「パリ協定」のカギとなる、2018年の「促進的対話」


アフリカのモロッコ、マラケシュより温暖化担当の山岸です。

こちらで今開かれている国連の気候変動会議COP22では、2020年から始まる「パリ協定」のルールづくりが進められています。

パリ協定が掲げる目標は、世界の平均気温の上昇を、産業革命と比べ2度~1.5度以下に抑える、というものです。

これが実現できないと、地球の自然や社会、経済などは、温暖化による深刻な打撃を受けると警鐘が鳴らされているためです。

ですが現在、各国が国連に提出している、温室効果ガス(二酸化炭素(CO2)など)の削減目標では、パリ協定の目標達成に必要な削減分に届きません。

つまり、現状のままでは、温暖化はさらに進行してしまう、ということです。

そのため、パリ協定がスタートする2020年までに、各国は削減目標を引き上げる必要があります。

このため昨年のCOP21では、2018年に「促進的対話」を行なうことが決まりました。

温暖化の進行は異常気象や干ばつを深刻化させ、自然環境はもちろん、人の暮らしにもさまざまな影響を及ぼすと予測されています。

各国の削減目標の合計で、本当にパリ協定の目標が達成できるのか。

これを5年ごとに評価し、必要であれば各国の目標を見直して引き上げる、その最初の大事なステップが、2018年の「促進的対話」なのです。

しかし、その内容の詳細はまだ決まっていません。

私たちは今回のCOP22でも、特にこの問題を重視し、各国の政府代表に議論を進めるよう求めています。

NGO合同の記者会見。私も「促進的対話」についてお話をさせてもらいました。また日本政府代表団やCOP議長との会合でを議論するように働きかけています。

こうした取り組みが功を奏したのか、温暖化の脅威に直面している小島嶼国連合が促進的対話」についての議論を会議で提案。

COP議長からはパリ協定締約国会議の決定案に盛り込む案が出されるなど、明るい兆しが見え始めました。

パリ協定が、本当に世界の温暖化を防止できる、実効性のある約束になるのか。

それは、この「促進的対話」を通じた、削減目標見直しの実現にかかっているといっても過言ではありません。

最終日まで注目しながら、働きかけを続けてゆきたいと思います。

COP22会場の展示より。気温上昇を1.5度未満にすることを呼びかけるパフォーマンス

関連情報

現地より動画配信中!

COP22会場より、WWFジャパンのスタッフが現地の様子をお届けしています。

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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