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継続を力に ~航空輸送業界での取り組み~


違法な野生生物取引は、年間3兆円(230億ドル)を超えると試算されていて、薬物、武器、人身売買に次ぐ世界で4番目に深刻な犯罪です。

移動や運搬の技術が発達した現代では、数えきれないほどの人やモノが世界各地を行き来するなか、輸送企業が意図しないまま、野生生物の違法取引の運搬手段として利用されてしまっています。

アカハラシキチョウ(Copsychus malabaricus)。2023年8月、アカハラシキチョウを含む鳥7羽を手荷物に隠匿して密輸しようとしたペットショップオーナーが逮捕された(2024年2月報道)。航空機を利用した野生生物の密輸事案は後を絶たない。
© WWF-Sweden / Ola Jennersten

アカハラシキチョウ(Copsychus malabaricus)。2023年8月、アカハラシキチョウを含む鳥7羽を手荷物に隠匿して密輸しようとしたペットショップオーナーが逮捕された(2024年2月報道)。航空機を利用した野生生物の密輸事案は後を絶たない。

ANAホールディングス株式会社(ANAHD)では、2018年度から毎年、野生生物取引を調査・モニタリングするTRAFFICと協働し、違法な野生生物輸送を撲滅するため、ワークショップを開催しています。

2024年3月4日、ANAHD本社にてウェビナーを配信する様子。
© ANAHD

2024年3月4日、ANAHD本社にてウェビナーを配信する様子。

2023年度は6回目となり、ANAHD主催のもと、成田国際空港株式会社(NAA)共催で、両社職員や関係者を対象としてウェビナー形式で開催されました。

今回は、以前より参画されている動物検疫所、東京税関の方からの情報提供に加え、IATA(国際航空運送協会)日本オフィスからの情報提供も加わり、民間セクターと行政機関の連携の重要性を確認する機会となりました。

私たちも毎年、WWFの野生生物取引監視部門であるTRAFFICとして登壇。輸送業界が果たす役割の重要性、輸送業界に求められることや具体的な対処法など、幅広く解説してきました。

ANAHDが毎年継続して開催するワークショップは、「監視の目」を増やすことを主眼としていますが、この取り組みは着実に拡がりをみせています。

新型コロナウイルスの流行が明けた2024年は、今までにも増して人や物の流れが活発になることが予測され、違法取引を探知することがますます課題になると考えられます。

水際を取り締まる税関などの行政機関と連携しながら、輸送業界全体としても対処していくことが重要です。

輸送にかかわるより多くの方に違法な野生生物取引の課題を知ってもらい、監視の目が拡がっていくよう、これからも取り組みを進めていくことが期待されます。

(野生生物グループ:柴田)

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自然保護室(野生生物)
柴田 有理

法務博士。大学院卒業後は官公庁に勤務。法律等による取締りの実務に携わった後、2023年にWWFに入局。現在は違法な野生生物取引及び持続可能でない野生生物取引対策業務を担当。

プライベートでもWWF会員。たくさんの人が地球のことをポジティブに考えられる未来を目指して日々勉強中。気になる動物はアオウミガメとセンザンコウ。

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