温暖化の国際交渉と「ナスカ」の地上絵


アフリカのモロッコ、マラケシュより温暖化担当の山岸です。

こちらで開かれている国連の気候変動会議COP22では、早くも「パリ協定」のルール作りに向けた国際交渉が始まっています。

その交渉を見守りつつ、私たちWWFでは、「パリ協定を実現させる非国家主体(ノン・ステイト・アクター)の役割」と題したサイドイベントを開催しました。

ナスカの地上絵。NAZCAは、非国家主体(Non state actor zone for climate change)の頭文字にも重なっています。

非政府主体とは、各国の自治体や企業、地域や市民団体などのこと。

197の各国政府が掲げる削減目標を積み上げても、パリ協定が掲げる目標に届かない中、今こうした非政府主体が担う温暖化防止の役割が注目されています。

このイベントには、新しくWWFの気候エネルギーリーダーに就任したマニュエル・プルガール=ビダルも登壇しました。

マニュエルは、ペルーの元環境大臣で、COP20(リマ会議)の議長も務め、パリ協定への道をつけた立役者として知られています。

WWFのサイドイベントでは、2030年にカーボンニュトラルをめざすストックホルム市や、科学に基づいた削減目標をもつ先進的な企業の具体的な取り組みが紹介され、詰めかけた多くの参加者に展望を示しました。

そして、このCOP20の時、非国家主体の温暖化対策を推進するプラットフォームが構築されました。

その名も「ナスカ」。ペルーが誇る地上絵にちなんだ呼び名です。

現在、ナスカには、世界の2508の自治体、209の地域、2138の企業、479の投資機関、238の市民団体などが参加。

それぞれが自らの目標を登録しています。

中には国家よりはるかに意欲的な削減目標を掲げる非国家主体も少なくありません。

COP20の議長として自ら非国家主体による取り組みをまとめたマニュエル。今では自らWWFという非国家主体の一員として温暖化防止に向けた道を歩んでいます。

「パリ協定」が掲げる目標の地平に到達するには、さながら地上絵のように、さまざまな姿形での広がりを見せる、非国家主体の参加が必要とされているのです。

国際交渉の場であるCOP22の主役は、あくまで議決権を持つ各国政府ですが、こうした政府外の動きもまた、交渉を加速させる大きな力になります。

私たちWWFもそうした力の一つとして、会議への働きかけを続けてゆきたいと思います。

市民の活動もアピールされています。COP22の会場も、会議場のあるブルーゾーンと、市民が展示などを行うグリーンゾーンの2つに分けられています。

関連情報

現地より動画配信中!

COP22会場より、WWFジャパンのスタッフが現地の様子をお届けしています。

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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