活動トピック

持続可能な漁業の推進

魚や貝などの水産物は、獲り尽くしたりしなければ、いつまでもその恵みを受けることが出来ます。しかし、利用の仕方をひとたび誤れば、その自然の恵みも失われてしまいます。海の環境と私たちの食を守る上で、今、水産資源の「持続可能な利用」が大きなテーマになっています。WWFではMSC(海洋管理協議会)やASC(水産養殖管理協議会)の認証制度の普及などを通じた、適切な資源管理の促進に取り組んでいます。

世界の水産資源の危機

私たちが普段消費している魚や貝、エビやカニなどの多くは、豊かな自然の海の賜物であり、日本人の暮らしにとっても、身近で馴染み深いものです。この、魚や貝などの水産資源は、陸上の動物と同様に卵や子を生み、繁殖するので、再生する量や速さを考えながら利用すれば、いつまでも「持続可能」な形で、その恵みを受けることが出来ます。

(C)WWF-Canon/Miche lGUNTHER

しかし、乱獲や、資源を生み出す母体である海の環境を壊すような形で、水産物を獲ったりすれば、資源は枯渇し、再生する力も失われてしまいます。そして今、世界の海では、特にこの「獲りすぎ」が大きな問題になっています。

世界の水産物の漁獲量は、この半世紀の間に、飛躍的に増えてきました。
1950年に2,000万トンだった漁獲量は、1980年までに3倍に増加。1980年代の半ばまでは、右上がりに上がってきました。そして、増え続けてきたこの漁獲の現状は、世界の水産資源の状態を、明らかに悪化させることになりました。
その結果、1980年代の後半以降、漁獲量が頭打ちになっています。

1974年から2009年までの水産資源の状態を比べてみると、健全な資源状態の水産資源が占める比率が確実に下がり、一方で、枯渇の危機にあるものが増えてきています。

  • 【図1】 世界の水産物漁獲量出典
    出典: FAO; The State of World Fisheries and Aquaculture 2012
  • 【図2】 世界の水産資源の動向
    出典:FAO ;The State of World Fisheries and Aquaculture 2012を基に作成
    豊富(開発に余地) 豊富(開発に余地)
    ほどほど(限界まで利用) ほどほど(限界まで利用)
    枯渇(過剰に利用) 枯渇(過剰に利用)

日本の状況は?

それでは、日本周辺の水産資源はどうでしょうか。
水産庁の資料を基に見てみると、枯渇しているものが41%で4割を占めており、豊富なものは19%で、2割に満たない状態であることがわかります。
世界の海と同様に、日本の水産資源も非常に危機的な状況にあるということです。

日本の漁獲量は、2009年で420万トンで、中国、ペルー、チリ、アメリカ、インドネシアに次いで世界第6位。かつてはもっと上位だったのが、徐々に国内の漁業が衰退してきた結果ですが、それでもまだ6位を維持しています。
しかも、水産物の輸入金額は、135億ドルで、アメリカの140億ドルに次いで世界第2位。日本は、水産資源を獲る国としても、輸入する国としても、重要な国なのです。
世界の漁業資源の現状を考える時、日本人の水産物の消費がいかに大きな意味を持っているか、責任を負っているかが分かります。

  • 【図3】 日本周辺の水産資源の現状
    資料:水産庁平成24年度魚種別系群別資源評価(高位→豊富、中位→ほどほど、低位→枯渇と置き換えた。)

44魚種 86系群・海域

資源管理の問題

世界的に起きている、水産資源の危機問題。
これを解決するためには、漁業の方法をふくめた、資源管理の徹底を行なう必要があります。

通常、世界でも、日本でも、科学者が国や国際会議の場などで、一定期間内に漁獲してよいその総量(ABC limit)を勧告します。この勧告は、科学者が、資源の現状や回復力を考え、資源を維持する上で許容できる、と判断して提言するものです。

しかし、この科学者の勧告が、そのまま漁獲可能な漁獲枠(TAC)として、決定されるわけではありません。
漁業に携わる国際機関や各国政府は、漁業者の短期的な利益を優先するあまり、この勧告を上回る、つまり、予め利用しすぎていると分かっている量の漁獲枠を設定してしまうことが多くあるのです。

資源の枯渇が心配されているマグロや、日本近海の水産資源の複数の魚種についても、科学者の勧告よりも大きい漁獲枠が与えられてしまっています。

しかも、資源状態が悪い魚種ほど、科学者の勧告よりも多い漁獲枠が与えられてしまっている場合も多く、この状態が続けば、資源状態はなおさら悪くなる悪循環におちいることになります。これは、消費者だけでなく、長期的には漁業者にとっても困ることになるのです。

  • 【図4】 日本の水産資源の現状
    科学者が勧告した漁獲量の上限(緑)と、実際に割り当てられた漁獲枠(紫)の比較。魚種により、科学者の勧告よりも少ない漁獲枠が設定されているものと、実際の漁獲枠が勧告を上回る量で設定されているものがある。(スケトウダラは日本海北部系群と太平洋系群のみ)
    下の信号の青は資源状態のいいもの。黄色がほどほど。赤が枯渇しているもの(同じ魚種でも、海域によって資源状態が異なるものがあるため、一つの魚種に複数の「色」がついている場合がある)。 科学者の勧告を上回る漁獲枠が与えられている資源に資源状態の悪い「赤」信号が多いことがわかる。

