護の取り組みに対し、長期的支援を継続しています。ここは毎年、15,000から20,000頭の雌のオサガメが、産卵するために上陸する場所で、近年、保護区に指定されました。

ブラジル

WWFは、ブラジル政府のウミガメ保護プログラムである「TAMAR計画」への支援を行っています。この中で開発された「ミニ・ガイド」計画では、8歳から13歳の生徒たちが、海洋生態系とウミガメの生態、そしてウミガメを保護する方法について学んでいます。このコースの後、子供たちにはフォルテ海岸にある TAMARのビジターセンターで、インターンとして働くチャンスが与えられます。このセンターで、彼らは観光客に対し、ウミガメについての説明を行ったり、調査活動の現場で生物学者たちを手伝ったりするのです。このような活動への参加は、子供たちに観光客に応対する上で役に立つ技術を与えるだけでなく、収入源をも与えることになります。WWFはブラジル北東部沿岸にあるノロンハ島でも保全活動を支援しており、そこでは過去19 年にわたり、300万頭の孵化したウミガメが海に旅だって行きました。

コスタリカ

WWFは、ガンドカ海岸と、そこで産卵する、オサガメ、アオウミガメ、タイマイといったウミガメを保護する活動に取り組む地元の環境NGO、ANAIを支援しています。1999年には、449人のボランティアが、産み落とされた卵を危機的な産卵場所から、孵化場へと移し、また他の巣をカモフラージュしたり、ウミガメの個体数を数える取り組みを手伝いました。これらのボランティアに宿泊先を提供することで、地元ではそれまで彼らがウミガメの卵の違法売買で得ていた収入の、4倍もの収入を得ることになりました。

英領アンギラ

WWFは、ウミガメが産卵する海岸の調査をなどを含む、アンギラ・ナショナルトラストのウミガメ保護プログラムの管理に支援を行ってきました。アンギラは1995年に成体の個体と卵の両方の捕獲に対して5年の執行猶予を設けましたが、産卵に上陸するウミガメの数は今も減少し続けています。ここ数年では、若いタイマイとアオウミガメがアンギラの海域で目撃されていますが、保護のための努力は、個体数が回復し始めるまでより、まだまだ続けていかなければならないでしょう。

ベネズエラ

ベネズエラにおけるWWFの協力団体FUDENAは、20年の間、アヴェ島とラグナ・デ・タカリグア国立公園での、ウミガメ保護活動に取り組んできました。アヴェ島でのFUDENAの活動の一つには、毎年行われるモニタリングと、産卵期間中の雌ガメへの標識付けがあります。FUDENAのウミガメ里親キャンペーンがこのプログラムを支援しています。また、FUDENAは、ラグナ・デ・タカリグア国立公園で、ウミガメの産卵場所の保全に地元の人々に参加してもらうために、複数のパートナーと共に活動に取り組んでいます。

北大西洋

カナダ

1824年から1992年の間に、カナダの海域で報告されたオサガメは、わずか60匹にすぎませんでした。しかし、1997年以降、WWFカナダがノヴァ・スコシアの南海岸沿いの漁業者たちに協力を求めるプロジェクトを支援した結果、1998年だけで200匹以上のオサガメが確認されました。このプロジェクトのおかげで、オサガメの分布と活動についてより多くの事が知られるようになりました。これらの情報は、漁網に絡まり、混獲の犠牲となっているウミガメの数を減らす上で役立つものとなることが期待されています。

大西洋東部

モーリタニア

1976年以来、WWFは、アオウミガメとアカウミガメにとって、重要な産卵場所の一つとなっている、バン・ダルギン国立公園での保護活動に支援を行ってきました。ここでの調査によると、毎年数千頭ものウミガメが、沖合いで行われるサメ漁での混獲により、死んでいると見られています。この問題を解決に導くことを目的とした、WWFの漁業管理に関する取り組みに、期待が寄せられています。また、ウミガメに付けられた標識の回収によって、バン・ダルギンのアオウミガメが、はるか遠くのフロリダからやって来ていることが明らかになりました。また、その他の種のウミガメについては、ギニアビサウ共和国のビジャゴス諸島が、その繁殖地であることも判明しています。

