どうなる?マグロ 長崎でWCPFC北小委員会(2012年)はじまる


2012年9月3日から長崎で中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の、第8回目となる北小委員会の会議が始まりました。WCPFCは、 25の国と地域が参加する、中西部太平洋のマグロ資源の保全と利用を目的とした、重要な国際機関です。WWFはこの会議にオブザーバーとして参加、マグロ、カジキ類の科学的・予防的な保全管理の推進について提言を行なっています。

どうなる?中西部太平洋のマグロ資源

世界的な問題になっている、マグロ類の過剰な漁獲。

WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)は、その問題と、資源管理に携っている世界の5つの国際機関の一つです。

しかし、2012年3月にグアムで開催されたWCPFC年次会合は、課題となっていたメバチ、キハダの過剰漁獲や漁船の増加の抑制措置の改善に失敗。

今もマグロの豊富な資源量が残る、世界的に貴重な中西部太平洋における、有効な資源管理措置に懸念を残しました。

2012年9月3日から6日まで、長崎で開かれるWCPFC北小委員会の会合は、特に北部海域のマグロ資源問題を検討する会議ですが、ここでの決定は、次回のWCPFC全体の年次会合の結果にも、大きな影響を及ぼします。

とりわけ、2012年度は太平洋クロマグロの資源評価が出され、それに基づき管理基準の策定が行なわれる、重要な年になります。

WWFはこの会合にオブザーバーとして参加、WCPFC加盟各国および事務局に対して、科学的根拠に基づき、資源が減少・枯渇する前に、保全管理を行なうことの重要性を改めて指摘しました。

日本に供給される刺身マグロ40%は、この中西部太平洋から供給されています。
マグロの国内生産者、また消費者にとって、この海域の資源問題は重要な意味を持つものといえます。今回の会議においても、マグロの持続可能な利用に向けた、積極的な合意が期待されます。

クロマグロ(Thunnus orientalis)「本まぐろ」の名で知られる。最高級のマグロとして人気がある。

世界の海のマグロ類の資源管理にかかわる国際機関。海域や魚種によって管轄が異なる。
くわしく見る


【関連資料】中西部太平洋まぐろ類委員会第8回北小委員会 (長崎、2012年9月3~6日) に対するWWFのステートメント

はじめに

世界自然保護基金(WWF)は、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)北小委員会に対し、オブザーバーとして参加の機会をいただいたことに感謝の意を表します。

マグロ、カジキ類の科学的根拠に基づいた予防的な保全管理手法の採用は、WCPFCが直面する最大の課題であり、対峙しなければならない責任を負っています。WWFはWCPFCの加盟国、参加地域、協力的非加盟国に対し、北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)およびこれまでのWCPFCに関連する会合から提出された課題および勧告に、留意を払うこと求めます。

1.漁獲戦略と漁獲制御規則

WWFは、WCPFCに対し、明確に定義づけされ、事前に全会の同意を得た漁獲制御規則を採用すること、そして事前に全会の同意を得た明確に定義付けされた資源状況指標の変化に対応できる義務措置を含む管理方針による漁獲制御規則を採用することを求めます。

2.管理基準

WCPFCは全てのマグロ、カジキ類の管理に関し正式な管理基準を採用していません。
WWFは、2009年にWCPFC科学委員会の実施方法専門家作業部会が開催した特別会合の結果に留意します。科学委員会は、2010年のWCPFCに対し、主要対象種の適切な暫定限界管理基準(Limit Reference Point)に関する勧告を策定するはずでした。

委員会による管理基準の決定については、2010年に開催された管理目標に関する会合の結果も考慮されています。しかし、WWFは、2006年以降、WCPFCにおいて管理基準がいまだ検討中であることを述べたいと思います。

委員会の正式な管理基準の採択について、再度の遅れが生じるようなことは避けるべきと考えます。

WWFは、WCPFCに限界管理基準ならびに目標管理基準(Target Reference Point)を正式に採用することを強く要望します。北小委員会においては、少なくとも太平洋クロマグロとビンナガについて、明確に決められた限界管理基準ならびに目標管理基準を検討することが、これらの資源の持続可能な管理にとって最優先事項です。

3.マグロ類

3-1 太平洋クロマグロ

WCPFCはCMM2010-04を今年改訂する必要があるにも関わらず、ISCは、予定されたスケジュールに従い、評価モデルの合意に至ること、ならびに太平洋クロマグロについて最新の科学的助言を行うことに失敗しました。

WWFはISCが十分な機能と役割を果たしていないことに強い懸念を抱いています。第12回ISC報告書の結論によると、2010年の評価予測どおり、以降、産卵親魚量(SSB)および漁獲努力量(CPUE)は減少傾向を示しており、WWFは、厳格な科学的助言が、太平洋クロマグロの局所的な過剰漁獲を避けるために重要であると考えます。

第12回ISCは、その管理助言として、太平洋クロマグロは、資源状態の不確実性が時間の経過とともに増加し、産卵親魚量が最終資源評価以降減少している可能性があるとしつつも、「2010年7月の太平洋クロマグロ作業部会会合の結論(ISC/10/Annex/07)、現在(2004~2006)の潜在的な生物学的管理基準BRPに対する漁獲係数Fの水準、そして増加傾向にあるFを踏まえ、Fの水準が2002~2004年の水準を下回ることが、特に未成魚個体について、重要である」としています。

  • WWFは、予防的手法が確認された上で、ISCが11月に新たな資源評価結果とその結果に基づく最新の科学的助言を提出するまでの間、委員会に対し、北太平洋における太平洋クロマグロに関する暫定措置として今回のISCの勧告を採択することを支持します。
  • WWFは、北小委員会に対し、ISCの新たな資源評価結果とその結果に基づく科学的助言を確認し、太平洋クロマグロの管理手法を見直すことを求めます。
  • WWFは、WCPFCに対し、改訂されるCMM-2010-04からすべての適用除外を削除することを要望します

3-2 ビンナガ

ISCは、ビンナガの資源は過剰漁獲の状態になく、また資源枯渇の状態にないとしています。
WWFは、北太平洋のビンナガに対する漁獲努力の総計が、現在の水準を上回ることのないこと、そしてCCM(参加加盟国、地域、協力的非加盟国)が北大西洋のビンナガを対象とする漁船の漁獲努力水準が増加していないことを確実にするのに必要な措置をとることを推奨します。

4 地域監視プログラム(ROP)

WWFは、最善の操業を実践するため、すべてのマグロ漁船および関連する漁船にオブザーバーが乗船することを検討し、全ての漁船を100%カバーする包括的かつ強力な地域監視プログラムROPを要請します。WWFは、WCPFCに対し、2013年までにこの地域監視プログラム目標を達成されることを求めます。

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