WWFについて

WWFの歴史

WWFの歴史

(1)はじまり

1960年、アフリカの野生生物保護について、ユネスコに勧告を行なうため、現地を訪れたイギリスの生物学者ジュリアン・ハクスリー卿は、その実状を目にして愕然としました。アフリカでは、野生生物の生息地の急速な破壊と、20年以内にほとんどの動物を絶滅させるかのような勢いで、乱獲が行なわれていたのです。

アフリカの危機

1948年のIUCN(国際自然保護連合)の設立に貢献し、ユネスコの初代事務局長も務めたハクスリー卿は、この現状に非常な危機感を抱きました。そしてイギリスに帰国後、『オブザーバー』紙に、これらアフリカの現状を警告した三つの記事を執筆します。

このハクスリー卿の記事は、自然保護が重大な問題である、という事実を、多くの読者に気づかせるきっかけになりました。ハクスリー卿は、記事を読み、事態を心配したたくさんの人々から手紙を受け取りました。その中には、自然保護のための資金を集める国際組織を緊急に設立することを指摘した、実業家のビクター・ストーラン氏からの手紙もありました。

ストーラン氏は、自分自身がそのような国際団体を設立する立場にはない、と強調していましたが、ハクスリー卿はそのアイデアを受け、鳥類学者でイギリスの自然保護協会の事務局長でもあったマックス・ニコルソンに、基金の設立を働きかけます。そして、ニコルソンは、この大きな仕事を熱意を持って引き受けたのでした。

アフリカの自然の危機を訴えたイギリスのジュリアン・ハクスリー卿(中央右)© WWF Intl. / WWF-Canon

一つの志のもとに

1961年春、ニコルソンは、IUCNのメンバーで「レッドデータブック」の発案者でもあるピーター・スコット卿らと語らい、科学者と宣伝・広報の専門家を集め、あるグループを作りました。集まったメンバーは、いずれも、ストーランが提案したような組織を設立することに使命感を持った人々です。

この新しい小さな組織は、活動の拠点を中立国であるスイスに置くことに決め、ジュネーブ湖岸の小さな町モルジュにある、19世紀末風の建物に本部を構えていたIUCNのオフィスの中に拠点を作りました。

IUCNはこの組織を歓迎し、ともに同じ一つの目標をかかげました「協力して、世論を喚起し、自然保護の必要性を世界の人々に知ってもらおう」。以後、二つの団体は、長く同じ道を歩むことになります。

WWFの創設者の一人、ピーター・スコット卿 © WWF Intl. / WWF-Canon

ちょうどその頃、イギリスのロンドン動物園に、中国からパンダがやってきました。言葉の壁を越えられるような、強力で分かりやすいシンボルが必要だと考えていたスコット卿らは、この人を惹き付ける大きな動物を、自分たちのグループのロゴ・マークに選びます。

このパンダをシンボルとして、1961年9月11日、WWF(World Wildlife Fund:世界野生生物基金)が、正式に設立されました。世界の野生の自然を守る国際的な活動が、ここに始まったのです。

北京動物園を訪れたピーター・スコット卿。© WWF Intl. / WWF-Canon

モルジュ宣言

WWFの設立者たちは、1961年5月、法的な設立手続きを前に、ロンドンで発起人大会を開催し、WWFという名称と、ジャイアントパンダのシンボルマークを定め、同時に「モルジュ宣言」を発表しました。この宣言には、16名の署名が添えられていました。

「モルジュ宣言」(抜粋)

世界のいたるところで行なわれている無思慮かつ無益な破壊によって、数多くの美しい動物たちが生命を失い、また生息地を奪われている。文明の発展の名のもとに捕殺され、ダム建設のために溺死させられ、密猟者や毒物による汚染のためや、政治的動乱の巻き添えにされ、殺されている。

このまま手をこまねいていれば、世界の野生動物は1960年代の終わりを待たずに姿を消してしまうかもしれない。今すぐ我々が協力し、力を出し合えば、まだ野生動物たちを救うことができるだろう。

この大事業を達成するには、莫大な経費が必要である。自然保護区の管理、動物に対する確かな知識に欠けている人たちへの教育、特に動物たちが危機に直面しているアフリカを中心として、その他の国々への有能で、しかも専門知識のある人を派遣するなどに関する費用などである。

これを実行するには、大規模に行ない、かつ勇気をもって能率のよい熱心な努力と、多くの人々の援助が必要である。人類の尊厳と、地球上の尊い遺産を保全するには、狭い近視眼的な方法では不可能である。

1961年にロンドンで開かれた設立発起大会での、ハクスリー卿のスピーチ© WWF Intl. / WWF-Canon

「モルジュ宣言」に記された、ピーター・スコット卿らのサイン。© WWF Intl. / WWF-Canon

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(2)最初の活動

WWFの創設者たちは、最初にスイスに設立したWWFインターナショナルを中心に、各国に事務所「ナショナル・アピール(各国事務所)」を開設し、世界にその活動の輪を広げることを考えました。