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発電と送電の分離は、再生可能エネルギーの導入に不可欠

福島第一原子力発電所の事故を起こした東京電力について、その発電と送電部門を分離する議論が出始めています。2011年5月には政府閣僚による発言が相次ぎ、政府と与党内で電力会社の地域独占体制を見直す動きも出始めました。これまで大手の電力会社が独占してきた発電と送電の分離。この実現は、日本国内で再生可能な自然エネルギーの大幅普及実現につながる、大きな可能性を秘めています。

電力業界の独占体制にメスが

枝野幸男官房長官は、2011年5月16日の記者会見で、東京電力の送電部門分離について「選択肢として十分ありうる」と発言しました。またその前の週末には、玄葉光一郎国家戦略相も「発電と送電の分離など、電力事業の形態の議論を(国が)妨げることはない」と述べるなど、政府と与党内で電力会社の地域独占体制を見直す動きが出始めています。

この発電と送電の部門を別にする(分離する)、という体制の移行には、非常に大きな意味があります。

日本では基本的に、国内を10の地域に分け、それぞれ一社の巨大な電力会社(北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、関西電力、中部電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)が電力供給を独占する体制が守られてきました。

これはもともと、日本政府が電力を国家の管理下に置き、半官半民で運営してきた歴史的な経緯により生まれた運営方法で、東京電力などが一般の民間企業と異なった点を多く持っている理由も、そこにあります。

しかし、この方法は、高い独占性の保持につながることから、さまざまな問題を引き起こしてきました。
発電と送電の両方を、一社が独占・管理するという点も、その問題点の一つです。
実は、このことが、日本において、太陽光や風力などの再生可能な自然エネルギーの大幅な導入を妨げる要因になってきました。

日本の自然エネルギーは伸びない?そのワケ

日本では、1990年代に電力の自由化が始まったことで、新規の事業者が発電事業に参画できるようになりました。しかし、実際には大手の電力会社の支配力が強すぎ、伸びていないのが現状です。

この背景には、新規で「発電」を行なう会社がいくら立ち上がっても、結局は「送電」を全て大手電力会社が握っているため、思うような事業展開が出来ないためです。

新規の電力会社がどれほど風力や太陽光で発電した電力を、消費者に届けようと思っても、その地域の大手電力会社に代金を支払って送電網を使うほか、手段がありません。

この送配電網の利用料が高い上に、求められる品質の電力を供給できなかった場合にはペナルティ料金が課されるなど、新規の電力会社には費用負担が重くのしかかります。

このため、日本の電力という市場では、自然エネルギーに関する新規事業者がアイデアや力を発揮できない、硬直化した事態が当たり前になっています。

送電と発電を分離し、電力市場の自由化を

現在、議論の対象になり始めている、東京電力の発電部門と送電部門の分離は、こうした古い電力市場のあり方を、大きく見直す可能性を秘めています。

一つの電力会社ではなく、別の組織が送電網を管理するようになれば、送電網は利用しやすくなり、新規発電事業者の参入も容易になるでしょう。

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ただし、自然エネルギーは、今の段階では、固定価格買取制度などで計画的に補助を行なって、コストが下がるように仕向けていく政策も大切です。

自由化されただけの電力市場では、石油・石炭・ガスなどの化石燃料を行う事業者の方が、コスト面ではまだまだ有利だからです。

しかし、それでも「自由化」が重要なのは、自然エネルギー事業者が算入すること自体のハードルを下げ、なおかつ電力消費者(家庭も工場も両方含む)が、自然エネルギーを「選ぶ」ことを可能にするためです。

いずれにしても、将来的に、日本で再生可能な自然エネルギーを飛躍的に拡大するためにも、この発電と送電の分離は欠かせない大切なステップといえるでしょう。

従来の10の大手電力会社による地域独占で安定した電力を供給する体制は、戦後の日本の高度成長を支えてきました。
しかし今は、今後の日本のエネルギーのあり方を考え、原発に頼らずにすむように、自然エネルギーを飛躍的に成長させるために、新たな段階を目指すべき時です。
発送電の分離は、その最初の一歩です。

まずは東京電力の発送電分離を実施して、いずれ他地域に広げ、さらに地域間での電気の融通が容易になるよう、基幹送電網の増強をしていくことが急務です。

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