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【シリーズ】改正!種の保存法(2)問い直される動物園・水族館をめぐる新制度

日本に生息する、また日本がかかわっている希少な野生生物を守る法律「種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)」。2017年2月、環境省によるその法改正案が閣議決定されました。「種の保存法」はどう変わるのか。日本の自然保護の課題がどう改善され、また何が課題として残されているのかを検証するこのシリーズ。第2回目は、動物園や水族館の役割をめぐる新たな制度に注目します。

野生動物の飼育繁殖と再導入

今国会(第193回通常国会)の衆参両院で審議される、「種(しゅ)の保存法」の改正案。

日本に生息している希少な野生生物、また日本が消費などを通じてかかわっている海外の野生生物と生態系を保全することを目的とした同法の改善は、今もまだ多くの課題を抱えています。

2017年の法改正についてお伝えするこのシリーズでは、今回、改正のポイントの2つ目として、動物園や水族館の果たす役割と、そのあり方についての課題と改善について紹介します。

国内外を問わず、絶滅の恐れのある野生動物を保護する手段の一つに「再導入」という方法があります。

数が減少した野生動物の一部の個体を捕獲し、飼育下で繁殖させ、それを野生に返す、というもので、最もイメージしやすい保護活動といえるかもしれません。

しかし、これは決して簡単なことではありません。

人工的な飼育には、専門的な知見や十分な設備、そして最終的に野生に戻すまでの綿密な保護計画が必要とされ、それが伴わない場合は、飼育個体を死なせてしまう事態も生じます。

また、保護目的であっても捕獲を繰り返せば、野生の個体数を圧迫することになり、絶滅の危機に拍車をかけることにもなりかねませんし、もともと生息していなかった場所に放てば、遺伝的なかく乱も引き起こします。

特に調査や研究が不十分で、生態などがよく分かっていない野生動物の場合は、その危険性が高くなります。

動物園、水族館の社会的役割

こうした飼育繁殖の取り組みを行なう知見と設備を持つ場所の一つに、動物園や水族館があります。

動物園や水族館に求められる社会的な貢献としては、まず、生きものに対する関心や知識を育てる場としての役割が挙げられますが、時間をかけた観察が必要とされる、動物の繁殖行動や冬眠といったライフサイクルなどの研究においても、重要な役割が期待されています。

これらの施設での観察や研究により、知られていなかった動物の新しい生態が、明らかになることも少なくありません。

特に、自然の状態ではなかなか観察や調査が難しい、熱帯林などに生息する野生動物の場合は、このような飼育下で得られた知見が、保護活動の上でも拠り所となります。

実際、日本に限らず、世界には動植物の学術研究で名高い動物園や専門の施設がいくつもあり、野生動物の保護にも貢献している例があります。

しかし、現在の日本の動物園、水族館では、希少種の保護増殖が施設ごとで独自に計画され、実施されている例が多く、その水準も公的に定められたものがありません。

何より、こうした希少種の保護増殖施設は設立や運営についての明確な規定がなく、飼育施設として満たすべき要件なども、法的に定められていません。

日本では絶滅が心配されているライチョウ。高山にすむため、飼育環境の再現が難しい

奄美大島の固有種ルリカケス。個体の繁殖だけならば飼育下でも可能だが、野生に戻すには別の困難な取り組みが必要とされる

つまり、飼育繁殖に関する研究計画を持ち、成果も出している施設と、不適切な飼育環境下で動物を単に見世物として扱っているだけの施設が、公的なルールの下で明確に区別されず、動物園・水族館という言葉でひとくくりにされているのです。

創設された「認定希少種保全動植物園等」制度

そうした中、今回の「種の保存法」の法改正では、「認定希少種保全動植物園等」に関する新制度を制定する案が提案されました。

これは、動物園、水族館や植物園に求められる、「生息域外保全」の促進を目的としたもので、特に環境省が定める基準を満たした動物園、水族館や植物園を認定する、というものです。

誤解の無いようにお伝えしておきますが、これは動物園や水族館の運営、新設そのものを許可、認可する制度ではなく、劣悪な飼育環境の施設を排除、禁止するためのものでもありません。

「種の保存法」は、飼育下にある動物の福祉を直接の目的とはしていないため、こうした措置にはまた別の法整備が必要となります。

したがって、今回の新制度はあくまで、一定水準以上の飼育繁殖プロジェクトを推進している施設を、数ある動物園・水族館の中から公的に認定し、相互の協力をよりやり易くするものです。

それでも、この制度で認定された施設は、公的にもその取り組みが認められたということになるため、他の施設との差や区別は現状よりも明確になることが期待されます。

ビルマホシガメ。ペットとして人気のあるリクガメの仲間も、さまざまな場所で飼育されている。繁殖させる例も多い。

インドネシアのバリ島に生息するカンムリシロムク。一時は数十羽まで激減し、絶滅寸前となったが、飼育繁殖と野生への再導が奏功し、絶滅を回避した一例となった。

認定のルールは法改正後、環境省が作成する見込みで、詳細については未定ですが、飼養・譲渡の目的・計画、施設や実施体制、展示の方針といった内容が組み込まれると考えられています。

また、今回の種の保存法の改正案第48条には、飼育している動物を動植物園間で譲渡をより円滑に行なうよう改善することも、新たに記載されました。
各施設単体ではない、こうしたネットワーク化された取り組みが広がること。それが、新制度設立の目的と意義です。

残された課題

しかし、この「認定希少種保全動植物園等」に関する制度についても、課題が無いわけではありません。

何より、認定のルールの詳細はまだ明確になっておらず、環境省が今後定めるところの内容が、具体性に欠けていたり、実効性の乏しい内容となれば、こうした取り組みも、期待される成果を生むことはないでしょう。

またこの改正では併せて、動物の飼育や譲渡などについて記録することも、義務付けられることになりましたが、何をどこまで記録するか、その内容についてもまだ明らかになっていません。

特に、動物園や水族館で飼育されている動植物は、その多くが日本に生息していない種です。

これらを海外から入手する場合は、その経路も明確にする必要があります。 万が一にも、違法に捕獲された動物などが紛れ込むようなことになれば、「生息域外保全」という試みが、逆に絶滅危機種をさらに追い込むおそれも出てきます。

改善の方針は示されたものの、実質的な効果については、いまだ不透明な2017年の「種の保存法改正」。

WWFとトラフィックでは、その詳細が確かな保全の効果につながるよう、これからも働き掛けを行なっていくとともに、飼育繁殖された個体が、いずれ戻されることになる海や森、そもそもの自然環境を、保全する取り組みを続けてゆきます。

*この「【シリーズ】改正!種の保存法」では、次回は3つ目の改正のポイントとして、象牙などを含む「国際希少野生動植物種の流通管理強化」をお伝えいたします。

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