魚種別に見る水産資源の現状と問題

その他の問題

ダイナマイト漁

乱獲や資源管理の問題以外にも、海の環境を悪化させ、その資源を枯渇させてしまう問題は数多くあります。

その一例が、ダイナマイト漁という漁です。海外では、ダイナマイトを海中に投げ込んで爆発させ、死んで浮いてきた魚を拾い集めて、売ったり、食べたりする、こういった漁法が行なわれている例があります。

ダイナマイト漁には、ガラス瓶に火薬を詰めたものが使われますが、この方法では、サンゴ礁なども破壊されてしまい、魚もすめなくなってしまいます。一時的にたくさんの魚は獲れるものの、再生産が非常に難しくなる破壊的な漁業であり、持続可能な海洋資源の利用も不可能にしてしまうものです。

ダイナマイト漁と破壊されたサンゴ礁
(C)WWF-Canon/Jurgen FREUND

混獲

漁業による生態系への影響としては、「混獲」の問題があります。
これは、漁をする際に、目的以外の生物を網や針などの漁具にからめて、誤って獲ってしまうことです。アホウドリなどの海鳥、イルカやクジラなどの鯨類、そしてウミガメ類など、中には絶滅の危機にある海の野生生物も、数多くこの混獲の犠牲になっています。

また、本来獲る必要がなく、商業的にも価値の無い魚なども、混獲されたものはただ捨てられてしまうケースが数多くあります。また、サメのように、漁獲した後、高く売れるヒレの部分(フカヒレ)のみを切り取って、身を海に捨ててしまう例もあります。

毎年、混獲の犠牲になっている海の生きものは、膨大な数になると見られており、海の環境を悪化させる大きな要因としても、問題視されています。

c WWF-Canon / Michel GUNTHER

混獲された商品とならない魚は、食べられるものでも海に捨てられる。獲る必要の無い多くの海の生きものが、こうして廃棄されている (C) WWF-Canon/Mike R.JACKSON

c WWF-Canon / Michel GUNTHER

漁具に絡まってしまったウミガメの一種のオサガメ。爬虫類であるウミガメは、肺呼吸をするため、長時間海から上がれないと溺死してしまう。 (C) WWF-Canon / Michel GUNTHER

増大する養殖水産物

乱獲や漁業による海洋環境へのダメージ。世界で海の水産物の漁獲量が頭打ちになっている一方で、養殖による水産物の生産量は近年増大しており、総生産量の約半分を占めるほどになっています。

2050年には、世界の人口が現在の72億人から96億人まで増加すると予想される中で、養殖業は安定的な食糧供給の観点からも、引き続き拡大が見込まれます。

しかし、こうした水産養殖業には、問題があるケースも少なくありません。
たとえば、養殖場を作るために干潟やマングローブなど沿岸の自然が破壊されてしまったり、養殖場から出される排水や廃棄物が、富栄養化や有害物質による環境汚染を引き起こし、土地や河川、海の環境を変えてしまうことがあります。

また、海外から持ち込まれて養殖されていた魚などが、養殖場から逃げて外来種となり、野生種と交配して遺伝子を汚染したり、病原菌をばらまいてしまうこともあります。

さらに、養殖であっても海の漁業資源に悪影響が及ぶケースもあります。魚種によっては、その元になる卵や稚魚が、自然の海から大量に獲られたり、養殖魚の餌となる魚粉を作るため天然魚が大量に使われているからです。
実際、漁獲される天然の魚全体の3分の1は、魚粉や魚油に加工され、その多くが養殖魚の餌などに使われているといわれています。

養殖業にとっても健全な海洋環境は不可欠なものなのです。

海の恵みをいつまでも!

水産資源の管理や海洋環境の保護は、養殖業も含めて、漁業を営む人々にとって、損をするものではなく、長期にわたり漁業が続けられるという面で利益に繋がるものです。

しかし、資源管理や海の環境にも配慮した、しっかりとした、まじめな取り組みをしている漁業というものは、それなりにコストが掛かります。その上、違法な、また資源や環境を犠牲にして漁獲された、ただ単に安いだけの水産物を消費者が選ぶようなことがあれば、そのような漁業者は、まじめにやっているだけ損をしてしまい、次第に漁も続けられななくなってしまいます。

その解決策としてWWFなどは、しっかりと資源を守るための取り組みをした水産物が、一目で分かるラベルを付けて「これならば資源や生態系に配慮した、安心して食べられる魚だ」ということを示し、消費者がそれを選べる、世界的な仕組みを作りました。
それが、海のエコラベル「MSC」の漁業認証制度や「ASC」の水産養殖認証制度です。

これらの仕組みが広がれば、まじめな取り組みをしている漁業者や養殖生産者が、いつまでも漁を続けることができ、消費者もいつまでも魚を食べられる、ということになります。

(C)WWF-Canon / Isaac VEGA

MSCI0263
http://www.msc.org/

MSCの認証を受けたスコットランドの漁業者
(C)WWF-Canon /Edward PARKER

 

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