絶滅危機種の保全を「科学」の判断にゆだねるスピーチ


草刈です。
先日、中央環境審議会自然環境部会の第18回野生生物小委員会を傍聴してきました。

目的は、議題の一つに挙げられていた「種の保存法」にかかわる希少野生動植物種保存基本方針の見直しの検討です。

その中で、とても印象的な言葉を聞くことができました。

終わりの挨拶で、環境省野生生物課長の堀上勝さんが述べられた言葉です。

「今後、種の保存法に基づく検討は、科学委員会が作られ、そこで議論されます。野生生物小委員会の皆さまには、長い間、お世話になりました」

何でもない言葉に聞こえるかもしれません。

ですがこれは、種の保存法が規定する国内希少野生生物をめぐる保全の判断を、役所ではなく、「科学の判断」に委ねることを明確に示す、節目となるスピーチでした。

ここに登場する科学委員会とは、野生動植物を専門とした学識経験者からなる常設の組織で、優先して保全すべき生物種の指定や、個体数回復などの目標、必要な保護管理計画などを勧告するものです。

そして重要なこととして、環境大臣の諮問を待たず、種の保存法ほか関係法令の見直しなどについて積極的に意見の具申ができることになっており、国民への情報の公開もその目的としています。

この科学委員会の法定化は、2013年以来、私たちが長く設置を求め続けてきたもので、昨年の種の保存法改正時に、附帯決議として明記され、ついに実現したものでした。

科学を基礎とした保全の取組みを進めるのは、国際社会では常識ですが、日本も今回の科学委員会の設置により、ようやくそこに一歩近づいた感があります。

私たちも、この流れを推し進めながら、一種でも多くの絶滅の危機にある生き物を守る取り組みを進めて行きたく思います。

種の保存法で国内希少野生生物に指定されている動物たち。上から、コウノトリ、アユモドキ、ツシマヤマネコ

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自然保護室 国内グループ所属
草刈 秀紀

日本の自然保護にかかわる法制度の改善をめざす取り組みを行なっています。

子どもの頃から動物が好きで、農業者でもないのに農業高校の畜産科に行き、上京して大学時代に多くの自然団体の会員になりました。野生のエルザのゲームワーデンにあこがれ、32年前に職員になりました。最近は、永田町を徘徊しています。

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