今日で発効から8年「京都議定書」


国際社会が地球温暖化をくいとめることを約束した国際条約「京都議定書」。2005年2月16日にこの「京都議定書」が発効してから、8年目を迎えました。2013年は、これに加えて京都議定書の最初の約束期間から次の約束期間へと移行していく節目の年でもあります。日本の古都の名を冠したこの条約は、これまで世界全体の温室効果ガスの排出量の抑制に貢献したのみならず、各国の温暖化対策を促進させ、エネルギーと経済のあり方を大きく変える、変革の中心であり続けてきました。「京都議定書」が築いた礎の上に、世界は新しい、さらに意欲的な一歩を踏み出せるのか。今、この「京都議定書」をめぐり指摘される、懸念とその未来について、WWFジャパンは声明を発表しました。

発効から8年を迎えて

1997年12月に、京都で採択された「京都議定書」は、過去に先進国が排出した二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが、現在の地球温暖化の原因となっていることを受けて、先進国に対し、その排出量の削減を義務づけた、初めての条約です。

そして2005年2月16日は、この条約が発効し、世界が温暖化防止のため、具体的な一歩を踏み出すことを約束し、議定書が効力を持つことになった、記念すべき日となりました。

「京都議定書」が持つ意義は、先進国が温室効果ガスの排出削減を約束した、というだけではありません。議定書は、現在の国際的な、また各国内における、温暖化(気候変動)対策の手段となる、「市場メカニズム」をはじめとする、具体的な仕組みを提示してきました。

その全てが良い形で機能しているわけではありませんが、1つ確実なことは、「京都議定書」が、世界の温室効果ガスの排出抑制に、直接的・間接的に貢献しただけでなく、こうした具体的な温暖化防止のための政策の変革の中心であり続けてきた、ということです。

「京都議定書」はなぜ必要か

しかし、現状の取り組みは、決して良い結果を出すに至っていません。

そもそも、地球温暖化の基本として、世界の平均気温が、産業革命前と比べて「2度以上」上昇すると、地球の環境は深刻な被害を受けると予測されています。

1997年当時は、この「2度」という閾値自体に議論がありましたし、今ほどには影響の深刻さが広く認識されていませんでしたが、世界全体でかなり大幅な排出量削減を行なわなければ、生態系および人間社会に甚大な被害を与えるということは、既に広く認識されていました。

「京都議定書」は、まさにこの危機を克服するために求められ、成立した世界の「約束」だったのです。

それにもかかわらず、国連環境計画(UNEP)が2012年に発表した報告書によれば、「2度未満」におさえるために必要な世界の削減量は、2020年時点で80~130億トンも不足する、とみられています。

この数字は、地球の平均気温が4~6度も上昇する可能性を示したものです。これがもたらす影響の深刻さには、いかなる国も無縁ではいられません。

「京都議定書」の約束を守り、温室効果ガスの排出を抑えることは、この結果を回避するための、「最低限」の約束です。これからの未来に向けては、「京都議定書」を基礎とした、さらに新たな、積極的な意思と取り組みが、必要とされているのです。

日本と「京都議定書」

日本は、京都議定書の最初の約束期間(2008~2012年)については、地球温暖化対策推進法や「京都議定書目標達成計画」を整備し、取り組んできました。その結果、同期間については、「温室効果ガス排出量を基準年(1990年)から6%削減する」という目標は達成できそうです。

しかし、目標が達成できるとしても、実現される見込みの排出削減の水準は、決して楽観視できるものではなく、世界に誇れるものでも、他国を非難して言い逃れができる内容でもありません。

日本では「京都議定書」の意義が否定的に語られ、「第2約束期間にも参加しない」という決定がなされました。京都議定書を基礎とした仕組みは、世界の温暖化対策にとって効果的でないという判断があったようです。しかしその後、それでは、日本は「これから」どうするのかに関する全体的な計画や政策の方針は、今も曖昧な状態が続いています。

これは、すでに新しい自然エネルギーへのシフトを視野に入れ、発展の段階に入り始めている世界の経済の動きにも、遅れを取ったものと言わざるを得ません。「京都議定書の約束を守り、排出量を削減することは損だ」という考えが一部にはあるようですが、これは他国が自然エネルギー開発を急ピッチで進めてゆく中で、日本を取り残された国にするものです。お家芸であるはずの「省エネルギー」についても、もはやかつて程の優位は保てなくなっています。

日本でも、固定価格買取制度の導入に伴い、風力や太陽光などの再生可能エネルギー関連産業が活気付き始めています。こうした気候変動問題の解決につながるような、新しい雇用や発展の可能性を追求し、目指すべき未来のビジョンを掲げてゆかねばなりません。

2013年は、「京都議定書」の第2約束期間がスタートし、世界の温暖化対策も移行期を迎えます。

「京都議定書」の意義と、国際社会の中で果たすべき役割を見直し、他国の取組みを支援しつつ、新たな日本の排出量削減目標を示して、それを達成するための計画・政策を導入することを、早急に実現いくべきです。

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