「つながり・ぬくもりプロジェクト」の2回目の報告会を開催しました
2012/03/22
2011年3月11日の東日本大震災を受けて、2011年4月4日に始まった「つながり・ぬくもりプロジェクト」は、被災地に自然エネルギーを支援することを目的としたプロジェクトです。WWFジャパンも幹事団体として加わっています。2012年2月22日、発足から11ヶ月間の活動を報告する会を、都内で開催しました。
「つながり・ぬくもりプロジェクト」の1年
未曾有の被害をもたらした東日本大震災をきっかけに、自然エネルギーの普及を目指す団体が集まって始まった「つながり・ぬくもりプロジェクト」。その活動も、1周年を迎えようとしています。混乱が続く被災地を、太陽光発電、太陽熱温水器、バイオマスエネルギーの各担当が走り回り、少しでも早く被災者の皆さんに安心を届けようと尽力してきました。
はじめのうちは疑心暗鬼だった被災者の方々も、設置されたその日から役に立つ自然エネルギーに接してその威力に目覚め、次々と要望が上がりはじめました。そして季節が廻るにつれ、刻々と変化する被災地の状況。秋になり日が短くなると、復電したはずの被災した市街地も、山寄りの仮設住宅地も真っ暗な闇に沈み、防犯や通学のための街灯のニーズが切実になりました。
そんな一つ一つに応えてくることができたのも、寄付を寄せてくださった多くの方々や企業のおかげです。そしてまた、1年という時間が過ぎても、まだまだ「つながり・ぬくもりプロジェクト」の力を必要としている被災地区が多いのも、厳然たる事実です。
そこでプロジェクトでは、3月11日の大震災1周年を前に、今までの実績を報告するとともに新たな支援を呼び込むために、一般向けの報告会を開催しました。
報告会を開催
2012年2月22日、東京・千代田区の日比谷図書文化館に、このプロジェクトの関係者が集まり、発足から11ヶ月間の活動のまとめをし、進捗状況をお伝えする報告会を開きました。
寒い中、つながり・ぬくもりプロジェクトに関心のある方々が、80名以上集まってくださいました。このプロジェクトには、WWFジャパンも幹事団体として参加しており、第2部のパネルディスカッションではコーディネーターを務めました。なお、プロジェクト事務局は、NPO法人環境エネルギー政策研究所内におかれています。
岩手県気仙郡住田町での活動
このプロジェクトでは、東北の広範囲に自然エネルギーを支援してきましたが、報告会では、特に大型の支援となった、住田町での活動に光をあてました。
ここは津波で甚大な被害をこうむった陸前高田市、大船渡に隣接する山の町で、3市町合わせた“気仙郡”として長年、交流が盛んだった土地です。今回の事態にも、町長を初め町のスタッフは翌朝すぐに被災地に駆けつけ、救援活動に当たりました。
仮設住宅の建設も、そんな救援活動の一環として、町有地を確保して急ピッチで進められました。仮設住宅用の土地不足が大問題となった今回の震災でしたが、住田町では4月初めには、一般用93戸、被災者診療に当たる医療関係者用17戸分の土地確保が終わり、入居申し込みの受け付けも開始されました。
住田町の仮設住宅110戸は、すべて木造です。報告会にやってこられた多田欣一町長は、「ほかのプレハブの仮設住宅から珍しがられるけれども、日本では木造住宅が当たり前であり、“なぜ、木造住宅ではいけないんですか?”という気持ちがする」と述べられました。費用もほかの仮設住宅にくらべて、半分程度で済んだということでした。
住田町では、町有林を含む約1万ヘクタールの森林がWWFジャパンも推進するFSC(森林管理協議会)森林認証を取得しています。多田町長は、仮設住宅を出て、新たに住宅を建てる際は、FSCの木材を用いた住宅にしてほしいと希望されていました。住田町には、原材料を調達する際の環境への配慮という点からも、すぐれたFSCの木造住宅を建てる条件がそろっています。
