辺野古・大浦湾の埋立て工事中止と計画見直しに関する緊急要請


2017年2月10日

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
環境大臣   山本 公一 殿
防衛大臣   稲田 朋美 殿
沖縄・北方担当大臣 鶴保 庸介 殿
沖縄防衛局長 中嶋 浩一郎 殿

(公財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
 会 長  德 川 恒 孝

拝啓 時下、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

鹿児島県から沖縄県にかけて連なる南西諸島は、多くの固有種を擁した、世界的にも貴重な自然環境が残る地域です。古くは1980年にWWFがIUCN(国際自然保護連合)やUNEP(国連環境計画)と共に策定した「世界環境保全戦略」でも優先して保全すべき地域の一つとして明記され、WWFジャパンでも1983年より、この地域の自然環境や野生生物の調査研究と保全活動に取り組んで参りました。

とりわけ、サンゴ礁に代表される沿岸の生態系は、観光資源として、また地域の文化や伝統を育み、生活の糧を得る場として、人々の暮らしにおいても重要な役割を果たしております。その中でも特に沖縄本島沿岸の辺野古・大浦湾は、アオサンゴ群集が生息する世界の北限に位置し、過去10年間には35種にのぼる新種の甲殻類が発見された、その希少性が国際的にも認められた海域の一つになっております。

またこの海域は沖縄県内最大の海草藻場が広がる海であり、日本の環境省およびIUCNの「レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)」のそれぞれにおいて、絶滅の危機が強く指摘されている海生哺乳類のジュゴンの餌場となるなど、ほぼ国内最後の重要な生息海域となっています。

現在、この地域ですすめられている米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に伴う辺野古新基地(普天間代替施設)建設計画は、これら重要な生態系を劣化、消失させ、希少種の絶滅を引き起こす懸念があり、WWFジャパンも計画の見直しを求める要請を重ねてきました。

そうした中で今回、本格的埋め立て工事に向け、汚濁防止膜の設置と、そのためのコンクリートブロックの海底への投入等の作業が着工されたことは、国際的な観点から生物多様性の保全に取り組む団体としては、大変遺憾に思います。

自然や野生生物は、限りあるものであり、同時に一度失われれば、取り戻すことのできないものでもあります。南西諸島の豊かな自然(奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島)の、世界自然遺産への登録への道が見え始めたこの時こそ、その自然の重要な要素を構成する辺野古・大浦湾の多様な姿と生態系の機能を維持する決断を下すことは、国際社会と未来に対する日本の責任を果たすことでもあると考えます。

WWFジャパンはここに改めて、対象海域の生物多様性保全の観点から、直ちに現在進められている工事を中止するとともに、関係省庁はもとより、地方自治体や地元関係者の意見を踏まえた上で、十分な予防的措置の検討と、現在進められている基地計画の見直しを要請いたします。

敬具

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