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【インタビュー】田中優さん 「まず変えるべきは、電気をめぐる独占の仕組みと原子力が儲かる仕組み」

【連続インタビュー】私とエネルギー 第3回: 田中優さん

WWF ジャパンでは現在、原発に頼らず、自然エネルギーによる未来づくりをめざした「自然エネルギー100%キャンペーン」を展開しています。この一環として、 さまざまな分野で活躍している方々に、日本のエネルギー問題についてのお考えやご意見をうかがうインタビューを行なっています。第3回は、未来バンク代表、市民活動家の田中優さんです。

プロフィール

東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」理事長、「日本国際ボランティアセンター」「足温ネット」理事、「apbank」監事、「一般社団天然住宅」共同代表を務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院の非常勤講師。著書(共著含む)に『原発に頼らない社会へ』(武田ランダムハウス)『地宝論』(子どもの未来社)『世界から貧しさをなくす30の方法』『天然住宅から社会を変える30の方法』(合同出版)『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』(扶桑社新書)『戦争って、環境問題と関係ないと思ってた』(岩波書店)ほか多数。


まず第一に「発電と送電の分離」が必要

― 田中さんが原発問題に関わるようになったきっかけを教えてください。

チェルノブイリの原発事故の頃に、ちょうど2人目の子供が産まれたんですが、その子は生後すぐに入院してしまったんです。その時は気づかなかったけれど、後々になってチェルノブイリの放射能を含む雨が日本にも降っていた時期に重なっていることに気づいたんです。

その頃、僕はまだ勤めていて、家でも料理はいつも僕が作っていました。それで、カミさんに、妊娠中はカルシウムが不足するから牛乳を飲め飲めと勧めていたんですね。ところが、チェルノブイリ事故の影響で、実は牛乳にも放射性物質が含まれていました。子供が入院したのは、そのせいかもしれないと思ったんです。

もちろん、放射能の影響って確率的影響だから、立証することは不可能なんですが、それでも自分にとっては、放射能の値が高い牛乳をカミさんを経由してお腹の子供に届けていたことが、とてもショックでした。自分が子どもを守りたいと思いながら、子どもに放射能を届けてしまっていた。もう二度とこんなことがないようにと考えて、原発問題、エネルギー問題に関わり始めたんです。

― チェルノブイリ事故の際も、脱原発の世論が盛り上がりましたよね。当時と今と、何か違いを感じられることはありますか?

盛り上がり方は一緒ですね。だから、大事なのはこれからです。前回は失敗でした。あの運動が成功していたら、福島原発の事故は起こってないですから。僕は3つ、反省点があると思っています。1つ目は、危機感を煽りすぎたこと。2つ目は難しい話をして、マニアの運動にしてしまった。身近なリアリティのある運動にし続けることができなかったことです。3つ目は、原発を進める社会の仕組みを、問題にできなかったことです。

原発というのは、儲かるんです。その儲かる仕組みをそのままにしていたら、絶対、復活します。だからなんで原発が儲かるのか、その仕組みが重要だったんです。その第一は、発電と送電の分離がされていないからです。だから、ブラックボックスの中に原発のコストを隠すことができてしまうんです。

また第二に、総括原価方式という仕組みで、原発に金をかければかけた分だけ、利益が上がる形になっています。かかった経費に3%利益分を上乗せして、電気料金として徴収できるようになっています。たとえば、広告宣伝費。テレビ・ラジオ・新聞で原発の宣伝をすれば、それも経費として電気料金に費用を上乗せできることになっています。テレビ・ラジオ・新聞を支える最大の広告主、スポンサーは電力会社です。

もう一つは金利です。電力会社は信用が高いから、本来は低い金利で借りられるんです。ところがわざと長期プライムレートという高い金利でお金を借りています。さらに借りる金利が高ければ高いほど、さきほどの適正報酬率3%の利益率を上げることができるんです。金融機関から、高い金利で金を借りれば借りるほど電力会社は儲かる仕組みになっているんです。その関係から儲けている金融機関が電力会社の株主になっているんです。

だから、今や市民は世論調査で82%が脱原発を希望しているのに、株主は89%が原発推進です。この相互の利益を生む仕組みに手をつけないと解決できないんです。仕組みがそのままだったら、原発は数基は止まるでしょうけど、また絶対復活します。

― 仕組みを変えていくには、最初にどこから手を付けるべきでしょうか。

発電と送電の分離が一番大きいです。発送電の分離をすると、送電線が電気のプールになるので、そこが定価で電気を買い取ります。そうなると実際には高くついている原子力の電気は入れられなくなります。

それに電気事業法をみると、電気事業者は免許制です。送電線も免許制。だから電気事業法から送電線の免許の規定を削って、国有化しちゃえばいいんです。その免許を発行しているのは経済産業省ですから、法律から免許の項目を削ってしまえば、必然的に送電は国がやる、ということになります。

今、民主政権は、発送電の分離を含めて全面的に見直す、と言っているので、市民側は、「忘れてないぞ、実現しろよ、諸外国でもやっているんだから」と、例えば署名運動で一般に広めるとか、政治家にロビーイングするとか、そういう仕組みを変えさせる活動が必要だと思います。

僕は仕組みが一番重要な問題で、その仕組みをおいて自然エネルギーに進むというのは、順序が逆だと思っています。

― 自然エネルギーを導入するのは、まだ早いということでしょうか?

