地球温暖化についてのIPCCの予想シナリオ


地球の温度が上昇し世界中でさまざまな影響がすでに現れていますが、これからの地球はどのように変わってしまうのでしょうか。地球温暖化に関する科学の最高峰の報告書である国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書(2014年発表)は、これからの100年間で、どれくらい平均気温が上昇するか4つのシナリオを提示して予測を示しています。それによると、最も気温上昇の低いシナリオ(RCP2.6シナリオ)で、おおよそ2度前後の上昇、最も気温上昇が高くなるシナリオ(RCP8.5シナリオ)で4度前後の上昇が予測されています(出典:IPCC第5次評価報告書)。

気温上昇を「2度未満」に抑えられるか?

2050年頃と2100年頃における世界平均地上気温の変化予測

気候変動による深刻な影響を抑えるためには、「地球の平均気温の上昇を、産業革命の前と比べて「2度未満」に抑える」ことが必要だと考えられています。

国連会議に集まる世界各国の政府も、その必要性を認め、気温上昇を「2度未満」に抑えるために、それぞれ自国内での温暖化対策に取り組むことが求められています。

しかし、この「2度未満」を達成するのは容易なことではありません。

地球温暖化に関する科学の最高峰の報告書である国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書(2014年発表)は、これからの100年間で、どれくらい平均気温が上昇するか4つのシナリオを提示して予測を示しています。


  • RCPとは?
    代表的な温室効果ガスであるCO2は、いったん大気中に排出されると、森林や海洋など生態系に吸収されない限り、大気中に残り続ける。つまり大気中に累積していくということである。平均気温の上昇は大気中の温室効果ガスの濃度に比例する。大気中に温室効果ガスが累積すればするほど、気温が上昇するということになる。
    RCPとは、代表的な濃度経路を意味する英語の頭文字をとったもの。2.6や8.5などの数字は、地球温暖化を引き起こす効果(放射強制力と呼ばれる)を表す。数値が高いほど、温室効果ガスの濃度が高く、温暖化を引き起こす効果が高いことを示す。

最も気温上昇が高いシナリオRCP8.5では、2100年に2.6度から4.8度の気温上昇が予測されています。

ついで、RCP6.0シナリオでは、1.4度から3.1度の上昇。次のRCP4.5シナリオでは、1.1度から2.6度の上昇。

そして一番気温上昇予測が低いRCP2.6シナリオで、0.3度から1.7度の気温上昇が予測されています。

ただし、この予測は、直近(基準期間1986年から2005年の平均)に比べての気温上昇の予測幅です。

産業革命前(1850年から1900年までの平均)から比べると、1986年までに気温はすでに上がっていますので、真に「2度未満」を達成しようと思うならば、これらの上昇予測に、その気温上昇分(0.61度)を足して、その実現方法を考えねばなりません。

したがってこの4つのシナリオは、おおよそRCP2,6 シナリオが産業革命前に比べて2度程度の上昇が見込まれるシナリオ、そして一番高いRCP8.5シナリオは、産業革命前に比べると4度前後も上昇してしまうシナリオということになります。

このままでは「4度シナリオ」まっしぐら

現在の世界の温室効果ガスの排出量の実情は、IPCCが示した4つのシナリオのうち、最も気温が高くなる4度シナリオ (RCP8.5シナリオ) に一致しています。

つまり、このまま今の石油や石炭に依存した経済活動が続くならば、100年後には4度前後上昇する世界が待っていることになります。

これを2度未満に抑えるためには、2度シナリオ(RCP2.6シナリオ)の排出量まで下げてゆかねばなりません。

そのためにはIPCCは、2050年には世界の温室効果ガスの排出量を、「2010年に比べて40% から70%削減する必要がある」と明示しています。

現在の地球の人口は約70億人、2050年には90億人を超えると予測されています。途上国も含めたすべての地球上の人間が飢餓に苦しむことのない人間らしい生活を求める中、排出量を40%から70%下げていかなければならないという挑戦が人類を待ち受けているのです。

上昇温度によってさまざまな変化が...

IPCCの第5次評価報告書は、このまま気温が上昇を続けた場合、社会や環境にさまざまな影響が生じるリスクの可能性を指摘しています。


A:暑熱や洪水など異常気象による被害が増加

B: サンゴ礁や北極の海氷などのシステムに高いリスク、
  マラリアなど熱帯の感染症の拡大

C:作物の生産高が地域的に減少する

D:利用可能な水が減少する

E: 広い範囲で生物多様性の損失が起きる

F: 大規模に氷床に消失し海面水位が上昇

G: 多くの種の絶滅リスク、世界の食糧生産が危険にさらされるリスク


1986~2005年の世界の平均気温を基準とする。影響は、気温変化の速度や今後の対策の内容により異なる。(IPCC AR5 WG2 SPMを基に作成)

多くの野生生物や未来の人々への影響をできる限り抑えるためには、「今すぐ」温室効果ガスを減らす取り組みを始めることが必要です。

WWFは、気候変動の深刻な影響を抑えるため、「地球の平均気温の上昇を産業革命の前と比べて「2度未満(可能ならば1.5度未満に)」に抑える」ことをめざしています。

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