豊かな熱帯の森が残る、インドネシア・スマトラ島。しかし、この半世紀の間に、島では森林伐採によって自然が広く失われてきました。その中で、絶滅が心配されているのが、スマトラトラです。わずか400頭ともいわれる、このトラの保護に取り組むWWFは、2010年1月、自動のビデオカメラを使った調査で、メスのトラとその仔を、世界で初めて映像として撮影することに成功しました。
世界初! 野生のスマトラトラの親子を撮影
トラの中で、スマトラ島にのみ生息する固有の亜種スマトラトラは、かつては島全体に広く生息していましたが、熱帯林の伐採や密猟により、現在は400頭ほどしかいないと見られています。
このトラの保護活動の一環として、WWFインドネシアは、動物などの動くものを感知して作動する、無人撮影のビデオカメラを森に設置し、トラをはじめとする野生生物の生息状況を調べています。
今回、WWFインドネシアは、スマトラ島中部のリアウ州およびジャンビ州に位置する、リンバン・バリ野生生物保護区、および、ブキ・ディカプル国立公園を結ぶ「コリドー(緑の回廊)」内の4カ所にビデオカメラを設置し、調査を行ないました。
このコリドーは、伐採によって小さく分断された森の間をつなぎ合わせる樹林帯の「回廊」で、森の生物多様性を維持しつつ、生き残っているトラの行動範囲を広げ、近親交配を防ぐ役割を担っています。
WWFインドネシアはこの場所で、2009年7月にも、静止画でメスのスマトラトラと、その仔トラを撮影することに成功していましたが、今回初めて、ビデオでの撮影に成功しました。その映像には、トラがカメラを鼻で探る様子が収録されています。

スマトラ島に生息するトラの亜種スマトラトラ

トラの生きる森を守ろう
WWFインドネシアは、このような自動カメラやビデオを使った調査によって、2004年以来、スマトラ島で、300点ものスマトラトラ、8,916点にのぼるさまざまな野生生物の姿を撮影してきました。
今回の調査でも、他に、オスのスマトラトラや、その獲物となるイノシシやシカといった動物が記録されています。
また、今回の撮影の成功は、分断された生息地の森をつなぎ合わせ、トラの生存の可能性を押し広げる上で、「コリドー」のような緑地帯が役に立っており、保護活動の中で、その環境を整えてゆく取り組みが重要であることを、改めて示すものとなりました。
野生のスマトラトラは今も、密猟や森林の違法伐採、アブラヤシ農園(プランテーション)の拡大などにより、危機的な状態にあります。トラの親子が撮影された、ブキ・ディカプル国立公園周辺でも、製紙会社APP社による森林伐採が続けられており、状況は予断を許しません。
これらの企業に対し森の保全を働きかけている、WWFインドネシアの森林プログラムのディレクター、イアン・コサシは、今回撮影された仔トラたちが、無事に大きくなったとしても、現状では安心してくらしてゆける場所がなくなりつつあると、危ぶんでいます。
「周辺では森が伐採されており、トラの生息地は小さくなってしまいました。トラが人間に遭遇しないようにするのも、難しくなってきています。これは、誰にとっても危険なことです」。
実際、トラが遭遇した人を襲う事故は、リアウ州各地でも起きており、そのことが、またトラが殺される理由の一つになっています。
海外でも、「Year of the Tiger」として、「寅年」を祝う機運が高まっている2010年。世界各地で取り組まれているトラ保護活動も、注目されることが期待されます。
トラの保護活動に力を入れているWWFでは、この機運を盛り上げ、スマトラトラをはじめとする世界の野生のトラの個体数を、2022年までには倍に増やすことを提言しています。


消失と分断が続くスマトラの森。まとまった規模の森は少なくなっている。
トラ保護キャンペーン実施中!
寅年の今年、WWFはトラの保護を訴え、特別寄付キャンペーンを実施しています。ぜひご協力をお願いいたします!
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