FSCを介した繋がりがあったWWFジャパンが、住田町の震災対応の仮設住宅建設の話を聞き、せっかくならエネルギーも環境配慮型に、と「つながり・ぬくもりプロジェクト」を紹介したのが、今回の活動に結びつきました。早い段階で仮設住宅用の街灯30基を寄贈し、また三井物産環境基金の助成金を得て、2011年の8月から12月までかかって、110戸すべてに太陽熱温水器を設置したのです。
大船渡で被災し、この仮設住宅に暮らす岩森美奈子さんは、その快適さについて話されました。夏は、屋根に載せた太陽熱温水器でできるお湯だけでもお風呂に入れたことや、冬も光熱費が安上がりにつくことに感謝していました。
木の住宅は居住性がよく、癒しの効果も認められるようです。津波から命からがら逃げ延びた岩森さんのご家族には、心の安まる仮設住宅となっています。
太陽光の明かりは希望の光
自然エネルギー事業協同組合レクスタの桜井薫さんは、避難所に「つながり・ぬくもりプロジェクト」によって設置された太陽光発電の電灯がともると、被災者のみなさんから歓喜の声があがり、おもわずもらい泣きしたと話されました。
バイオマス産業社会ネットワークの泊みゆきさんは、岩手県吉里吉里地区などからバイオマス活用への応援要請を受けて動きました。避難所に薪ボイラーを設置し、お風呂を設けることで、3週間ぶりに被災者が入浴できるようにしたのです。
温かいお風呂につかれるようにしたことは、被災者の方々に大きな安堵感をもたらしました。
バイオマスは、薪ストーブ、ペレットストーブ、バイオマスボイラーなどの形で、被災地にエネルギーを供給しています。このプロジェクトがもたらす明かりやおふろは、困難な生活を送る皆さんの希望につながるものとなっています。
企業との連携
また、このプロジェクトには、企業も資金援助や物的支援をしています。
中でも三井物産株式会社の1,000万円の寄付が、初動に大きな役割を果たしました。三井物産株式会社は今回の震災に際し、総額4億円にもなる支援金を各地に贈り、「幅広く柔軟にスピード感を持って」東日本大震災復興助成を立ち上げ、現地で活動する団体にも67件8億5,700万円の助成を決めています。
住田町の仮設住宅の屋根に載せられている太陽熱温水器も、三井物産環境基金の助成によって、全戸への支援が実現したものです。太陽光発電のパネルと架台は、すべてソーラーフロンティアからの寄贈です。
その他にもたくさんの企業や団体の連携で、現場に即した支援ができているのが「つながり・ぬくもりプロジェクト」の特長です。
これからの活動の展望
ぐるっ都地球温暖化地域協議会の三井元子さんは、住田町の太陽熱温水器がどのくらい節約効果を持つのか、岩森さんたちの協力を得て、今後、モニターしていく予定です。
家財を失った入居者にとって、光熱費の低減という大きな生活支援に結びつく自然エネルギーが、仮設住宅の標準装備になるよう提案していきたいそうです。
また太陽熱のシステムは、仮設住宅がなくなったあとでも、農業や畜産に転用することができると話しました。自然エネルギーが被災地で産業として育ち、雇用をつくりだし、よい経済的循環を生むことが、将来のために重要となってきます。
被災地支援をきっかけに、自然エネルギーが日本においてもっと広まり、持続可能で災害にも強い地場エネルギーが定着すること、それが「つながり・ぬくもりプロジェクト」に参加している人たちの共通の願いです。
報告会の資料
関連情報
- 「つながり・ぬくもりプロジェクト」法人向け説明会を開催しました
- WWFジャパンの「暮らしと自然の復興プロジェクト」
- 東日本大震災「つながり・ぬくもりプロジェクト」について
- 東日本大震災「つながり・ぬくもりプロジェクト」が目指す、復興への自然エネルギー活用