お見事!トラの縞模様を見分けるソフトウェア


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

自然保護室の川江です。
昨年お伝えした、インドでトラの個体数が大幅に増加したというニュース。ご記憶でしょうか。

この調査報告書の中で、前から疑問だったトラの調査方法について、面白い記述を発見しました。

トラは一頭ずつ縞模様が異なるため、これを自動カメラで撮影し、識別しますが、同じ個体が何度も写ることがよくあるため、それを同定する作業が必要になります。

しかし、仕掛けたカメラが約1万カ所!に及んだというインドの調査では、それこそ数十万枚の写真が撮られたはず。

これをどうやって分析し、数を割り出したのだろう?

そんな疑問を持ちながら、報告書を読み進めていると、見慣れない単語を発見!

その名も「ExtractCompare(エクストラクト・コンペア:抽出比較)」。

まさに「トラの縞模様から個体を特定するため、特別に開発されたプログラム」でした。

その後、私は実際にこのソフトウェアの威力を見る機会に恵まれました。

場所は極東ロシアの「ヒョウの森国立公園」。

ExtractCompareのウェブサイト

ここでのアムールヒョウとトラの個体数調査について分析方法を聞くと、スタッフが「ソフトウェアを使っている」と言います。

「もしかしてエクストラクト・コンペア!?」
「そうよ、見てみる?」

やり方はまず、ある個体の縞模様のサンプル写真をプログラムに記憶させます。

それに数十枚の写真を比較させると、自動的に紋様を識別し、同じ個体の写真だけを抽出してくれる、という仕組み。

野外で写したトラの縞は鮮明とは限らず、角度や寄りもバラバラなため、人の手による多少の補正は必要ですが、紋様を見事に識別する様子には、思わず「おー!」と声を上げて、感動してしまいました。

これを他の国の調査でも使えないかなと思っていたところ、数週間後にその機会がやってきました。

インドネシア・スマトラ島のブキ・バリサン・セラタン国立公園に行った際に、現地のスタッフにこのソフトの事を話し、試験導入してもらったのです。

スマトラでも威力を発揮してくれることを期待しつつ、今後もこうした新しい技術や知見を海外の仲間たちと共有し、保護活動に活かせていければと思います。

極東ロシアの森

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

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