アムールヒョウの森にビデオトラップを設置!


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

日本から飛行機でわずか約2時間の極東ロシア。日本海に面し中国にもほど近いこの一帯には、広葉樹や針葉樹の豊かな森が広がります。ここに生息するアムールヒョウやシベリアトラ(アムールトラ)は、森の豊かな生態系を象徴する野生動物。しかし近年、違法伐採や森林火災などのために森は劣化し、その影響は野生生物だけでなく地域の住民にも及びます。WWFは現在、わずか個体数が40頭といわれるアムールヒョウ保護のため、自動のビデオカメラを使った調査を始めています。

保護の基礎を担う生息調査

極東ロシアの森に生息するヒョウの亜種アムールヒョウは、その中のさらに限られた一部の森にしか生息していません。その推定個体数は、わずかに40頭ほど。長期的な生存を可能にするため、生息に適した森林を広く保全し、密猟対策などを行なうことが急務とされています。

このアムールヒョウの保護活動の基礎となるのは、生息域や生息数の調査です。広大な森の中で、ヒョウが生息していることが確認できれば、そこは優先して守るべき森といえるからです。このような調査により得られた情報は、保護活動や国立公園の制定への提案に生かされています。

WWFは、アムールヒョウの生息地を含む一帯の国立公園(保護区)化を目指し、極東ロシアで森林保全に力を入れ、こうした調査活動にも取り組んできました。

その調査方法の一つに、足跡を調べる方法があります。この調査が行なわれるのは、主に冬の季節。地面に十分な雪が積もってから、少なくとも5日間待ち、その後、雪上に十分残った足跡を追跡して行なわれます。

ビデオカメラトラップを使った調査

しかし、天候不順によって、足跡の調査がほとんど出来ない場合もあります。
2010年から2011年の冬がそうでした。よいタイミングがつかめないまま、3月を迎えてしまい、雪が解け始めてしまったのです。

そこで、足跡の調査は次の冬まで延期されることになりましたが、2011年は新たに別の展開もありました。
2月から、森に自動ビデオカメラを設置し、そこを通るヒョウを撮影する取り組みがスタートしたのです。

これは、WWFがWildlife Conservation Society(WCS)と協力し、2006年から行なってきた自動カメラ(静止画)を使った調査を発展させたものです。

アムールヒョウの毛の模様は、人間の指紋と同じように一頭ずつ異なります。そのため、自動カメラやビデオカメラでの撮影に成功すれば、個体を識別することが可能です。

現在までのところ、ビデオカメラの映像はアムールヒョウの姿を捉えていませんが、ツキノワグマなど他の野生動物は撮影されました。

そして、正式な調査結果によるものではないものの、2011年になってから、複数の仔を含めたアムールヒョウが生息している可能性が高い、という情報が寄せられた地域もあり、自動ビデオカメラの今後の調査への貢献が期待されます。

「アムールヒョウの森」国立公園設立を!

調査によって、数の少ないアムールヒョウが、確実に繁殖していることが確認できれば、これは吉報です。
WWFでは、こうした情報を確実に集めながら、これまで取り組んできた違法伐採や森林火災の防止、シカやイノシシなど獲物となる動物の個体数増加など、劣化した森にかつての豊かさを取り戻すための取り組みを進めています。

その一つのゴールは、アムールヒョウの生きる森林の環境を、適切に管理し、国立公園、つまりもっとも保護レベルの高い保護区に指定することです。

長年の取り組みの甲斐があり、2008年には、アムールヒョウの森の周辺にある、3つの保護区を管轄する組織が、将来的に保護区を統合し、一つの国立公園として管理していくことに合意しました。

しかし、その後の最終的な調整はまだ終わっていません。
また、十分な管理を行う予算、スタッフのないような名義だけの形式的な国立公園ではなく、適正に管理される、意味ある国立公園をつくる必要があります。

そのためには、アムールヒョウの調査はもちろんのこと、土地の管理者など利害関係者や周辺に暮らす人々の理解を得ることも欠かせない取り組みとなります。
WWFは、貴重な森林を、一日も早く機能する保護区とすることを目指し、地域の行政や住民など関係組織との協力を、これからも進めてゆきます。

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極東の森での森林火災の跡。

ヒョウを撮影するために設置したビデオカメラに映ったツキノワグマ。

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ヒョウの森を守る現場のスタッフ。
残された森に豊かさを取り戻すことも活動の
一つです。

 

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