CO2濃度「初の400ppm超え」報道について


昨日、「大気中の二酸化炭素(CO2)の1カ月間の平均濃度が、初めて400ppmを超えた」というニュースが流れました。

これは、アメリカのNOAA(海洋大気局)が、今年3月に世界40カ所で行なった観測の結果に基づいたものです。

石油や石炭を燃やすことで発生するCO2は、いうまでもなく、気候変動の最大の原因とされている温室効果ガス。それが確実に、増加していることを示す発表でした。

これがどれくらい危険な数字なのか、説明は決して簡単ではありません。

ですが今、日本を含む国際社会が、「気候変動の深刻な影響を抑えるために必要だ」と共通認識を持っている「危険レベル」の一つの目安が450ppmであるということ、そして、産業革命前(1750年)はこの数字が280ppmであったことを考えれば、危険な未来が間近に迫っていることは明らかといえるでしょう。

また、報道では「観測史上、初めて」と言っていましたが、この400ppmは、IPCCも報告する通り、過去80万年間でも最高の濃度なのです。

この450ppmという「危険レベル」を超えないためには、現状で相当な努力(2050年に2010年比で40~70%削減)が必要とされます。

ですから今、年末にパリで開かれる国連の温暖化防止会議(COP21/CMP11)に向け、各国政府が発表し始めている新しい削減目標が、重要な意味を持つことになります。

省エネや再生可能エネルギーの可能性がまだ十分あるにもかかわらず、不十分な削減目標しか出さず、国際社会の信頼を損なっている国は、早くその姿勢を改めねばなりません。

かつて、温暖化は孫の世代の問題、といわれていました。ところが、この問題は現在においてさえ深刻な、しかもあらゆる自然環境に影響する脅威になりつつあります。

世界の国々が、この年末に向けてどれだけの努力をし、どのような決断を下すのか。

400ppmという数字のこれからは、それによって変わってくるに違いありません。(自然保護室 小西雅子)

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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