命の海の、命が危ない

WWFの活動

活動トピック

パーム油 私たちの暮らしと熱帯林の破壊をつなぐもの

あなたが今朝食べたパンやマーガリン、顔を洗った石鹸、化粧品、おやつのチョコレートやスナック菓子に、オランウータン、トラ、アジアゾウなどが住む貴重な熱帯林を犠牲にして作られた産物が使われているかもしれません。その産物とは、「パーム油」です。

パーム油って何?:毎日知らずに使っています

パーム油はアブラヤシの果肉から得られる油脂で、大豆油を抜き世界で最も多く生産される植物油脂です(アブラヤシの種からは性質の異なるパーム核油が得られますが、ここではそれも含めて考えます)。

今日スーパーマーケットにある商品の半数近くにはパーム油から得られた油脂や派生物が使われています。食料ではマーガリン、即席めん、マヨネーズなどからクッキー、チョコレート、スナック菓子、アイスクリームに至るまで、また食用以外でも石鹸、洗剤、塗料、化粧品、化学製品などに幅広く使われているのです。

いままで気づかなかったとしても、無理ありません。これほど広く使われるようになったのはここ20~30年のことです。

それに日本では加工食品等の原材料表示は単に「植物油脂」とすればよいので、消費者には知るすべがないのです。

いまや日本で使われる植物油のうち、なたね油に次いで2番目に多く消費され、国民一人当たり年に4~5リットルも消費していることになります。

表1<データ>
世界の生産量の推移 単位100万トン

(Source: Oil World, MPOB, MPOC)

20111122_02.jpg
20111122_03.jpg

スマトラ島の熱帯林が伐採された跡。こうした場所にプランテーションが作られる

20111122_04.jpg

スマトラ中部のリアウ州のプランテーション。森だった場所に作られた。アブラヤシの寿命は80年くらいといわれる。

20111122_01.jpg

現地の搾油工場。周りはプランテーションに囲まれている。

なぜパーム油なの?
アブラヤシプランテーションと熱帯林破壊

近年世界でパーム油の需要が急速に伸びており、今後ともさらなる需要の拡大が見込まれています。

その主な理由としてパーム油は植物油脂の中でもより多用途に利用できること、価格が比較的安価であること、中国・インドなどアジア諸国での人口増加や生活水準の向上による消費量の増大が見込まれること、更にバイオ燃料としての期待が拍車をかけているのです。

アブラヤシはアフリカが原産地でその生育には赤道周辺で一定以上の雨量が必要とされ、農園開発が可能な国は東南アジア、アフリカ、中南米の国々などに限られます。

これまで特にマレーシア、インドネシアを中心に大規模なアブラヤシ農園開発が行われ、その過程で多くの熱帯林が伐採され、焼き払われています。

その結果、地域の環境や社会に次のような深刻な問題を引き起しています。

20111122_05.jpg

プランテーション。一見緑の森だが、全てアブラヤシの木。多様な生物は生きられない。

20111122_06.jpg

収穫されたアブラヤシの実。道路側に出し、それを回収してゆく。

環境面
  1. 熱帯林、特に炭素貯蔵量の多い泥炭湿地林の消失
  2. 絶滅のおそれのある野生生物、生物多様性の減少
  3. 伐採、森林火災による温室効果ガスの大量排出
  4. プランテーション開発と栽培による土壌、水、大気の汚染
社会面
  1. 森林に依存する先住民等との軋轢(あつれき)
  2. 農園における劣悪な労働環境、人権侵害
  3. 周辺住民と生息地を奪われた野生動物(ゾウ、トラなど)との衝突

WWFは何をしているの?:パーム油産業を持続可能に

違法伐採対策、乱開発の規制と監視、保護区の設定など生産国政府への働きかけや希少な野生生物の保護など個別の取組だけでは、アブラヤシ農園開発のように世界各地で急速に展開しつつある問題に対応するには限界があり、消費者の力を借りた取り組みの必要があります。

そこでWWFは2004年に他の組織と協力して、パーム油の生産から加工製品の流通に至るまでのステークホルダーを巻き込んだ「持続可能なパーム油」の生産と利用を促進する非営利組織、「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)を設立しました。

RSPOは新たに貴重な熱帯林等を伐採することなく、環境や労働者の権利に配慮した持続可能なアブラヤシ農園のあり方を示し、それに沿った農園や搾油工場を認定する制度を構築しました。

WWFは生産国においては農園のRSPO認証取得を、消費国においては認証パーム油への切り替えの促進を通じ、パーム油産業をより環境への負荷の少ない持続可能な産業へと転換させようとしています。

私たちには何ができるの?:消費者からのメッセージ

RSPOに参加するプランテーションや関連企業等は増えつつあり、2013年2月末には1100団体を超え、認証パーム農園の面積も200万haを越えました。

その結果RSPO認証油の生産も増加しつつありますが、問題はいまだRSPOに対する認知が十分でないこともあり、必ずしも認証油に対する需要が供給に追いついていないことです。

いま、パーム油産業を持続可能な産業へ転換することを加速させるために、最も求められているのは、消費者からの強い意思表示です。

具体的には消費者の立場から身の回りのパーム油を使用した製品に関心を持ち、持続可能に生産されたかどうかわからないパーム油製品を拒否し、積極的にRSPOのような認証製品を求める声を企業に伝えることです。

2011年から、RSPO認証マークが定められ、製品にその表示ができるようになり、消費者は、RSPO認証マークの製品を選択できる、社会的な仕組みが整いました。

企業の取り組みと同時に、消費者がこうした認証製品を選び、購入することが、持続可能な製品を世界の市場に広く流通させ、自然環境を守ってゆく上での、大きな力になるのです。

関連情報:RSPOについて

あなたの支援で、できること。たとえば… 資源の持続可能な利用を促す WWF会員が125人集まれば、企業が自ら、違法伐採の木材商品を購入していないか、チェックできるウェブサイトを作ることができます。 「あなたの支援でできること」を見る