政府が再生可能エネルギーに関する戦略を策定するかも?


温暖化・エネルギー担当の山岸です。
ここ数日、少し気になるニュースが2つありました。

1つは、環境省が、今夏までに、再生可能エネルギーに関する戦略を策定する、というニュース。

もう1つは、安倍首相も出席する形で「再生可能エネルギー・水素等関係府省庁連絡会議」が開催され、水素社会に向けての方針が発表された、というものです。

背景にはいろいろな意図があると思うのですが、私たちが注目しているのは、パリ協定の下で作ることになっている「長期戦略」との関係です。

2015年12月に採択された、国際的な温暖化対策の枠組みである「パリ協定」。

そのパリ協定の下で、各国に出されている「宿題」の1つが、2050年までに、それぞれの国でどのように温室効果ガス排出量を削減していくのかを描く「長期戦略」を作るということです。国連への提出期限は2020年。

これを受けて、昨年の夏ごろから、環境省、経産省それぞれの審議会で検討が続けられ、3~4月に両方でとりまとめが出されたのですが、今後、それらをどうやって政府全体の案にしていくのかが全く見えていませんでした。

2015年にパリで開催された国連会議COP21。ここで「パリ協定」が採択されました

他方、ドイツ、フランス、アメリカ(前政権時)、カナダなどの国々はすでに、1~3年くらいの議論を経て国連に提出していますので、今回の環境省の「戦略」策定は、おそらくこうした流れを意識して、政府内での再生可能エネルギーの推進の議論を今一歩進めようというものでしょう。

もう1つの「関係府省庁連絡会議」でも、「再生可能エネルギー」の議論がされているようですが、現時点では、報道を見る限り「水素」推進に力点があるようです。

今回の政府の動きは、国連に提出する長期戦略そのものの策定方針とは別のものですが、再生可能エネルギーは、省エネと並び、長期戦略の極めて大事な「要素」なので、注目に値します。

今後の展開を注視しつつ、私たちの政策提言活動にも生かしていきたいと思います。

参考リンク

関連情報

100%再生可能エネルギー社会に向けた道筋を示すWWFのシナリオ。ここでも水素は温暖化防止につながる大事な技術として紹介しています。ですが、それはあくまで再生可能エネルギー主体の社会を築くという姿勢があってこそ、意味を成すものです。

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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環境保全団体です。

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