「アムールヒョウ保護戦略」の実現にむけて


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

2013年11月にロシアでシベリアトラとアムールヒョウの保護に関する大統領令が署名されたことを受け、その中の最重要項目の1つであった「アムールヒョウ保護戦略」が同月19日に承認されました。さらに、この保護戦略を実施するため、著名な科学者や専門家がWWFの支援を受けて「行動計画」と「ヒョウ再導入プログラム」を作成。極東ロシアにおける森の自然と希少な野生生物の保全活動は、新たな一歩を踏み出しました。

具体的な保護活動の実施へ

ロシア極東地域に分布するヒョウの亜種アムールヒョウは、かつては沿海地方のほぼ全域に生息していましたが、たび重なる狩猟・密猟や森林伐採によって減少し、現在は「ヒョウの森国立公園」に50頭程度が生息するのみとなっています。

そうした中、WWFはヒョウの生態学に関する最新のデータと、その生息環境の保全活動を通じて得た知見をもとに、2011年から著名な専門家らと協力して「アムールヒョウ保護戦略」の草案を作成。

ロシア大統領府のセルゲイ・イワノフ長官の支援も得て、現場のさまざまな保護活動を調整し、一つの統一された戦略論理にすることを目指してきました。

そして、2013年11月19日にロシア天然資源・環境省が、この「アムールヒョウ保護戦略」を承認しヒョウの個体数増加のための具体的な活動方針が定められることになったのです。

この保護戦略では、ロシア沿海地方の南西部だけでなく、隣接する中国と北朝鮮でもヒョウの個体数を増やすことを目標にしており、世界の動物園からアムールヒョウをもらい受け、ラゾフスキー自然保護区に再導入して、第二の存続可能な個体群を作ることも計画。

また、これを推し進めるために、極東ロシアの科学者や専門家が2022年までの詳細な計画を作成しました。

計画実行に向けた布石

この「行動計画」と「再導入プログラム」を、沿海地方の希少な大型哺乳動物と、アムールヒョウ保護に関する、2つの専門家のワーキンググループが2013年12月13日に承認。

さらに、沿海地方政府からロシア連邦の天然資源・環境省に提出されました。

「行動計画」の持つ大きな特徴は、アムールヒョウ保護戦略の中の特定の条項に、達成のための期限を設け、各責任者を明確にしている点です。

その主な活動は、ヒョウの森国立公園当局と、独立したNGO(非政府の民間団体)「アムールヒョウの研究、保護、回復のためのユーラシアセンター」、沿海地方政府の3者によって実施され、WWFもこの三者に対し、包括的で専門的な支援を行なっていきます。

WWFロシアのアムール支部代表ユーリ・ダーマンは、「今回改訂された新たな戦略は、行動計画やヒョウ再導入プログラムを発展させる基盤となる」と、その成果を強調しています。

7年越しの「ヒョウ再導入プログラム」の実現に向けて

もう一つの「ヒョウ再導入プログラム」については、WWFロシアは2007年からその計画案を天然資源・環境省に提出。2012年にも改訂版を提出し、承認と実施を強く望んできました。

ヒョウのような大型肉食動物を、飼育下から野生に適応させる取り組みは、大きなチャレンジですが、プログラムが上手く進めば、遺伝的にも多様な個体群が確保され、長期的な保護につながることになります。

また、このプログラムでは、飼育下にある個体だけが対象となるため、野生のヒョウの個体群に悪影響が及ぶことはありません。

WWFロシアアムール支部の野生生物プログラム・コーディネーターを務めるパヴェル・フォメンコは、再導入プログラムの妥当性について、次のように述べています。

「再導入プログラムを行なう予定のラゾフスキー自然保護区は、慎重に選ばれた場所です。生息環境の保全という観点からも、食物となる草食動物の豊富さからみても、ヒョウを繁殖させて野生に戻す場所としては、最も適しています。

そして、飼育繁殖させた個体を野生の状態に近づけてゆくためには、一つの場所で、一貫して再導入に取り組むことが重要です。

アムールヒョウは極東ロシア南部の生態系には欠かせない生きものであり、この肉食動物が多くの地域で姿を消した責任は人間にこそあるのです」

日本の消費者もアムールヒョウの絶滅の危機と無関係ではありません。

日本で購入されている建材や家具が、極東ロシアの森で違法に伐採された木材に由来している可能性があるからです。

極東ロシアの森と、そこに生きるヒョウやトラなどの野生生物を守るために、WWFジャパンでは今後も、こうした違法材の購入を抑え、持続可能な木材の調達と購入を促進するよう、企業や消費者に対して働きかけていきます。

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