ガボン

アフリカの大西洋沿岸では、ウミガメが過剰に漁獲されており、ガボン沿岸に見られる4種のウミガメについても、その全てが、成体のウミガメと卵の過剰な採取によって、脅かされています。また、多国籍の漁船団の混獲も大きな脅威です。ガボンは、世界で二番目に重要なオサガメの産卵場所であり、沖合いの藻場はアオウミガメの重要な採食場所となっています。一部保護されているオサガメの例を除くと、ガボンにはウミガメを保護するための法律が全くありません。ガボン北西部では、ウミガメは特製の網で捕獲され、他の地域でも産卵のために上陸した時、殺されています。1997 年、WWFはウミガメ保護のための地域行動計画の一環として、科学者たちから集めたデータを照合し、ウミガメの現状を明らかにした上で、ギニア湾でのウミガメ保護に必要な手段を定めるため、ポイント・ポンガラでワークショップを開催しました。このワークショップはウミガメの産卵シーズンに合わせて設定されたので、参加者たちは野外調査のテクニックを実際に学ぶことができました。WWFはいくつかのウミガメ行動計画の中で強調された優先的な取り組みを推進しています。

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今、何をすべきか

現在、世界に分布する7種のウミガメのうち、6種が絶滅の危機に瀕しています。100年から200年前には、数多く見られたウミガメも、今では本来のサイズにまで大きくなるものが少なく、減少し、全体としては絶滅に向かっています。局地的な絶滅はすでにあちこちの沿岸で起きており、長期間にわたる保護や監視によって安定した状態にある場所においても、全く安全とは言えません。ウミガメは成長するまでに長い時間を要し、また生きていくのに多様な自然環境が必要であることから、保護活動には並ならぬ取り組みが求められます。また、ウミガメは、一生の間にいくつもの国境を超えて海を広く異動し、産卵のために上陸しなければなりません。
ウミガメは古くから生きてきた生物ですが、ウミガメの生態に関する研究は、極めて新しいものです。科学者たちは、このすばらしい生物の生活や自然史などについて、多くのデータを集めてきました。しかし、ある問題が解き明かされる一方で、新しい問題がたえず浮かび上がって来ました。近年では、遺伝子の解析や人工衛星を使った遠離測定法などの新しい技術が、ウミガメに秘められた謎を解くために開発されてきましたが、今もまだ解明されないことも多く、今後の課題も多い状況です。私たちが、ウミガメと共存してゆくため、これからどんな活動が必要とされるのか、見てみることにしましょう。

長期にわたる保護活動を行う

将来的にわたり、ウミガメが絶滅することなく、生き続けてゆくためには、明確かつ包括的な保護プログラムが必要です。そして、十分な個体群が生きることの出来る環境を整えることが、その達成のために必要とされています(そうすることでウミガメは海洋環境の中で、生態学的な役目を果たすことが出来るのです)。
そして、資源管理にあたる人々は、地域間の協力や提携が、ウミガメの保護・管理に必要であることを認識し、国際的な提携をはじめ、近遠の海外の国々と協力をしていく必要があります。
ウミガメの保護が長期間を要することは明白です。実際、長い時間をかけて行われてきた活動は、今までにも、それなりの成果を挙げています。マレーシアのアオウミガメ、南アフリカのアカウミガメとオサガメ、そして、メキシコのタイマイや、ケンプヒメウミガメのように、一時激減していたものが、近年では個体数が安定し、場所によっては数も増えてきています。しかし、これらは20年以上の保護・管理の取り組みによってももたらされた結果なのです。これらの地域においても、将来的な視点から見れば、ウミガメはまだまだ危機的な状況にありますが、一方で、集中的に行われた保護活動の成果を示す例でもあると言えます。

地域的な保護と管理のためのプログラムを開発する

ウミガメの保護と管理は、一つの地域で行われる活動が、他の地域での取り組みを損なうことなく、互いに補い合うように推進してゆく必要があります。ウミガメの場合、産卵と採食のための環境が、遠く離れていることも多いため、各地域で保全活動を行う場合でも、極めて重要な産卵場所と、採食場所、休息と移動の区域は、きちんと把握し、保全しなくてはなりません。各々の地域において保全上の重要地点を設ける場合も、他国からやってきたウミガメたちが集まる採食場所を一つの国が開発等で荒らしてしまうことのないよう注意する必要があります。南北アメリカ大陸の国々によるウミガメ保護のための国際的な取り決めや、インド洋でウミガメのための条約を作る取り組みのような、法的枠組みの代わりとなる地域間協定も支援してゆかねばなりません。そして、地域的なプログラムの例で成功する取り組みとは、さまざまな機関の参加と、地元、国、海外からの参画を得たものでなくてはなりません。今日までに、生物学者、自然保護関係者、そして資源管理にあたる人々の地域的なネットワークは、東南アジア、南太平洋、地中海、ラテンアメリカ、そしてカリブ海で立ち上げられており、さらに新しいグループが、北部および西部のインド洋、アラビア湾、東大西洋で設立されつつあります。これらのネットワークは、協力、協働と地域データバンクを通じた情報の共有が可能になるよう、さまざまな側面から、強化される必要があります。政府と関連する機関からの資金的な支援もまた欠かせません。

