東京港で発覚!「日本から」の象牙の密輸事件


先週、東京港で日本から象牙を持ち出そうとした中国人の船員が逮捕された!というニュースが飛び込んできました。

この人物は、7キロにおよぶ605個のカットされた象牙を、中国に向かうコンテナ船に持ち込もうとしていたそうです。

日本の国内では現在、象牙のハンコやアクセサリーなどを売買しても違法にはなりません。

ですがそれらも、日本から海外へ、許可なく持ち出せば違法行為となります。

密輸や過剰な取引から野生生物を守る「ワシントン条約」で、象牙は国家間の取引が禁止されているからです。

それにもかかわらず近年、日本にある象牙を、中国はじめアジア各国に密輸する問題は増えています。

 

 

2011~2016年に中国で押収された日本からの密輸象牙の例は、実に100件以上。

密輸を防ぐ体制が十分整備されていない状態が続けば、今後日本は「象牙を持ち帰りやすい国」として、犯罪者の標的にされる可能性も高くなります。

今回の7キロの象牙も、うっかり持ち出した「おみやげ」などでないことは確か。

しかも、私たちが警察に確認したところでは、逮捕者はまったく日本語が話せないとのことでした。

東京港

 

そんな人物が、船を離れたわずか3時間ほどの間に、これだけ大量に象牙を仕入れてきた!という事実には、取引を仲介する国内の業者などの関与の匂いがプンプンします。

こうした問題について、私たちトラフィックは今年、市場調査を行ないました。

その報告書は今月中旬、発表予定ですが、この調査でも、象牙の国内販売が十分に管理できてないと実情が確認されています。

引き続きこうした調査結果などを基に、国に対し対策強化を働きかけていきたいと思います。(トラフィック 西野)

差し止められた象牙:ハンコに加工される前の印材の形

 

 

 

差し止められた象牙:鑑定の結果、関西でカットされたものと考えられている

【シリーズ:象牙とアフリカゾウ】

 

 

 

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自然保護室(野生生物 グループ長)、TRAFFIC
西野 亮子

学士(芸術文化)
2009年よりTRAFFICにて広報分野を中心に従事し、イベント運営、出版物作成などワシントン条約に関する普及啓発に努める。2016年からは重点種(特に注力すべき種)プログラム推進に携わり、取引を中心とした現状調査を担当。2018年以降は、関係する行政機関や企業へ働きかけ、取り組み促進を促す活動に従事し、野生生物の違法取引(IWT)の撲滅、持続可能ではない野生生物取引削減を目指す。ワシントン条約第70回常設委員会参加。東京都象牙取引規制に関する有識者会議委員(2022年3月終了)

「野生生物を守る」ことを起点に、そこに暮らす人、その場所の環境、そして利用する側の意識、すべての段階で取り組みが必要です。生息地から市場まで、それらを繋ぐことが私の役割です。

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