フィールドの生物学『野生のオランウータンを追いかけて』


こんにちは、自然保護室の小林です。
わたしの大好きなシリーズ本に、東海大学出版会さんの「フィールドの生物学」というものがあります。

毎回、著者の方々の波乱万丈なフィールド体験記にわくわくとし、描かれていく生き物たちの魅力に取りつかれてしまいます。

今回はこのシリーズの一冊として今年8月に出版された、「野生のオランウータンを追いかけて」という本のご紹介をさせていただこうと思います。

この本の著者は、ボルネオ島でオランウータンを追いかけている金森朝子博士。描写されている熱帯雨林での日々の悪戦苦闘と苦労の中で、次第に明らかにされるオランウータンの意外な一面が、つぶさに記されております!

生きもの好きな方や、熱帯雨林の世界に興味のある皆さんに、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

本書でも触れられていますが、今ボルネオ島ではオランウータンをはじめとした実に多様な生き物たちの生息地が、急速に失われていっています。

その大きな原因となっているのが無秩序な森林伐採や、アブラヤシ農園の開拓。その産物である熱帯材やパーム油を、わたしたち日本人も日常的に使っていることをご存知でしょうか?

WWFでは、こうした問題を解決するために、FSCやRSPOのような「持続可能」な形での木材やパーム油の利用を目指した認証制度を推進していますが、認知や普及はまだまだこれから。

ボルネオのオランウータンの危機!なんて、遠く離れた違う世界の出来事のように感じますけれど、彼らの直面している問題は、実はわたしたちにとって本当に身近な問題です。

少しでも多くの方にそういった事実を知ってもらって、一緒に考えていただけたらな、と思います。

フィールドの生物学(11)
『野生のオランウータンを追いかけて』
マレーシアに生きる世界最大の樹上生活者
金森朝子著、当会大学出版会(2013.8)

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自然保護室(淡水)
小林 俊介

修士(動物学・京都大学)
京都大学在学時にボルネオ島での野生動物の行動学を専攻。ボルネオの豊かな生物層の魅力を知るとともに農園開発などの環境課題の大きさを実感する。2013年にWWFに入局。ボルネオ島での絶滅危惧種保全、持続可能な森林・農園管理、ESDなどの活動を担当。2018年よりサンゴ礁保護研究センター長。サンゴ礁保護研究センターの地元移譲を経て2021年から現在まで淡水グループ繊維担当と、海洋グループ白保担当を兼務。

子供のころからの動物好きが高じて、東南アジアでの野生動物の研究に携わった後、WWFへ。森林、海洋、淡水と様々な分野を担当し、持続可能な資源管理を中心に海外・国内のフィールドにも携わってまいりました。フィールドで豊かな自然とそれを守るために頑張っている仲間たちと交流するのが何よりの楽しみです。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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