漁業による混獲を減らす

1980年代前半、エビの底引き網漁によって、数多くのウミガメが死に至っていることが判明して以来、ウミガメ除去装置 (TEDs)のような、網に入り込んだウミガメを、外へ逃がす工夫が開発されてきました。しかし、除去装置は西半球では広く使われているものの、世界全体で行われている、エビ漁や底引き網漁においては、まだあまり活用されていません。また、メカジキやマグロのような、遠海魚を獲る延縄漁業においては、ウミガメの混獲による死亡率が増えています。毎年10 億もの釣り針を使ったこれらの漁業は、今も増えつづけているのです。ウミガメは この釣り針を誤って飲んでしまったり、身体に引っかけて身動きが取れなくなり、溺死してしまいます。生きたまま放されても、釣り針の鈎が胃腸管に深く食い込んでしまったりすると、その怪我が原因となって、後に死んでしまうこともあります。釣り針や餌の変更、また地域や季節に応じた使用の規制などを設け、この問題に取り組んでいく必要があります。また、ウミガメは他にも、刺網漁などの漁具にも絡まって、同じように死んでしまうことがあります。漁具や漁法の改良をすることで、死亡率を減らすプログラムや、ある海域を特定の期間、漁業禁止にする必要があります。そして、漁労に携わる人々にも、これらの試みの手助けをしてもらわなくてはなりません。

ワシントン条約 ~法律と取り決めの遵守

絶滅の恐れのある野生動植物の国際取引に関する条約(ワシントン条約=CITES)が発効した1975年以来、ほとんどのウミガメは、国際間の取引が規制されています。1981年には、全てのウミガメ類はワシントン条約の附属書?に掲載されていました。この附属書?に掲載された野生生物は、ワシントン条約加盟国の間で国際的な商業取引が、禁じられているのです。しかし、日本はアオウミガメやヒメウミガメ、タイマイ等の製品を、附属書掲載に関する例外措置すなわち「留保」に基づいて、1990年代まで大量に輸入し続けました。しかし、1992年、日本はワシントン条約の取り決めに従うことを同意。ウミガメの輸入を止めるに至りました。現在、140カ国以上の国がワシントン条約に加盟していますが、未だに鼈甲の装身具や、ウミガメの油、剥製や骨董品などが、国際的な取引の対象となっています。ウミガメやその派生品は、西半球やアジアの多くの観光地、国際空港などで売られています。WWFは、ワシントン条約の加盟国に、違法な取引を止めるように呼びかけ、全ての国々に、ウミガメ保護のための国際法や、地域的な取り決めの推進を呼びかけています。

ウミガメの生息地を保全する

ウミガメは成長の過程で、海域や沿岸を移動します。産卵場所や採食の場が集中している生息地は、国立公園や海洋保護区を設けることで保全が可能ですが、それ以外の地域、つまりウミガメが利用している他の海域全てを、完全な国の保護区にすることは不可能です。そのため、ウミガメを保護する場合は、沿岸域の管理計画だけではなく、生態系保全という視野が必要になります。水質保全や、油、化学薬品などの規制に取り組むことで、ウミガメが依存して生きている生態系の健全性や生産性を保持することが重要なのです。ダイナマイト漁や、海洋への廃棄物の投棄、そして油汚染による脅威も、防いでいかねばなりません。産卵場所である海岸付近では、照明の制限なども法的な規定として設けてゆく必要があるでしょう。また、海岸の侵食や、土砂などの堆積、砂の採取、産卵場所のある海辺の歩行や自動車の交通などについても、産卵に上陸した雌ガメや、卵、孵化が守られるように、呼びかけていかねばなりません。そして、これら長期にわたる生息地の監視プログラムは、実際にウミガメが被る影響を判断する上での決め手となるものなのです。

