渡り鳥たちがやってくる多摩川河口を未来に


自然保護室の前川です。
先日、日本野鳥の会、日本自然保護協会と連名で、東京湾は多摩川河口の自然保護について、内閣府と川崎市、大田区に要望書を提出しました。

これは、現在計画されている羽田連絡道路(仮称)の建設にあたり、一般に公開された計画の説明と意見交換の場を設けるよう求めるものです。

現在、羽田空港の周辺地域は国家戦略特区プロジェクトの実施拠点として整備が予定されており、その一貫として多摩川河口に新たな橋が建設されようとしています。

しかし、なぜ新たな橋の必要性や、それによって得られる経済効果と建設費および生態系サービスの損失コストの比較は行なわれていません。

建設を進めたい川崎市は、法的な実施義務のない環境調査を独自に実施するなど、環境配慮に積極的な姿勢を見せていますが、その結果がどのように影響の軽減や保全管理に反映されるのかは、明らかになっていません。

近年の調査結果をみると、多摩川の河口に飛来するシギ・チドリ類などの渡り鳥は、年々減少傾向にあります。

これは全国的にも見られる傾向であるため、この場所だけの問題では無いかもしれません。

ですが、四国の吉野川河口に建設された阿波しらさぎ大橋が、シギ・チドリの行動に影響を及ぼした可能性が指摘された例もあり、開発計画についてはやはり十分な慎重さが求められます。

また、予測しがたい形で、さまざまな影響が複合し、蓄積して問題を引き起こすケースも心配されます。

環境や生態系の保全に重きを置くのであれば、一般にも広く意見を求め、「予防原則」を尊重した判断をすることが必要といえるでしょう。

今回の意見書は「建設中止」を求めるものではなく、広く情報を公開して意見を募り、議論することを求めるものです。

建設計画に対する是非が十分に議論されないまま、都心に残された貴重な自然の一つである多摩川河口の自然が、失われるようなことがあってはならないと思います。

3団体共同意見書

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自然保護室(海洋水産 グループ長)
前川 聡

修士(動物学・北海道大学)
渡り性水鳥の全国調査および国際保全プログラムのコーディネーター業務、WWFサンゴ礁保護研究センター(沖縄県石垣島)での住民参加型の環境調査および普及啓発業務、海洋保護区の設定および管理状況の評価業務等に従事後、2011年より東日本大震災復興支援プロジェクトと水産エコラベルの普及および取得支援に携わる。養殖業成長産業化推進協議会委員。

日本各地の漁師町を訪ねては、持続的な養殖や漁業の推進のために関係者の方々と話し合いをしています。道すがら、普段はなかなか見ることができない風景や鳥を見つけては、一人ほくそえんでいます。もちろん、新鮮な魚介とお酒も! 健康診断の数値が気になるAround Fifty

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