日本が「化石賞」1位を共同受賞


カタールのドーハより、温暖化担当の小西です。
毎年のCOPでは、気候変動問題に取り組む世界の700以上の団体がつくるCAN(気候行動ネットワーク)インターナショナルが、その日の交渉に後ろ向きだった国に「化石賞」を与えています。

日本はこの不名誉な賞の常連ですが、COP18では初日から、アメリカ、カナダ、ロシア、ニュージーランドと共に、第1位を受賞しました。

理由は、いずれも温暖化に責任のある先進国でありながら、唯一の法的拘束力のある「京都議定書」の枠組みから「逃亡」したこと、です。

アメリカは京都議定書を批准せず、カナダは離脱、日本とロシアとニュージーランドは第2約束期間の削減目標を拒否と、「逃亡」の方法は異なります。

が、とりわけ、2年前のCOP16の初日、「いかなる条件下、環境下でも、日本政府は第2約束期間の目標を書き込むことはない」と明言した日本政府は、米国を除く一連の「逃亡」を先導したとして、厳しい目を向けられています。

京都議定書を生んだ日本のこの発言で、他国は追随しやすくなりました。「約束もみんなで破れば恐くない」というわけです。

一方、会場に明るい希望をもたらした国もありました。
COP18の初日にオーストラリアが「2000年比で2020年に5%削減に相当する数値目標」を京都議定書の特別作業部会に提出したのです。野心的とは言えない目標ですが、「各国が同様の削減努力を行なうなら最大で2000年比で25%まで引き上げる」とも付け加えました。

今、異常気象が世界中で起きています。
ハリケーン・サンディはアメリカやカリブ諸国に甚大な被害を与え、ブラジルや中国は水害に襲われ、アメリカやメキシコ、アフリカは歴史的な大旱魃に、ヨーロッパは熱波に見舞われています。今は、気候変動の現実から目を背けるのではなく、行動するときなのです。

各国が削減目標を引き上げなければ、気候変動とそれに伴う災害は、より深刻化するでしょう。先進各国の交渉姿勢を、世界が注視しています。

 

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「化石賞」とは、温暖化の原因となっている「化石燃料」と、「時代遅れ」の意味の掛け合わせ。授賞式では、該当する各国のNGOのメンバーが賞をうけます。

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5カ国の「化石賞」受賞に対し、EU(欧州連合)にはちょっと皮肉をこめた「宝石賞」が与えられました。2020年までに20%削減するという目標を「10年早く達成した」からです。つまり、削減目標を早く引き上げるように!!という環境NGOからのメッセージです。

 

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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