IPCC、再生可能エネルギーに関する報告書を週明けに発表


IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、2011年5月9日に『再生可能エネルギー源と気候変動の緩和に関する特別報告書』を発表する予定です。これに先立つ5~8日までの間、アラブ首長国連邦の首都アブダビで、100カ国以上の政府が、政策決定者のための要約版の内容に関して交渉しています。

この報告書は、900ページに及び、164の再生可能エネルギーに関するシナリオを比較し、再生可能エネルギーの動向と今後の見通しに関する、これまでのどの分析よりも包括的で、極めて重要な内容になっています。

IPCCは、再生可能エネルギーが今後最も急速に発展していくエネルギーであると予測しています。特にエネルギー消費の大幅な増加が予測される途上国を含む世界全体にエネルギー供給が可能という点で、化石燃料を凌駕するとしています。ほとんどの再生可能エネルギー、殊に太陽エネルギーは、今後数十年で、費用も十分下がってくることも指摘しています。

この点について、WWFは、同様の見通しを持っています。近年の再生可能エネルギーへの大幅な投資の風潮と、風力と太陽エネルギーのコスト低下は、再生可能エネルギーの拡大へのよい入り口です。実際に、エネルギー効率改善と再生可能エネルギーに代わる代替案はないといっても過言ではありません。従来の技術で採掘可能な範囲の石油とガスの産出量が縮小している現在、世界は化石燃料への新規投資はやめて、早急にクリーンで持続可能なエネルギー源へシフトしていくべきです。

再生可能エネルギーを、脇役程度の存在から、主要なエネルギー源へと変貌させていくためには、世界のあらゆる地域で、大規模な導入を支援する政策と資金が必要となります。IPCCの報告書は、再生可能エネルギーの大規模導入に障壁となっているものを示すと同時に、再生可能エネルギーが先進国・途上国合わせたすべての国にとって、大きな可能性と便益があることを明示したのです。

WWFは、2011年2月に、2050年までに100%再生可能エネルギーで賄う社会を可能とする『エネルギー・レポート; The Energy Report』(以下、WWFエネルギー・レポート)を発表しました。これまでに発表された再生可能エネルギーに関する見通しの中でも、最も野心的なシナリオです。このレポートは、エコフィス(世界有数の気候・エネルギーに関するコンサルタント企業)の詳細なシナリオを元としており、再生可能エネルギーの大きな可能性と、今ある技術を基本としたときの障壁を示しています。

WWFエネルギー・レポートは、今回のIPCCによるシナリオ比較には間に合わず、IPCC報告書のシナリオ分析には含まれていないのが残念ですが、再生可能エネルギーの大幅な普及は、トップレベルのエネルギー効率改善と合わせると、もっと可能性が拡大すると指摘しています。IPCC報告書は、急速な再生可能エネルギー普及の可能性を示した画期的なリポートではありますが、WWFエネルギー・レポートは、さらに大胆な将来予測を付け加えています。これほど多様なエネルギー安全保障とエネルギー効率改善に取り組み、同時に温暖化を危険な閾値以下に抑えるためには、国際社会は対策に、素早く取り組んで行く必要があります。

今、日本では、未曾有の震災と原発事故で、今後のエネルギーのあり方が最も問われています。今こそ、安心で安全なエネルギー供給と同時に温暖化をも抑える社会へと変革していくときです。

WWFジャパンは、IPCCの再生可能エネルギーに関する報告書の発表を歓迎するとともに、WWFエネルギー・レポートのシナリオを日本でも実現させることをめざして、大幅なエネルギー効率改善と原発の段階的廃止による、100%再生可能エネルギー社会を訴えていきます。

なお、現地アブダビには、WWFのステファン・シンガー(Stephan Singer)をはじめとするエネルギー専門家が行っています。週明けにIPCCが最終的に発表する予定の「政策決定者向けの要約」の内容については、改めてお知らせいたします。

関連情報

WWFの“The Energy Report”(英語)

問合せ先

WWFインターナショナル エネルギー担当 ステファン・シンガー=Stephan Singer(Mobile +32 496 550 709, Stephan.singer@wwf.panda.org

WWFジャパン 気候変動プログラム(Tel:03-3769-3509、climatechange@wwf.or.jp) または 
広報担当 新井秀子(Tel:03-3769-1713)

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