順序が大切なんです。来年の7月から、再生可能エネルギー買取制度が始まるでしょ。ところが、7月になる前に、石油の値上がり分や、今回の事故の賠償額が、電気料金に上乗せされることになっています。その後に、自然エネルギー分が上乗せされることになります。でも、市民に表示されるのは、自然エネルギーの分であがりました、という部分だけ。そうなるとみんな、自然エネルギーなんかやるから高くなるんだと思ってしまう。

それでは順序が違うんですよ。発送電の分離を先にやらないといけない。そこが分離されれば、送電会社が発電会社から電気を仕入れることになるので、発電コストが明らかになるんです。不都合なものはブラックボックスに入れちゃうなんてことはできなくなる。

家庭の電気消費量って、日本全体の22.1%(2010年、全国データ)なんです。ところが、電気料金はそれよりずっと多く、払わされている。つまり、不都合なコストは、一般の家庭の電気料金に乗っているんです。この後は、もっとひどくなりますよ。原発事故の賠償額の部分であるとか、石油の値上がり部分であるとか、これもみんな家庭に乗せられて、しかも、表示されませんから。

電気の消費量はまだまだ減らせる

― 今、日本では、脱原発と温暖化防止の話が、かなりこんがらがっているように思います。この状況について、どんなご意見をお持ちですか?

電気の消費を、半分に減らせばいいんです。そうすれば、原発がどうこう、というのと関係なく、CO2 の削減もできちゃうんです。原発は所詮、設備量で20%、発電量で30%に過ぎないわけでしょ。50%電気の消費量を下げてしまえば、もちろん、原発以外のものも、止めることになりますから。そうすれば、CO2減るんですよ。

電気の77.9%は、事業者が消費してるんです。その事業者の消費を、簡単に減らす方法があります。今は、事業者は使えば使うほど電気料金が安くなる仕組みなんです。なぜ、そんなて仕組みになっているのか。それは電気使用量のピークが延びないと、発電所をつくれないから。電力会社が儲からないからなんですね。

でも今年、電力会社の方から、節電してくれと言いだしました。それでみんなLEDに変えちゃった。これは今後もずっと消費量が減るということですよ。だって、努力忍耐で減らした分ではなく、設備で減らした分ですから。2010年の東京電力の最大電力消費のピークは、約6000万kWを超える部分だったんです。今年は4500万kW。全然違うでしょ。

事業者が減らすことはまだまだできます。今年のこれっぽっちの努力で約22.5%も、ピーク消費量が落ちているわけですよ。半分まで落とすのは、現実的に可能ですよ。電気を使えば使うほど高くなる電気料金にすればいいだけ。別な言い方をすると、節電すればするほど、得になる電気料金にしてやればいい。そうすれば事業者は、思いっきり節電しますよ。

しかも、世界一優れた省エネ製品は、ことごとく日本製品です。高温の地熱を利用する際に、世界中最も優れてるのが日本のタービンです。あの100%自然エネルギーのアイスランドは、17基の地熱発電所で8割の発電をしているんですが、うち14基が日本製です。

太陽光についても、岡山大学の先生が作った「グリーンフェライト」は、従来の100倍効率のよく発電します。2013年の実用化をめざすと言ってますが、そんなうまくはいかないと思いますが。それでも技術の方が追いついたんです。バッテリーも、日本が一番優れたバッテリーを全部作っているから。

― それほどの技術があるのに、なぜ日本では自然エネルギー導入や省エネが進まないのでしょうか。

日本は、無理だ、不可能だと言いたがる人たちが多いのに加えて、自分たちの利権を守るために、効率のいいものがでてこないようにしている部分があるんです。世界一優れた電気自動車もバッテリーも、なかなか使われませんし。

今や各社が従来では考えられないほど高性能なバッテリーを開発しています。2011年から売り出される予定ですが、家庭で入れてそれだけで電気を自給したら、家庭が自分の家で電力をまかなえるようになって、電力会社から自立できちゃいますからね。

電力会社の支配から地域が独立していく

― 田中さんが、将来の日本のエネルギーについて、こうなるといいな、という理想の姿とはどのようなものですか?

僕としては、なんとしてもこのタイミングで、電気をめぐる独占の仕組みと原子力が儲かる仕組みを、変えなければいけないと思っています。そこが変えられれば、半分の電気消費で済むから、原子力もいらないし、石炭火力もいらない。

特に天然ガスの発電は柔軟性がある上にコストも安く、効率もいいし早く建てることが可能だから、急激にピークが増加しても問題なくカバーできる。これは発電効率で原子力の倍ほど高く、価格で数分の一なんです。自然エネルギーにシフトさせた残りの部分を天然ガスのコンバインド発電で対応すればいい。

さらに地域ごとで「スマートグリッド」を進めて、電力会社の支配から、地域がどんどん独立していけばいい。日本以外の国では、スマートグリッドが最大投資額の分野になっているんです。スマートグリッドができれば、少なくとも家庭需要には送電線をつなぐ必要がなくなります。地域ごとで自立すればいい。

僕がいつも言うのは「タテ・ヨコ・ナナメ」の解決策です。タテは、直接政治家にアピールするなどの上下の動き、ヨコは署名など、多くの人に知らせていく動き、ナナメは全く別な解決策を探すこと、つまりオルタナティブです。スマートグリッドのような。

電気が解決したら次は熱を解決すればいい。日本の家庭のエネルギー消費は先進国で最も少ない上に、消費エネルギーの3分の2が「熱」です。その部分はペレットストーブ、ペレットボイラー、薪ストーブ、薪ボイラーで解決可能です。日本は森林国ですから。捨てられている木材だけで十分に供給可能ですから、地球温暖化なんて余裕で解決できます。それをやれる技術が日本にはあるんだから。現実にやってしまえばいいんです。

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