© Jody MacDonald / WWF-US

無数の生命が宿る森は、まるでジグソーパズルのよう。
たくさんの樹々、たくさんの草花、虫たち、鳥たち、けものたち。
多種多様なピースが組み合わさって、豊かな森をつくっています。

森を守る取り組みも、同じです。
ひとつひとつは小さくても、また、直接、森で行なわれていること以外にも、
さまざまな活動が組み合わさってはじめて、森は守られていくからです。

世界には今も、森と生きものたちの減少が続いている場所がたくさんあります。

これを逆転できるかどうかは、
必要な「森を守るピース」を、どれだけ揃えられるかにかかっています。

「森林破壊の最前線」で森の減少をくいとめ、
再生へと向かわせるために。
さまざまなピースが必要とされています。

世界24カ所の森林破壊の「最前線」。その大半は、中南米、アフリカ、東南アジア、オセアニアに集中している
(出典:WWF報告書『森林破壊の最前線』2021.1)

森を守るピース

違法伐採や密猟を防ぐ

豊かな生物多様性が残る場所では、
そのぶん、密猟や違法伐採などが起きる危険も多くなります。
かろうじて残っている貴重な森と生きものを守るためには、
違法行為を防ぐ取り組みが常に重要です。

たとえば、タイの国立公園。レンジャー(自然保護官)たちが日々、
野生動物の調査やパトロールにあたっています。

WWFは、必要な物資の支援や、
ドローンなどによる調査・保全の技術トレーニングなどを行ない、
レンジャーの活動を支えています。

© WWF-Japan

1960~90年代にかけて急激な森林減少が進んだタイでは、まとまった規模の森が残るのは、ミャンマーとの国境付近に限られ、そこがインドシナトラをはじめとする多くの野生生物の貴重なすみかとなっている。

© WWF-Japan

タイのケーン・クラチャン国立公園で実施しているインドシナトラの調査。トラを絶滅させないためには、密猟を防ぐことと並行して、トラの生息が可能な森を保全することが欠かせない。

タイの森に生きる動物たち

インドシナトラ

© Anton Vorauer / WWF

タイのケーン・クラチャン国立公園で実施しているインドシナトラの調査。トラを絶滅させないためには、密猟を防ぐことと並行して、トラの生息が可能な森を保全することが欠かせない。

マレーグマ

© Terry Domico / WWF

クマ科の中で最小。ペットにするためや、伝統薬の「クマノイ(クマの胆のう)」をとる目的で密猟の危険にもさらされている。

シロテテナガザル

© Martin Harvey / WWF

森に響きわたる、歌うような叫び声が特徴で、最初はオスとメスが交互に歌い、最後はデュエットで終わる。長い腕で木から木へと移動しながら生きるテナガザルは、森の減少とともに絶滅危惧種となっている。

森を守るピース

森の減少原因を取り除く

農産物や林産物の生産が、森を減少させている場合もあります。
人の暮らしを支える生産活動を単に制限するのではなく、
森の保全と両立できる形に変えていくことが必要です。

たとえば、カンボジアの東部平原地域。
他の地域より天然ゴムの生産性が低く、それが貧困を産み、
生活向上を求めてさらに森を開発するという悪循環に。

WWFは、天然ゴムの生産性向上や、
森を活かして副収入を得るアグロフォレストリーの
普及などを進めています。

© Makara Phaha / WWF-Cambodia

カンボジア東部には、WWFが「ドライ・フォレスト」と呼ぶ比較的乾燥した熱帯林が広がり、ゾウやシカ、バンテンやガウルなどの野生のウシの仲間、シャムワニ、サイチョウなどが暮らす独特の生態系が広がっている。

© WWF-Japan

天然ゴムの生産性向上と森林保全の両立をめざす住民の方々。WWFはこうした地域の取り組みを支援し、新たな森林破壊を生じさせないためのルール作りも行なっている。

カンボジアの森に生きる
動物たち

アジアゾウ

© WWF Cambodia

カンボジアには約400~600頭が生息すると考えられ、東部平原地域はその重要なすみかとなっている。コロナ禍で中断していた個体数や行動の調査も、ようやく再開できることとなった。

