©Nozomi Murayama

沖縄の自然への配慮を!石垣市議会の採択


先日、石垣市議会が株式会社TBSと放送倫理番組向上機構への抗議文を採択しました。
9月に放映された沖縄県の与那国島でトカゲやヘビを捕獲するという生き物ハンターの番組に対するものです。

この番組の目玉ターゲットは、絶滅危惧種のヨナグニシュウダ。危険を感じると総排出孔から悪臭を放つことから、臭蛇(シュウダ)と呼ばれるヘビの一亜種で、名前の通り与那国島にだけ生息する国内最大級のヘビです。

与那国島を含む南西諸島は、世界中のここにしかいない固有種・亜種の宝庫です。
島のような狭い地域にのみ生きるこうした野生生物は、個体数も少なく、環境の変化の影響を受けやすいと言われています。

©N.Murayama

サキシマハブ。南西諸島には、ヨナグニシュウダ以外にもサキシマハブ、ヨナグニキノボリトカゲ、リュウキュウヤマガメ、キシノウエトカゲ、ミヤコカナヘビなど多くの固有の爬虫類が生息しています。TRAFFICの調査でこうした爬虫類が国内外でペットとして取引されていることがわかっています。

しかし、このヨナグニシュウダを捕まえる番組は、絶滅のおそれが高まっている理由や保全の必要性には一切触れず、捕獲したトカゲやヘビがいくらで売れるという話に終始していました。

こうした稀少な生きものを物珍しさだけで取り上げ、ペットとしての人気や、金銭的価値ばかりを煽り立てる番組が危機感なく放送されるのは、やはり大きな問題です。

ネット社会とよばれるようになって久しいですが、まだまだテレビの影響力は大変なものです。

むしろインターネットの普及は、そうした影響の及ぶ範囲を広げる一因になっているのかもしれません。

©WWFジャパン

TRAFFIC報告書「Otter Alert」カワウソブームへのテレビ番組の影響も示されています。

テレビ番組に関するコメントや関連情報が放送中からずっと後までオンラインで飛び交い、残り続けるからです。

その意味でも、石垣市議会の抗議は、番組を作る側の責任を問い、貴重な自然への適切な配慮を求める大事なアクションでした。

また、視聴者である私たちも、「こんな番組を放送して良いの?」という疑問の声をきちんと送る必要があると感じています。(C&M室若尾)

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

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