地球温暖化対策「主要3施策」の実効性ある導入を!


与党民主党は2010年12月17日に「地球温暖化対策の主要3施策に関する提言」を発表しました。この提言書の中で民主党は、自ら推進してきた、地球温暖化対策税、固定価格買取制度、排出量取引制度という、地球温暖化を解決するための主要な3施策を形骸化、または導入延期する姿勢を示しています。これを受けてWWFジャパンは、最終決定がされる前に、政府に対し、あらためて主要3施策の実効性ある導入を求める声明を発表しました。

民主党の地球温暖化対策の後退

民主党が2009年夏に政権交代をした際、現政権は、新しい中期目標として「2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比25%削減する」という目標を国際社会に発表し、それを達成するための法案の作成に着手してきました。

世界の注目が集まり、WWFも含めた多くの環境NGOや市民は、この1年間、その取り組みに期待を持ちながら見守ってきました。

しかし、ここ数週間での民主党の「後退」ぶりに、深い失望の声が高まっています。

当初は大規模企業を中心とする産業界とは距離をおいていた民主党が、急速に産業界に接近してきました。そして、政権交代を果たした選挙で公約したマニフェストに書かれた地球温暖化対策のほとんどが、今、骨抜きにされようとしています。

特に、12月17日に発表された民主党の「地球温暖化対策の主要3施策に関する提言」にある、地球温暖化対策税、固定価格買取制度、排出量取引制度の3つの主要施策の形骸化や導入延期は、マニフェストに期待を寄せた国民に対する裏切りと言っても過言ではありません。

ここが問題! 民主党の「地球温暖化対策の主要3施策に関する提言」

地球温暖化対策税

税制改正大綱の中で2011年10月に導入が決定された地球温暖化対策税は、税率も低く、環境に関する税本来の役割である「課税自体による化石燃料消費の抑制」は、ほとんど見込めません。ガソリンの値段にして、リットル当たり1円にも満たない税率では、消費の抑制は期待できないからです。

また、民主党の提言では、現政権が政権交代を果たした際に掲げた、「2020年までに25%削減」という目標が、恣意的に無視されています。同提言のなかで言及しているのは、「エネルギー基本計画」(2010年6月18日閣議決定)にある「2030年までに30%削減」という目標だけです。

これでは、日本が国際社会に向けて発表した「25%削減目標」を形骸化させてしまうことになります。
また、エネルギー基本計画に地球温暖化対策税の税収を紐付けすることで、本来推進するべき再生可能エネルギーよりも、リスクの高い原子力発電に偏った投資が助長される危険性が高くなるという懸念があります。 

固定価格買取制度

民主党の提言では、太陽光発電や風力など再生可能エネルギーの普及を目的とした「固定価格買取制度」の「平成24年度からの」制度導入は、あくまで「目途」とされています。それだけではありません。さらに延期の可能性すら示唆されています。

また、この制度の「検討」過程で、産業界などに過度に配慮することによって、再生可能エネルギーの実質的な普及効果が望めないものになってしまう可能性が高まってしまいます。 

排出量取引制度

排出量取引制度の導入については、これまでも、導入への反対の声が産業界から挙げられ、その結果として、「総量」としての排出量ではなく、「原単位」での目標設定など、実質的な削減に繋がらない制度になってしまう懸念がありました。

しかし、ここにきて、民主党の提言では、その制度の導入自体が「検討」の対象となってしまうという形で、さらなる議論の後退を見せています。

排出量取引制度に関する負の影響が色々と挙げられていますが、そのほとんどは、他の手段で同じ削減目標を達成しようとすれば、直面しうる課題です。それは、この制度をどのように設計するか、つまり制度設計の中で対処すべき問題なのです。これでは、そもそも削減目標を達成する意志がないと写ってしまいます。
期限付でない、無期限の「検討」は、絶対に避けなければなりません。

脱炭素社会へと方向づける主要3施策

以上の「主要3施策」は、日本を脱炭素社会へと方向づける重要な役割を果たすことが期待されています。

これらが形骸化・導入延期されることは、民主党の低炭素社会確立へ向けた意志の後退の表れです。

これほどまでの後退は、すでに閣議決定されているにもかかわらず、継続審議となっている「地球温暖化対策基本法案」の成立すら、反故にしようとしているのではという懸念も抱かせるものです。

このような後退は、日本社会の脱炭素化を遅らせ、日本が地球温暖化対策の分野で競争力をつけていくことを妨げてしまうでしょう。

それだけではありません。この「後退」は、国際的にも、日本の信用を失墜させ、日本が地球温暖化問題について発信するメッセージ(発言)の説得力を大幅に下げることになります。

世界を先導するという基本に立ち返ろう

メキシコ・カンクンで開催されたCOP16・COP/MOP6は、当初期待された以上の成果を生んだ会議でした。
確かに、新たな国際枠組みの構築に関しては道半ばの状況にありますが、「カンクン合意」が採択されたことによって、コペンハーゲン合意に登録された先進国の削減目標や途上国の削減行動が、国連プロセスの中に取り込まれたことは、貴重な一歩です。

カンクン会議の成果は、日本が25%削減を着実に達成していく上で不可欠な、主要3施策を早期に導入する理由にこそなれ、後退させる理由にはなりえないのです。

政府は、今一度、日本が地球温暖化対策について世界の中で先導的な役割を果たすという基本に立ち返り、政権交代した当初の約束通り、これら主要3施策を実効性ある形で、早期に導入するべきです。

 

 

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