サンバー

© Ola Jennersten / WWF-Sweden

最大300キロにもなる大型のシカ。さまざまなタイプの森に適応できる動物であるにもかかわらず、森林そのものの減少や、密猟によって絶滅の危機が高まっている。

ドール

© Ola Jennersten / WWF-Sweden

アジアに生息。5~12頭ほどの群れで暮らし、1頭のメスが仔を生み、群れ全体が協力して育てる。野生の草食動物が人の食料として乱獲され、ドールの獲物が減っていることと、生息地の森の減少が、絶滅の危機を招く大きな要因となっている。

森を守るピース

森を再生させる

森の減少をくいとめるだけでなく、再生を図っていくことも重要です。
その地域にもともとあった植生を人の手で復活させていくのは、
数十年にわたる息の長い取り組みが必要です。

たとえば、ブラジルのセラード。
草原や森林がモザイク状に広がる独特の自然環境ですが、
農地や放牧地の開発で、その面積はかつての2分の1に。

WWFは土地所有者と話し合い、
農地に向かない土地で自然を再生する取り組みを進めています。

© Adriano Gambarini / WWF-Brazil

左には自然の森が残るが、右は切り開かれ、大豆畑に姿を変えている(ブラジル)

© Veronica Maioli / WWF-Brazil

この地域の森を守るため活動する住民の一人、エリダ・マーティンスさん。祖母の時代から受け継いだ豊富な知識をもとにセラードの植物の種を集め、市場で販売したり、自身の土地に植えたりしている。彼女が守ってきた知識と在来植物のタネは、この地域の自然再生に大きな助けとなっている

セラード(ブラジル)の森と
草原に生きる動物たち

オオアリクイ

© Isis Mei Medri / WWF-Brazil

60センチも伸びる長い舌、細長い頭部、アリ塚を壊すのに便利な長く丈夫なツメなど、アリを食べるために特化したさまざまな特徴を持つ。草原のイメージが強いが森にも生息。絶滅をくいとめるには、草原から森に至る多様な環境の保全が欠かせない。

オニオオハシ

© WWF-Sweden / Ola Jennersten

中南米に50種ほどが生息するオオハシの仲間のうち、最も大きいので「オニ」の名がつけられている。全長60センチにもなる大型の鳥で、営巣するのに古い大木のある原生林を必要とするため、森の減少は大きな痛手となる。

タテガミオオカミ

© Martin Harvey / WWF

南米大陸中部の草原や低木林に生息。ほっそりした体と長い四肢、大きな耳が特徴。群れは作らず、単独行動で、20~30平方キロの広いなわばりを持つ。今のところ絶滅のおそれは高くないものの、生息地の減少が続いているため、予断をゆるさない。

森を守るピース

森の利用をサステナブルに

木材、紙、パーム油、天然ゴム、大豆、カカオなどが、
森の保全にも配慮して生産されるようにするには、
これらを「消費する国」こそが、考え方や行動を変えなくてはなりません。

たとえば日本。WWFは、森や、地域の人々の権利を守りながら
生産された産品に特別なマークを付けて
販売できるようにする「認証制度」の普及を推進。
海外から農産物・林産物を輸入している企業と対話を重ね、
環境や人権に配慮した「責任ある調達」の実現を
めざす活動を続けています。

© Joāo Rabelo / 王子ホールディングス

ブラジルのFSC®認証林。自然の森と、植林地がモザイク状になっているのがわかる。FSCは適切な森林管理が行なわれ、木材を利用することと自然を守ることが両立している証といえる。

© WWF-Japan

「企業の責任ある調達」をテーマにしたWWFのセミナー。「責任ある調達」とは、企業が資材や製品を調達する(仕入れる)際に、環境問題や社会問題にも配慮して行なうことを指す。世界の森を守るためには、日本企業の「責任ある林産物の調達」が欠かせない。

© WWF-Japan

FSC®の認証を受けた木材製品。FSCは、森林保全や人権保護などに配慮して生産されたことが認証された林産物に、特別なマークを付けて販売するしくみ。FSCマークつきの商品を選ぶことで、消費者は森林保全に協力することができる。

© WWF-Japan

RSPOの認証を受けたパーム油を使った製品。RSPOは、FSCと同様の認証のしくみで、森林破壊や強制労働を伴わずに生産されたパーム油を使っていると認められた製品には、RSPOマークが付けられている。

森と、そこに生きる野生動物たちを守るため、
まだまだピースが足りません。
ぜひWWFの活動をご支援ください。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。