WWF「企業の温暖化対策ランキング」プロジェクト第4弾『小売業・卸売業』は低スコア。環境コミュニケーションにも課題
2017/06/23
記者発表資料 2017年6月23日
1.小売業・卸売業30社の温暖化対策の取組みを21の指標で評価。他26社は環境報告書類がなくランク外
2.長期目標を持つ企業がなく、全体的に、過去3業種(電気機器、輸送用機器、食料品)より低スコア
3.長期目標を立て、ライフサイクルを通じた排出削減と再生可能エネルギーの積極活用が求められる
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は、「企業の温暖化対策ランキング」プロジェクトにおける報告の第4 弾として、本日、『小売業・卸売業』に属する日本企業56社の調査結果を発表しました。
順位 | 企業 | 【総合得点】 (100点満点) | ||
---|---|---|---|---|
【目標・実績】 (50点満点) |
【情報開示】 (50点満点) |
|||
第1位 | イオン | 61.1 | 20.8 | 40.3 |
第2位 | ローソン | 57.3 | 11.5 | 45.8 |
第3位 | 日立ハイテクノロジーズ | 54.5 | 17.7 | 36.8 |
第4位 | キヤノンマーケティングジャパン | 53.8 | 18.8 | 35.1 |
第5位 | ヤマダ電機 | 51.6 | 27.6 | 24.0 |
重要7指標
- 長期的なビジョン
- 削減量の単位
- 省エネルギー目標
- 再生可能エネルギー目標
- 総量削減目標の難易度
- ライフサイクル全体での排出量把握・開示
- 第3者による評価
総合点は、イオンが第1位となり、以下 ローソン、日立ハイテクノロジーズ、キヤノンマーケティングジャパン、ヤマダ電機と続きました。全21指標のうち、特に重要な7指標について見ると、1位となったイオンは「ライフサイクル全体での排出量把握・開示」、「第3者による評価」で満点を獲得しています。なお、全56社のうち、2016年に環境報告書類の発行がない26社は評価の対象から除外し、残りの30社について評価を行いました。
小売業・卸売業の平均点は、34.1点となり、過去の3業種(電気機器48.7点、輸送用機器46.7点、食料品44.8点)を大きく下回る結果となりました。過去3業種では、1位の企業はいずれも80点を超えていましたが、本業種では1位のイオンでも60点台前半にとどまりました。長期目標(ビジョン)を掲げている企業は1社もなく、総量および原単位の両方で排出削減目標を掲げる企業も1社もない結果となりました。また、再生可能エネルギーの導入目標を立てている企業も1社にとどまっています。
業界全体の特徴として、環境報告書類を発行している企業が少ないことも分かりました。今回、環境報告書類を正式に作成していたのは、全56社のうち22社でした(これ以外に、8社がアニュアルレポート類を環境省などのガイドラインを参考に作成しているため、計30社を評価対象とした)。過去3業種は9割前後の企業が環境報告書類を作成していたことを考えれば、本業界は「環境コミュニケーション」をもっと活発に行う必要があると言えます。
一方で、自社の温室効果ガスの排出量データに対し、第3者機関による保証を受けている企業の割合は33%(30社中10社)と高めであり、排出量データの信頼性を高める取り組みは過去の3業種よりも進んでいることが分かりました。
パリ協定で示されたように、世界の平均気温の上昇を2度未満に抑えるためには、「Science Based Targets」イニチアチブに参画するなどして、科学的な知見に基づき、長期的な視点に立った取り組みが求められます。過去3業種で、高スコアとなった企業の多くは長期目標を掲げていました。小売業・卸売業においても、長期目標を掲げ、ライフサイクルでの排出削減を行い、再生可能エネルギーの利用を拡大することが重要です。
WWFジャパンは、今後も各産業分野について、評価を進め、その結果を発表することで、企業の取り組みを促していきます。
- ※お詫び
2017年7月14日、今回の報告書の調査対象企業に2社、漏れがあったことが判明したため、小売:ビックカメラ(ランク外)、卸売:トーホー(22.6点)の2社を、本報告書に追加いたしました。上記に伴い、本報告書の調査対象企業を54社から56社に修正いたしました。また、この修正により、平均点が引き下ったため、偏差値60以上の第1グループに「ヤマダ電機」が繰り上げられました。訂正してお詫びいたします。
関連情報
各業界の報告書はこちら
お問い合わせ先
WWFジャパン 気候変動・エネルギーグループ
Tel: 03-3769-3509 / Fax: 03-3769-1717 / Email: climatechange@wwf.or.jp
※WWFジャパンの報道資料のメール配信をご希望の方は、press@wwf.or.jpへご連絡ください。