ウミガメをテーマにしたエコツーリズムの支援

ブラジルで行われているTAMARによる協力プロジェクトが示す通り、適切なエコツーリズムは、その地域におけるガイドの雇用を生んだり、食物産業や、小さなホテル事業者に収益をもたらすだけでなく、広く地域社会全体を支援する取り組みにつながります。コスタリカのトートグエーロの主要な収入源は、この地で有名なアオウミガメを見に来る観光客によるものです。近年では、数多くの観光客が訪れたことで、その地元の地域社会は、電気や他の生活に便利な設備を手にすることが出来ました。これらのプログラムを見ても分かるとおり、生きているウミガメは、沿岸域に持続的に収入をもたらす資源となり、一度使ってそれで終わりになってしまう漁獲資源よりも、はるかに高い経済価値を持つことになるのです。

持続的な資源利用のガイドラインを開発する

WWFは、世界のあちこちに今もある地域社会が、ウミガメやそれらの卵の採集に頼っていることを認識しています。そこで、それらの地域では、ウミガメを資源として利用する際に、持続性を持たせるようなプログラムを行うことで、沿岸域の人々に収益をもたらすような、ガイドラインの制定を支援しています。しかし、ウミガメの持続的な利用が、実際どのようなものであるべきかについては、さまざまな意見があります。ですから、ガイドラインを開発する際には、資源管理にあたる人々と、生物学者は、全ての対象海域における個体群の分布状況を、まず調べ、しっかりと現状を把握しなくてはなりません。さらに、たとえば、一頭の雌のウミガメを、卵という資源をもたらしてくれる存在と見るか、またもうすでに繁殖能力の衰えた食肉として利用すべき資源と見るか、というような、持続可能な利用に対するさまざまな視点を検証してゆかねばならないのです。多くの国の場合、捕獲に関する規定は、個体群の中の間違った部分を対象にしています。成熟した繁殖可能なウミガメを犠牲にして、まだ成熟していない個体を保護しているからです。卵の採集については、合法的に採集された卵の中に保全すべき種の卵(採るべきでないもの)が紛れ込んでしまう、というような疑いがある場合、やはり問題が生じてきます。また、この卵の採集に関わるプログラムは、毎年採集を続ける一方で、十分な比率の卵が孵化するように保護、確保できるような、柔軟なものでなくてはなりません。

ウミガメの研究を援助する

私たちが持っている、ウミガメの生態に関する知識は、まだ不十分であり、孵化した仔ガメがどれくらいの確立で成体にまで育つか、またその寿命など、多くの課題を控えています。全ての完全な情報が、保護や管理についての決定に際して、必ずしも必要というわけではありませんが、健康への影響や、繁殖率の低下につながる原因、または自然環境におけるウミガメの生態学的位置などに関するさらなる研究は、なおも必要とされています。例えば、過去10年間、科学者たちは、全てのウミガメ種(特にアオウミガメ)の成長に悪影響を及ぼす、腫瘍に似たフィブロパピロマ(ウミガメの疫病)の脅威に対して、一層の危惧を抱くようになりました。病原菌や汚染物質、気候の変化(温暖化)がおよぼすウミガメへの影響も、明らかにしてゆかねばなりません。激減してしまった個体群が、数多く生存していた頃と比べ、自然環境の中で同じ機能を果たしているかどうかを明らかにするのは不可能ですが、研究では、ウミガメの卵やその殻は、海岸の植物の根に栄養を供給し、砂浜の生態系の安定に重要な役目を果たしており、アオウミガメが食料としている海草についても、定期的にウミガメによって刈り取られた方が、その生産性が上がることが分かっています。

一般への普及と教育を促進する

世界中に生息する多くのウミガメが生き延びてゆくためには、沿岸域で暮らす人々による、日々の援助が欠かせません。ウミガメの保護活動に対する理解と、高い評価を、多くの人に共有してもらうための普及と教育は、地域的あるいは国際的な、保護活動の基盤となるものです。例えば、ギリシャでは、ウミガメ保護団体「アーケロン」が開発したプログラムにより、毎年何千人もの学生や観光客が、ウミガメを見に海岸を訪れるようになりました。これらの取り組みにより、ウミガメ保護に対する関心が急激な高まる中、ギリシャ政府は国内におけるアカウミガメの重要な産卵場所を、国立海洋公園に指定することを決定しました。また、開発する立場の人々や、産業経営者、そしてマスコミを対象とした普及活動も必要です。ウミガメの危機的な状況を解決していくために最も大事なのは、ウミガメに対する知識を深め、必要性を理解してもらうことなのです。

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REFERENCES

History and Culture

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(9) Le Dien Duc and Broad, S. 1995: TRAFFIC Bulletin 15(2).

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